【前編はこちら】ブレイクピン芸人・やす子が語る自衛隊時代「朝6時にラッパ点呼、日中はブルドーザーの整備」
【写真】これがプロのほふく前進、自衛隊芸人としてブレイク中のやす子
ーーやす子さんは『新春おもしろ荘』(日本テレビ)のオーディションに受かったのが、ブレイクのきっかけですね。
やす子 受かるわけないと思っていたんで、最初のオーディションのときは自衛隊の制服の下に当時の仕事の制服を着て、ネタ終わってすぐに仕事に行きました。ZOOM審査だったんで手ごたえも全く分からず、二次に進んだって連絡が来たときにはオーディションのことをまったく忘れていたくらいです。『おもしろ荘』が無かったら今の自分はないですね。
ーー人気番組ですから反応も大きかったんじゃ?
やす子 お世話になった自衛隊時代の上官が「一緒に食事したのが家族の自慢になっています」と連絡してきてくれて。
ーー反響が大きい分、その重圧も大きかったんですね。
やす子 例えばロケをしても全然うまくいかなくて。
ーーどういう風に前向きな気持ちに切り替えたんでしょうか。
やす子 まわりの先輩たちの言葉に救われて、ですね。ナインティナインさんがスタッフさんに「良かった」って言ってくださったのを聞いたり、爆笑問題さんがラジオで「面白い」って言ってくださったりとか。
ーーコロナ禍でもライブは開催していたんですか?
やす子 SMAが持っている「Beach V(びーちぶ)」という劇場がありまして、そこで演者もお客さんもSMAの芸人、というライブをやっているんです。配信もやっていないので一般の方は観れないんですが。他の事務所の芸人さんからは「地下闘技場」と言われてます(笑)。
ーーそれがやす子さんの鍛錬の場なんですね。
やす子「びーちぶ」は休みの日に行っても誰かしらSMAの芸人さんがいてネタをやったりしていて。そういう、誰かに会える場所、というのも自分にはよかったです。先輩のAMEMIYAさんは「ソニーはみんな家族だからね」っておっしゃるんですけど、そういう事務所だから続けていけたんだと思います。
ーーテレビにもどんどん出られるようになって、華やかな芸能界の世界に戸惑うことはありませんか?
やす子 スタッフさんやマネージャーさんが敬語で話しかけてくれたり、ドアを開けてくれたりするのにはいまだに慣れません。「タクシー来たのでどうぞ」とか言われても「恐れ多い! 裸足で帰らせてください!」という感覚です。
すごくドキドキした体験でいうと、『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS)に出させていただいたときに、マネージャーさんが収録終わりでバイきんぐの小峠英二さんの楽屋に連れて行ってくださって。
ーー正直、今の質問はそれこそ中居正広さんのようなスター芸能人に会えることに対してどう思うか、だったんですが、ひょっとしてやす子さんは「対芸人」でなければ緊張したりドキドキしたりしないタイプですか?
やす子 本当に失礼な話なんですけど、緊張しないかもしれないです。一度、テレビ局に入るときに玄関で某大物芸能人の方とすれ違ったことがあったんですが、自分は何も気にせず通り過ぎて。周りの方が「え? ほら○○だよ?」って言っても、「あ、はい~」って(笑)。
やす子 芸人になりたてのときに単独ライブのお手伝いをしたハリウッドザコシショウさんが「1人で何百人の人を笑わせて、お笑いってすごい!」って気づかされて。他にも、お笑いを勉強し始めて知った、コントでもなく小道具も使わず、喋りだけで笑いを取る千原ジュニアさんだったり……。手段は違いますけど、お笑いに真摯に向き合ってやっていらっしゃる方はみなさんすごいと思いますし、尊敬しています。
ーー今後はどういうことをやってみたいですか?
やす子 今、手話を学んでいまして。きっかけは、耳が聞こえないお医者さんの動画を観たからなんです。その方は今まで、口の動きを見て診察していたそうなんですが、コロナでみんなマスクをするようになって手話を始めたそうなんです。「確かに自分もロケをするときはマスクしているなあ。それは耳の聞こえない人には何も伝わらないな」と思ったので、手話を使って面白いことをできればいいんじゃないかなって。
そういう新しいことにチャレンジしていきたいです。あとはそうですね……未だにテレビはあまり観ないんですけど、ラジオはよく聞くんです。お笑いも、ラジオから学ぶことが多いかもしれないです。だから夢は冠ラジオを持つことですね。
ーーラジオはより、芸人さんの個性が出ますよね。
やす子 テレビを観られる方は私のことを「ポンコツだなあ」と思われるかと思うんですが、やっぱり共演するみなさんは腕のある先輩方ばかりなんで、そう思われることが正解だと思うんですよ。一方で自分の中の「面白い部分」というのはちゃんと自覚しているつもりで、そういう世界観を出せる場があればうれしいです。自衛隊のキャラクターで世に出させていただいたんですけど、いつかはこの迷彩服に頼らないような芸人になれたらいいなと思います。はい~。