モーニング娘。
を卒業後、約5年の休止を経て活動を再開した鞘師里保。8月4日にはファン待望のEP『DAYBREAK』をリリース。制作段階から携わり5曲すべての作詞を手がけた、渾身の1枚への思いやソロでの活動についてインタビューを行った。

【写真】大人の魅力も増した、鞘師里保の撮りおろし【10点】

──今回発売されるEP『DAYBREAK』に込めた想いを教えてください。

鞘師 『DAYBREAK』は日本語で夜明けという意味になるんですけれども、休業していたところからまた音楽活動を再開するという意味での“夜明け”でもありますし、私はモーニング娘。というグループにいたので“朝を迎える”というリスペクトの気持ちも込めて、このタイトルをつけました。長い時間を経て、また自分の歌を届けることになったときに、年齢も重ねましたし、今の私が見せることのできる歌やパフォーマンスを届けないと活動再開した意味がないなと思うんです。そうじゃないと、今までの動画を見てもらえればいいという話になっちゃうので。だから「今の私が届けられるもの」ということをすごく意識して楽曲制作に取り組みました。

──作曲陣の方々とはどういうやり取りをされたのでしょうか?

鞘師 『LAZER』は歌詞と音のイメージを決めるところから作曲家のTAKAROTさんと作詞のカミカオルさんと3人で1から話し合って作っていったんです。「私はこういうことを伝えたいです」「こういう人なんです」ということと、そのイメージに合う音について話をしたというのがまず1つのやり方で。宮野弦士さんと作った『Find Me Out』は私が先にお渡しした詞に曲をつけていただいて、『Simply Me』と『BUTAI』は「ダンスが踊れる」「舞台に対する思い」を伝えられるような曲を作っていただきたいとオーダーして、私が歌詞をつけました。
『Puzzle』はコンペで曲を集めていただいて、そこから私が歌詞をつけたいなと思った曲を選ばせていただいて。本当にいろんなアプローチの仕方で曲を作りました。

──『Find Me Out』と『BUTAI』が先行配信され、声質や歌い方が変わったという声もありますよね。

鞘師 もともといろんなジャンルの曲を聴いていたので、「こういう歌い方ができたらいいな」と自分の中で訓練していた部分もあって、今回それを出せたのかなとも思います。あと、今までレコーディングして音になったときの声とライブでパフォーマンスしたときの声が全然違うなぁというのを感じていて、自分の中ですごく研究した部分でもあったので、歌っている形に音源自体が近づいて、聞こえ方が変わったんじゃないかなとは思います。自分の意識としては5~6年前と変えていったというより、より良くしていって、今回の形になったという感じですね。

──鞘師さんは発信する言葉にとても心を配られている方だなという印象があります。歌詞を作る上で苦労されたことはありますか?

鞘師 その通りで、自分の言葉を発するときにはちゃんと自分の意図が届くように、無意識に人を傷つけないように、すごく意識して言葉を選ぶようにしています。その言葉にも別に嘘はないんですけれども、歌詞の場合はキレイなろ過し続けた言葉だけを使うのは違うんじゃないかなと思ったので、もうちょっと心の廃れた部分とか思いついた言葉をバーっと書いたんです。なので、これを発表してもいいのかな、こんなに率直な言葉で喋ってもいいのかな、とは全曲に対して思いました。普段発する言葉には枠の制限が特にないので、自分で好きなように言葉を選べるんですけど、今回は節や曲の展開を考えたり、いろんな制限もある中で、そこの塩梅を調節するのもすごく大変でした。

──その中で、特に気に入っているフレーズはありますか?

鞘師 『Find Me Out』のBメロに≪私をもっと知って欲しいのに真ん中を見られるのは怖いから≫という歌詞があるんですけど、それはもう本当に、私という人間のパーソナリティを代表するような言葉なんです(笑)。
歌詞を書くときに自分の奥にあるものを出さなきゃ、出さなきゃと思っている中で「私ってそういうことが苦手な人間だよな」と気づいたときに思いついたフレーズだったんですよね。自分のことだけど、自分の性格を言葉にするのってすごく難しいことだなと私は思っているんですけど、その難しいと思っていることや自分を出せないと思っていることを言葉にしちゃえばいいんだ、みたいな。これが今の自分だなとすごくしっくりきた言葉でした。

──8月4日にEPをリリース、9日にはライブを開催されましたが、曲を制作する上でライブを意識されていたのでしょうか?

鞘師 まずライブをすると発表したのが、去年の冬だったんですよ。先に会場を押さえいたんですけど、実はその時点ではプランもないし、準備もしていなくて。順番でいうと、ライブができることが決まったから、じゃあ曲を作ろうという感じですね。なので、ライブを想定した部分ももちろんあります。

──今回ご自分の曲をステージでパフォーマンスすることは、どう感じていますか?

鞘師 グループ時代も自分1人の曲を持ったことがないので、それがあること自体すごく嬉しいんです。今回は特に会議に参加したり制作過程に関わったり、作業を直接見て進めているんですけど、CDのサンプルが届いたり、グッズが形になったり、そういうことにいちいち感動しちゃって(笑)。嬉しい、嬉しいみたいな感じで日々過ごしているので、こうやって自分の作品に対して心が動いたり、思いがこもっている状態を忘れずにいたいなぁと思います。自分の曲に対しても、愛情がすごいです。

──今回は鞘師さんにとって人生2度目のデビューとなりますが、今は楽しみな気持ちが大きいですか?

鞘師 そうですね。
いいところと悪いところ、もちろんどっちもあると思うんです。やっぱり今までのイメージや期待値もありますし。そういうことも感じますけど、今はいろんな経験させてもらえているはずなのにまたスタートできるという環境に、すごく感謝していますね。私、ワクワクしています。

──インスタライブでEP発売を発表されてからいろいろな反響があったと思うのですが、どう受け止めていらっしゃいますか?

鞘師 自分がこう届いてほしいなあと思っているのとズレていたらどうしようとか、めっちゃビクビクしていたんですけど(笑)、今のところはありがたいことに前向きな反応の方が断然多くて。今までも今もずっと私は私ですけど、今の私に需要があるのかなと考えたりもするんですよね。需要のためだけに音楽をやるわけではないですけど、それでも今、私のことを知ってくれている人たちが、私がやろうとしていることや音楽活動を前向きに捉えてくれるのかな?と考えていた部分はあって。でもそれを安心させてくれるような反応をいただけているので、このまま突っ走るしかないなと。本当に嬉しいです。

──ではグループとソロでの活動で、アーティストとしての責任感に違いはありますか?

鞘師 そんなに大きくは変わってない気がするんです、実は。今までは「グループの中で自分が引っ張っていかなきゃ」「今までの歴史があるし」という意味でプレッシャーを感じながらやれた部分ももちろんありました。でも今は自分次第でこの先続けられるか・続けられないのかが決まってくると思いますし、1人でやっているとはいえ周りで支えてくださっている方がいるので、こうやって一生懸命動いてくださっている方たちの気持ちを裏切れないとか、そういう意味での責任感も生まれていて。
今はそういうプレッシャーを感じながら活動できているなと思います。

>>「元モーニング娘。鞘師里保が語る、海外進出の展望と素の自分」はこちら

(取材・文/東海林その子)
▽鞘師里保(さやし・りほ)
1998年5月28日生まれ、広島県出身。モーニング娘。の“絶対的エース”として2015年12月までグループを牽引。ダンス留学を経て2020年9月より芸能活動を再開し、女優や歌手としての活動を本格化させている。
Instagram:riho_sayashi_insta
スタッフTwitter:@sayashi_staff
YouTube(https://www.youtube.com/channel/UCz7dJX1Q68hzLaRjCoTEesA)
編集部おすすめ