松岡はなや小田彩加などが所属するHKT48・チームTIIの新公演が5月6日に初日を迎えた。公演はAKB48チームAが14年前に初演した『恋愛禁止条例』。
チームにとって約5年半ぶりの新公演はどんな幕開けだったのか…。グループを長年取材し続けている小島和宏記者がレポートする。

【写真】HKT48・チームTII、5年半ぶりの新公演『恋愛禁止条例』の様子【4点】

5月6日、HKT48・チームTIIの新公演の幕が開いた。

チームTIIにとって、新公演はじつに5年半ぶり。というか、結成以来、いままでずっと『手をつなぎながら』公演をおこなってきた。

まだ新公演スタートが発表される前に、キャプテンの山下エミリーの取材をしていたら「TIIはメンバーの入れ替わりもそんなになかったし、公演もずっと同じ。なにも変わらないんですけど、それでもステージでは変化を見せ続けなくてはいけない。それがすごく難しいし、どうしたらいいのか、ずっと考えています」と言われた。

若きキャプテンの苦悩。

そして彼女は「私、キャプテン歴は長いのに経験値があんまりないんですよ」とも口にした。それを聞いたチームH・キャプテンの松岡菜摘と、チームKⅣ・キャプテンの本村碧唯は「じゃあ、今度のツアーではエミリーにいろいろ経験してもらおうよ。開演前の円陣とかさ」と提案(実際、ツアー初日の夜公演では山下エミリーが円陣での声掛けを担当している)。
1期生が現状打破のために背中を押してくれたのだ。

そんな言葉を聞いていたから新公演という大きな「変化」がチームTIIになにをもたらすのか、とても気になっていた。とはいえ、ゴールデンウイーク中に博多まで飛ぶのは……と思っていたタイミングで、また別のメンバーの声を耳にすることになる。

それは現在発売中の『月刊エンタメ』6・7月合併号(徳間書店)に掲載されている山内祐奈と松岡はなの対談を取材しているときのことだった。二人ともチームTII所属なので、当然、新公演の話題が中心となってくるのだが、全国ツアー中にして、まだ従来の『手つな』公演も実施されているタイミング(『手つな』千秋楽の日も開演前に新公演のリハーサルがおこなわれていた)で、かなりハードなスケジュールで、その大変さを口にしながらも、山内祐奈がこう言った。

「初日に向けての不安もあるんですけど、5年前の『手つな』の初日とはまったく違う。いまのTIIには安心感と安定感があるなって改めて感じています」

このひとことに5年半の成長が詰まっていた。

結成当初は完全にグループ内での妹的な存在だったが、いつしか、みんな大人になっていった。当時のイメージにはぴったりだった『手つな』公演も、そろそろ窮屈になりはじめていたのかもしれない。

今回はどの演目を披露するのかはシークレットになっていて、初日の幕が開いた瞬間にわかる、という趣向。そのルールは徹底されていて(うっかり漏らしてしまった今村麻莉愛が初日のステージで土下座謝罪する一幕も)、取材中も「大人っぽさを出せる」「新しいTIIをお見せできると思う」といったぼんやりとしたヒントしかもらえなかった。ただ、山下エミリーと山内祐奈の言葉を聞いてしまったら、もうなにを置いても博多に飛んで初日を取材する、という選択肢しかなかった。


そして、幕が開いた。

そこには坂本愛玲菜が立っていた。

彼女のソロパートからスタートする『長い光』。そう、新公演はかつて前田敦子高橋みなみ小嶋陽菜らを擁していたAKB48・チームAが初演した『恋愛禁止条例』だった。ファンのあいだでは有名な公演だが、初演はもう14年の前のこと。おそらく令和になってから披露されるのはこれがはじめてになるはずで、ちょっと意外なチョイスだった。いや、もちろんいい意味で。

この公演はメンバーからの提案で決まったそうだ。キャプテンの山下エミリーから「私たちは年齢も重ねて、もう元気だけじゃなく、表情やしなやかさ、そしてオーラを出したパフォーマンスを磨かなければいけないと思う」という理由から新公演で『恋愛禁止条例』をやりたい、というアピールがあり、スタッフもその考えに同意して、公演作りがはじまった、という。

なによりもオープニングを飾る坂本愛玲菜の歌声の美しさ、である。彼女の歌唱力の高さには定評があるが、現在開催中の『Under the Spotlight』ツアーでは他のアーティストのカバー曲を含め、圧巻の歌声でステージをギュッと引き締めてくれている。こうやってツアーでの活躍と公演での見せ場が連動してくると、さらにいろんな現場を追いかけたくなってくるし、ようやくコロナ禍の負のループから一歩、抜け出せそうな期待感を抱かせてくれる素敵なオープニングだった。


この公演はユニット曲に関しても有名な楽曲が多い。48グループがドーム公演をガンガンやっていた時期のセットリストによく入っていたので「公演自体は見たことがないけれども、この曲は知っている!」という方も多いはず。ある意味、初見にやさしい公演でもある。

栗原紗英がセンターを務める『ハート型ウイルス』は反則級の破壊力だったし、『ツンデレ!』では松岡はな、堺萌香、後藤陽菜乃が普段のイメージとはちょっと違ったパフォーマンスで沸かせた。そこには初日特有のガチガチな緊張感はあまり見られず(実際には相当、緊張していたはずだが……)、山内祐奈が言った「安心感と安定感」がとてもしっくりきた。

とてもいい公演だった。だが、それよりも強く感じたのは「TIIはすごくいいチームになったな」ということ。ステージ上だけでなく、しっかりと全員がそれぞれの役割を果たしているのだろう。いままでにないチーム感がそこにあった。

終演後、山下エミリーにその感想を伝えると、彼女は嬉しいような、ホッとしたような、さまざまな感情が入り混じった笑顔を浮かべて「そう言ってもらえるのがいちばんうれしいです!」と言った。これからはまた別の苦悩をキャプテンとして抱えることになるかもしれないが、なにも変わらないという状況を打破できた今となっては、そんなに怖がることなんてないはずだ。

チームTIIには1期生も2期生もいない。


3期生がトップのチームが一丸となって新公演を作りあげ、見事なショーを見せてくれた。これはもう新しいHKT48を象徴する出来事ではないか? 

アンコールの『あの頃のスニーカー』では、武田智加がスマホで記念撮影をするアクションがあったのだが、じつはこのとき、スマホのカメラは動画を撮っていて、終演後にHKT48の公式Twitterに最速公開される、という粋な演出も。みんなで思い出を積み重ねていきたい、というメンバーの言葉が心に染みる。

現在、3つのチームの中で唯一、16人のフルメンバーが揃っているチームTIIだが6月27日には松本日向が卒業する。この日、ステージ上で撮影された16人での動画はとてもレアなものになる。いつか6期生が加入するかもしれないし、そうなればユニットもまた変化してくることだろう。

公演に関しては、数を重ねるごとに練りあげられていくものが多いので、初日がベストということはありえないのだが、この日の公演は「はじめの一歩」としては最高級だった。チームTIIの、そしてHKT48の新しい幕がこの日、上がった。

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