血栓は高齢者だけでなく若年層にまで広がり、8人に1人が糖尿病や生活習慣病の危険にさらされている。こうした状況下でルンブルキナーゼ(血栓を溶かす酵素)が注目を集めている。
 ルンブルキナーゼはツリミミズ科ルンブルクス種のミミズから抽出されている。ルンブルキナーゼは血栓を直接溶かす唯一の酵素で、血栓のもとになるフィブリンだけを溶かす、体内に存在する血栓溶解酵素プラスミンになるプラスミノーゲンを活性させるなどがわかっている。血管壁の破壊、内出血を引き起こすような副作用がなく、血栓を安全に確実に取り除くことができる。世界で初めて経口投与が可能な内服剤として使用されており、血栓症や血栓が原因となる生活習慣病の家庭での初期治療・予防への活用も期待される。 ルンブルキナーゼを発見した宮崎医科大学(現・国立宮崎大学医学部)の須見教授らは、糞尿処理に土を食べるミミズに注目し、乾燥して死んだミミズが黒く変色して干からびるのに対し、湿地で死んだミミズは自分の体を溶かすという現象から、ミミズの中にタンパクを溶かす酵素・ルンブルキナーゼがあることを発見した。 1983年7月にストックホルムの国際血栓止血学会で発表されて以来、世界の注目を集めている。日本では糖尿病治療剤・血圧調節剤・抗高脂血症剤・製造法の特許4件を取得。米国、カナダ、EC諸国など世界23カ国でも特許を取得し、韓国では1988年から医薬品として使用された実績を持つ。 血栓の溶解には、これまで医薬品として注射薬のウロキナーゼとT−PAが使用されてきたが、ウロキナーゼは投与量を間違うと血管まで溶かしてしまい内出血を引き起こす危険(副作用)がある。また、T−PAは脳梗塞等の血栓症が発生後3時間以内に投与しなければならないこと、投与できる病院が限られることから使用が制限される。 須見教授らはルンブルキナーゼの血栓溶解作用は、糖尿病・高血圧症・低血圧症・心筋梗塞・脳血栓・狭心症・肝臓障害・白内障・緑内障・静脈瘤・神経痛・壊疽・更年期障害・生理痛・生理不順・前立腺肥大・筋肉痛・肩こり・脳血管性痴呆症・床擦れ・白蝋病・スポーツ疲労回復などの治療予防に効果が期待できると報告。また、医療機関で行われた酵素・ルンブルキナーゼの高・低血圧症、成人型糖尿病、高脂血症の患者に対する経口投与試験でも、投与後、患者の血圧・血糖値・脂質値などは正常値を示した。
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