■各モデル5千~2万円の値上げとなったiPhone 17
この9月19日に全世界同時発売されるiPhone 17シリーズ。9月12日夜9時から予約が開始され、Androidスマホと比べてワンランク以上高価格帯ながらも順調な売れ行きを見せそうだ。気になる販売価格(以下、全てApple Store価格)とその為替レートは以下の通り。
今回はトランプ関税の影響で3万円近く値上げされるのではないかという予想もあったが、幸いそこまでの値上げにはならなかった。というか、米国では完全に価格据え置きとなっている。日本での価格が上がったのは円が弱いからだ。
昨年同時期と比べてさらに進行した円安の影響を受け、国内では各製品5000円~2万円の値上げとなった。大画面&高性能を極めたハイエンドモデルiPhone 17 Pro Maxの2TB SSD搭載モデルに至ってはなんと32万9800円(!)で、20万円台後半という価格設定で多くのスマホマニアを絶望させたAndroidの折りたたみ型スマホよりもはるかに高額だ。実のところ、2TB SSD搭載モデルは映画制作現場など特殊な用途向けの選択肢ではあるのだが、「一般的な板状スマホで30万超え」という製品が登場したインパクトは無視できないだろう。
なお、今回で無印iPhoneの大画面モデルであるPlusは廃止。代わりに驚異的な薄型化を実現したiPhone Airがラインアップに追加されている。
■iPhone 17 AirじゃないiPhone Airの実力は?
今回のラインアップの中で、最も目を引く選択肢はやはりiPhone Airだろう。iPhone 17 Airではないことに注意。ここにどういう意図があるのかは明らかにされていないが、アップルとしては既存のiPhoneラインアップとは一線を画した製品であることをアピールしたいようだ(しれっと来年はiPhone 18 Airになっているかもしれないが)。
その薄さはAirの名に恥じぬ最薄部約5.64mm。ライバルと目されていたサムスンのGalaxy S25 Edgeが約5.8mmなので、一般的なスタイルの現役スマホとしては世界最薄となる(過去の製品も含めると2016年に発売されたモトローラ『Moto Z』が最薄部約5.2mmで史上最薄)。重さは約165gとiPhone 17より約12g軽い。
ただし、例によってカメラ部分が大きく飛び出している。まずカメラ周りの土台部分(プラトー)が大きく盛り上がり、そこからさらにレンズ部分の厚みが加わる。アップルは正確な数値を発表していないが少なくとも本体の倍以上は飛び出していることに注意が必要だろう。ちなみにiPhone Airの内部部品のほとんどはこのプラトー部分に収められている。そこに入りきらないディスプレイパネルとバッテリー以外の要素を排除したことで、この薄さを実現したのである。
そのため、iPhone AirではiPhone 17やiPhone 17 Proと比べて、いくつかの機能がやむなく省略されている。
なお、アップルはその解決策として外付けの『iPhone Air MagSafeバッテリー』を用意。これを装着することでバッテリー駆動時間を約1.5倍にできるというが、当然、自慢の薄さも台なしになってしまうのが悩ましい。
■薄さのため多くの機能がカットされているが…
また、もう1つ外観からも分かる弱点として、背面カメラが1基しか搭載されていない。iPhone 17に搭載されている超広角カメラが省略されており、被写体ギリギリまで近寄って細部を大きく撮れるマクロ撮影にも非対応だ。カメラ機能を重視するユーザーにはかなり悩ましい機能カットと言えるだろう。
そのほか、内蔵スピーカーがモノラルになっていたり(底面のスピーカーが廃止)、USB-Cポートのデータ転送速度がiPhoneと同じUSB 2.0相当になっていたりなど(映像の外部出力にも非対応)、細かな点で機能がカットされている点に注意してほしい。
反面、ディスプレイサイズは6.5型と大きく、これまでProモデルだけのプレミアムだった常時表示や、最大120Hzの高速画面書き換え(このあたりのメリットについては後述)にも対応するなど極めてリッチ。プロセッサーもPro譲りのA19 Proチップを採用している。
このように、犠牲にしたスペックも少ないiPhone Airだが、筆者は、事前に予想していたよりもかなりハイスペック・多機能という印象を持った。
■スペック的には1万円安くなったiPhone 17
華々しく登場した新型iPhone Airの影に隠れてしまったが、実は今回の新ラインアップで最も買い得度の高いおすすめモデルはiPhone 17だ。他のモデルが円安の影響から大きく値上げされているのに対し、iPhone 17は最廉価モデルのストレージ容量が128GBから256GBに底上げされており、結果、iPhone 16 256GBモデルよりも1万円安い価格設定となった(512GBモデルも5000円安い)。
その上で、iPhone Air同様、これまではProモデル限定だったディスプレイの常時表示と最大120Hzの高速画面書き換え(ProMotion)に対応した。前者はiPhoneを使っていないときでもディスプレイを完全オフにせず、着信通知などをいつでも確認できるようにしてくれるというもの。後者はディスプレイの書き換え速度を従来モデルの1.5~2倍にブーストすることでスクロール表示などを滑らかにしてくれるというものだ。どちらも地味な機能だが実用性は高く、一度慣れたらもう元には戻れない魅力がある。
カメラ周りも一見同じように見えて大きく進化しており、メインカメラと超広角カメラがどちらも4800万画素の高画素Fusionカメラとなった(iPhone 16はメインカメラのみ)。細部をしっかり撮れるようになったほか、暗所撮影時の解像感がグッと高まっている。
また、今回のiPhone新製品共通の進化として、自撮り用のフロントカメラもアップデート。新開発の正方形センサーを搭載することで、タテ持ちなのにヨコ画面で撮影できるなど、より自由なスタイルでの撮影を楽しめるようになった。
昨年のiPhone 16ではかなりの性能アップが話題になったが、今年のiPhone 17は上位モデルとの差別化ポイントを中心にさらに魅力的に進化した。驚きだ。これまで無印モデルを使い続けてきた人はもちろん、Proユーザーだったが、さすがにもう高すぎて買えないという人にとっても魅力的な選択肢だと言えるだろう。これまで毎年Proモデルを買い換えてきた筆者も「もう、これでいいんじゃないの?」という気分になっている。
■もう買えない? Proシリーズは約18万円から
逆にファンにとっても厳しい選択肢となってしまったのが、値上げによって最廉価モデルでも17万9800円になってしまったiPhone 17 Proだろう。大画面のiPhone 17 Pro Maxに至っては19万4800円スタートとなっており、一般的なノートパソコンより高い。軽々に買い換えできない製品になってしまった。
ただし、ボディフレーム設計の全面見直しなどかなり力の入ったアップデートとなっており、光学8倍ズーム相当の強力なカメラ機能や、効率的な放熱システム導入による安定したパフォーマンスなど、Proの名に恥じない完成度に仕上がっている。さらなる重量増や本体横幅一杯に広がった背面プラトーの圧迫感など、ネガティブな部分も少なくないが、我こそはという人にはぜひ試していただきたい。
■新型iPhoneは全モデル「eSIM」専用
さて、ここまでこの9月に発表されたばかりの新型iPhoneについて紹介してきたが、実は全モデルに共通し、全てのユーザーに関係する、とある大改変が行われている。それは、これまで本体側面に挿入していたSIM(シム)カードが完全廃止され、eSIM(イーシム)専用になったこと(従来モデルではどちらも利用できた)。
SIMカードには契約者情報が記録されており、スマホはこの情報に基づき携帯電話キャリアの回線に接続する仕組みになっている。
すでにeSIMを利用している場合、ドコモやau、ソフトバンクのような大手キャリアであれば、iPhone間のeSIM転送を無料で行えるのだが(eSIMクイック転送)、一部格安キャリアはこのクイック転送に対応していない。一度、古い端末のeSIMを削除して新端末向けに再発行・ダウンロードし直す作業が発生し、この際、200円程度の発行手数料がかかってしまう。
ちなみにこのeSIMという仕組みは、意外に思われるかも知れないがお隣中国ではほとんど利用されていない(eSIM専用端末はとても人気がない)。そのため、昨今問題になっている海外ユーザーによるiPhone買い占め&母国での転売ができないのではないかと言われている。もしこれが本当なら、これまでのように発売直後はなかなか手にはいらないという問題も解決するのではないかと期待されているが……。
■コスパ重視なら無印のiPhone 17で決まり
近年、あまり新味のない、よく言えば堅実なアップデートが続いていたiPhoneだが、この春には廉価モデルiPhone 16eが、今回は激薄モデルiPhone Airが追加され、来年には折りたたみモデルの登場が予想されるなど、ここに来て次世代に向けたラインアップの革新が進んでいるのを感じる。
そうした中で今、「買い」のモデルはどれなのか? コスパ重視で選ぶなら間違いなくiPhone 17だが、アップルらしい引き算の美学を味わいたいのであればiPhone Airもぜひ試してみてほしい。他モデルと比べていろいろな機能が省かれているが、ギリギリ工夫と我慢で乗り越えられるレベルに抑えられてもいる。なにより、今持っていると、多くの人から注目されること間違いなし。間違いなく2025年のNo.1モテスマホと言えるだろう。
これまで何も考えずにその時々の最上位モデルを購入してきた筆者だが、今年はかなり悩んでいる。ITライターとしてiPhone Airの新体験を味わうべきか、これまで通りiPhone 17 Proを継続するか、あるいはもうiPhone 17で満足するか……。発売まであとわずか。皆さんも悩み抜いてベストな1台を選んでほしい。
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山下 達也(やました・たつや)
ITライター
1975年東京都生まれ。AIやVRなどの最新のITや、PC、スマートフォン、デジタルカメラ、AV機器など、幅広くデジタル機器を愛好。一般誌から専門誌、企業オウンドメディアまで幅広く解説記事を執筆する。
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(ITライター 山下 達也)