現在絶賛公開中の映画『愛のまなざしを』で共演している、仲村トオル斎藤工。本作は、カンヌ国際映画祭にてW受賞した『UNloved』、比類なき傑作『接吻』に続き、強烈な自我を持つ女性を軸に狂気ともいえる愛を描いてきた鬼才・万田邦敏監督が描く愛憎サスペンス。
万田監督とは3度目のタッグとなる仲村トオルと、万田作品には今回初出演する斎藤工に、共演にあたり、互いの印象や万田監督について、語ってもらった。(前後編の後編)

【前編はこちら】仲村トオル&斎藤工が14年ぶりに映画で共演「初対面は“気になる”出会い方でした」

【写真】14年ぶりの共演となる仲村トオル&斎藤工

――『愛のまなざしを』は仲村さん演じる精神科医の貴志が、モラハラの恋人に連れられてやってきた患者の綾子(杉野希妃)に翻弄され、やがて互いに堕ちていくサスペンス作品です。綾子は亡くなった妻(中村ゆり)のことを忘れられない貴志を自分のものにするために残酷な嘘を重ねていく、いわゆるファム・ファタールですが、綾子のようなキャラクターにどういう印象を持ちましたか?

仲村 プライベートでは近付きたくないですけど……(笑)。ただ、この映画の登場人物に対する印象は少しずつ変化していて、綾子に関しては可哀そうな女性だなというのが今の感想です。目の前に現れたハードルを強く蹴りすぎてケガをして、それが傷になって生き方に反映されてしまうけど、それに自分では気づいていない。愛情に近いような同情を何となく抱いていますが、遠くにいる存在だから、そう感じるんでしょうね。

斎藤 僕も同じ意見ですね。付き合っているとかさぶたが増えそうだなと(笑)。ただ、あくまで僕の想像ですけど、綾子のような側面は女性ならば誰しもあって、それは普通だと異性に見せないようにするもので、その概念の集合体が綾子のような気がするんです。だから綾子のことを理解できないという方ほど、実は自分の中に綾子が潜んでいるんじゃないかと思わせるようなシンボリックなキャラクターですね。

――映画の歴史では、魅力的なファム・ファタールが数多く描かれてきました。これまでお二人が映画で共演した女優さんで、ファム・ファタールだなと感じた方は誰でしょうか?

斎藤 阪本順治監督の『団地』(2016年)で共演させていただいた藤山直美さんです。
旦那さん役が岸部一徳さんで、この夫婦が団地におけるヒエラルキーの絶妙な位置にいるんです。直美さん演じるヒナ子が家の中でしか見せない本性と、団地というムラの中で見せるよそ行きの顔が全く違っていて、よそ行きの顔があるからこそ社会は保たれている。

それを藤山直美という素晴らしい表現者が自然に演じていて、とてつもないリアルを感じたんですよね。同じ阪本順治監督、直美さん主演の『顔』(2000年)もそうでしたけど、作品全体よりも、直美さん自体が鮮明に焼き付いています。

仲村 今、思い浮かんだ人がいるのですが、お名前を口にしていいのかどうか……。まあ、時間も経っているので……。森田芳光監督の『悲しい色やねん』(1998年)で共演した藤谷美和子さん。役柄自体も、撮影現場での振る舞いというか、有り様も含めて、とても強烈でした(笑)。

――いろいろな伝説のある方ですからね(笑)。撮影自体はスムーズに進んだんですか?

仲村 スムーズではなかったです……。でも数年後にドラマで共演して、平和で楽しい現場を共にして、最終回で結婚しました(笑)。

――『愛のまなざしを』で貴志の息子・祐樹役を演じた藤原大祐さんが、映画初出演とは思えないほど堂々とした演技を繰り広げていました。
仲村さんから見て、どんな印象を受けましたか?

仲村 彼の場合は、最初からできそうな気配があったというか、初めてリハーサルで顔を合わせたときに、「どこかで会ったことがあったかな?」と聞いたら、「ありません」という答えで。過去に撮影現場で会ったと思わせるぐらいプロの輝きというか、キャリアのある俳優さんのような雰囲気があったんですよね。でも話を聞いたら、「これが初めて受けたオーディションで、お芝居をするのも初めてです」と。

しかも、実際に撮影が始まると、彼が一番、万田監督に物申していたような印象すらあります。「それはちょっと不自然じゃないですか?」みたいなことを藤原君が言ったら、万田監督は「人間は不自然なこともするんだよ」と答えていて(笑)。

斎藤 いい場面ですね(笑)。

仲村 舞台挨拶でも話したんですけど、彼は万田監督に要求された動きを、しなやかにこなしつつプラスアルファを入れてくるんです。新人だからリラックスさせてあげようみたいな意識を持つまでもなく、「この子は大丈夫だな」と早々に思いました。

――斎藤さんは映画で一緒のシーンこそありませんでしたが、藤原さんにどんな印象を受けましたか。

斎藤 実は舞台挨拶で初めてお会いしたんですけど、佇まいも発言も堂々としていて、魂年齢が高いなという印象でした。しっかり地に足がついていて、いずれは世界進出するであろう、日本を背負う器だなと感じましたね。

▽『愛のまなざしを』大阪での舞台挨拶が決定

日時:11月20日(土)
テアトル梅田
1 回目 9:45 の回 上映後
2 回目 12:15 の回 上映前
登壇 :仲村トオル、万田監督(予定)

イオンシネマ シアタス心斎橋
1 回目 12:30 の回 上映後
2 回目 15:10 の回 上映前
登壇 :仲村トオル(予定)

仲村トオル/ヘアメイク:宮本盛満 スタイリスト:中川原 寛(CaNN) 
斎藤工/ヘアメイク:くどうあき、スタイリスト:yoppy(juice)、ジャケット・シャツ・パンツ: Blanc YM / ブラン ワイエム 参考商品
ブランドお問い合わせ:TEENY RANCH / ティーニーランチ 東京都渋谷区神宮前2-19-16HT神宮前ビル5F TEL 03-6812-9341

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