『月刊エンタメ』に連載中の「井上咲楽の政治家対談」、今回は新型コロナウイルスワクチン接種推進担当大臣を務める河野太郎議員が登場。本誌掲載に先駆けて、今一番気になるワクチンについて直撃した。
(前後編の後編)

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【写真】初めて会う河野議員に緊張が隠せない井上咲楽&執務室の様子

井上 インフルエンザのワクチンと違って、コロナのワクチンは「筋肉注射」だから痛いというイメージもあります。

河野 それね、僕もそう思っていた。インフルエンザのワクチンって、針を斜めにして皮下注射しているんですね。でも、コロナのワクチンは針を垂直にぶすっと刺す筋肉注射。僕は小学校の低学年の頃、熱を出したときに「筋肉注射だからお尻にやります」と注射をお尻に打たれた記憶があるんですよ。

井上 うわ~! 痛そう!

河野 痛かったですよ(笑)。その後はしばらく注射を見ただけで泣いていたくらい。だから、コロナのワクチンは筋肉注射なのか……痛かったイメージだな……と思っていたんだけど、今度のはあんまり痛くないんですよ。

井上 本当ですか?

河野 うん。すでに接種した人に聞くと「いつ打たれたのかわからなかった」という声もあるくらいですよ。僕は「それはオーバーに言っているだろう!」と少し疑っているんだけど、でも、痛みの少ない細い針なのは間違いないです。筋肉注射って、そもそも針の太さで痛みが決まるんですって。


井上 少しほっとしました! それにしても、海外に比べて日本でワクチンの接種が始まるのが遅かったのはどうしてなんですか?

河野 世界的に見ると、日本は欧米に比べてコロナに感染した人の数がとても少ないんですよ。今、使っているファイザー製のワクチンは2020年の7月から世界的な治験が行われました。その際、1万人、2万人規模の感染者を集め、ワクチンの注射と偽薬(生理食塩水)の注射をして効果を比較するわけです。でも、日本はもともと感染者が少ないからワクチンや偽薬を注射した後に感染する人数も少ないので、治験の結果が出るまで時間がかかる、と。スピードが重視される中で、治験の対象から外されたわけです。それが欧米と比較して接種が遅くなった理由の1つ。その後、日本人が使って安全かどうかの確認の治験ができたのが、10月でした。そこから厚生労働省が認可して、2021年2月に医療従事者への先行接種を開始となったわけです。治験での3カ月の遅れを、接種で2カ月遅れに取り戻したと言えます。

井上 ワクチンの確保が難しいという話も聞きます。日本国内でワクチンを作るのはまだまだ先ですか?

河野 今、日本で4社が取り組んでいます。ただ、先程と同じ理由で最終段階の比較研究の治験が難しい。
また、5月以降はどんどんワクチン接種が進んでいきます。すると、これはいいことですが、ますます治験の対象となることのできる人が減っていくわけです。そこで、開発中の各社は治験を海外で行う、接種後の抗体の変化を科学的に調べて効き目を判別するなど、新たな方法を模索しています。

井上 なるほど。

河野 というのも、国内でワクチンを作れるかどうかは非常に重要なことなんです。国内生産できれば供給は安定しますし、新たな変異株が出てきたときもすばやく対応できます。実際、ワクチン接種担当の大臣でもある僕の頭痛の半分は、ヨーロッパからワクチンを確保するための交渉ですから。日々、もう一便早い飛行機に乗せてくれないか、来週届くはずのワクチンをなんとか今週発送してくれないか、と。そういう交渉をしているわけですが、ファイザーから「わかった、100万回分を3日後に出す」と確約を取っても、EUが止めるケースがあります。

井上 止められちゃうんですか?

河野 1月に「輸出透明性・承認メカニズム」というルールが作られ、EU域内からワクチンを域外へ輸出する場合、毎回、欧州委員会から許可を取らなければいけなくなったんです。日本に来ているファイザーのワクチンは、ベルギーで作られて飛行機で発送されます。その一便ごとにEUの許可が必要で、「日本は感染者数が少ない」といった理由で止められそうになるケースがあるわけです。
それに引っかからないよう随時交渉しています。

井上 その交渉は大変ですか?

河野 大変ですね。僕もやるし、外務大臣もやるし、日本からEUに行っている大使もやるし、といろんな人が交渉して協力してもらっています。ヨーロッパは政府が「ロックダウン」と言ったら、市民は外出もできませんと強権的に命令できるわけですよ。でも、日本の政府にそんな権限はありませんから、「すいません、自粛お願いします」と国民に自粛をお願いして、みんなで頑張って、なんとかこの数に抑えているんだ。だから、早くワクチンを送ってください、と。

井上 報道だとコロナ感染がものすごく増えているという印象を受けますし、「すごい人数だ!」と不安になりますけど、海外から見ると違うんですね。

河野 ちょっと前に海外の人と話をしていて「今、東京はどんな状況?」と言われて、「1日250人から350人くらい」と伝えると、それくらい死亡者が出ているんだなと解釈されてしまって「いやいやそうじゃない。新規感染者ですよ」と説明していました。すると、「じゃあワクチンはいらないだろう。こっちの国に回せ」と言われる。そこで、いやいやそんなわけにはいかない。
この数字はみんなで自粛して頑張っての数字なんだから、ワクチンは必要だ、と。

井上 綱引きですね。

河野 向こうは、河野うるせぇなと思っているだろうけど(笑)。契約の内容の詳細は公表できませんが、少なくとも今の状況で、3600万人の高齢者が2回打つ分が6月の末までに入ってきます。ここから先は、自治体のスケジュールに合わせて供給し、接種のスピードを上げていけると思います。

(文/佐口賢作)
▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。『アッコにおまかせ!』(TBS)、『おはスタ』(テレビ東京)、『めざまし8』(フジテレビ)などに出演中。2020年末の番組でトレードマークの眉毛をカットし大きな話題を呼んだ。
Twitter:@bling2sakura

▽河野太郎(こうの・たろう)
1963年1月10日生まれ、神奈川県出身。自由民主党所属衆議院議員。米ジョージタウン大学卒業後、1996年に初当選以来8期当選。
外務大臣や防衛大臣などを経て、2020年から規制改革・行政改革、国家公務員制度、新型コロナウイルスワクチン接種推進担当大臣。
Twitter:@konotarogomame
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