【前編はこちら】元『週刊プロレス』記者が見た、SKE48荒井優希“二刀流”プロレスデビューからの1年
【写真】5月3日後楽園ホール、荒井優希&辰巳リカ&渡辺未詩&vs愛野ユキ&らく&原宿ぽむの6人タッグマッチ
3月9日にリリースされたSKE48の新曲『心にFlower』。その選抜メンバーに荒井優希の名前はなかった。2018年に初選抜入りして以降、コンスタントに選抜メンバーとして活躍してきただけに、プロレス大賞新人賞受賞からの選抜落ちは、まさに「天国から地獄」。直後に控えていたタイトルマッチのことを考えても、選抜メンバーがベルトを獲得、となったほうが世間に対するインパクトの大きさはかなり違ってくるだけに(もっともタイトルマッチでも敗れてしまうのだが……)、これは悔しすぎる結果だった。
「そうですね。自分から『両方、頑張る!』とファンの方には言ってきたので……それにみなるんさん(大場美奈)の卒業シングルだったので、そこに選抜として参加できなかったのも残念でした。ただ、ファンの方はわかってくださると思うんですけど、私に興味のない方たちからしたら『プロレスをやっているから選抜落ちした』という見られ方をしちゃうじゃないですか? とにかく、それが一番悔しかったです!」
アイドルとプロレスの二刀流をたくさんの人に認めてもらうには、やはり、それなりの実績が必要だ。いつの日か、プロレスでチャンピオンベルトを巻いて、SKE48でのシングル曲でも選抜入り、という「W戴冠」を果たせれば、それこそ歌番組にチャンピオンベルトを持って出演だってできるかもしれないし、より自分をアピールすることもできる。すでにSKE48ファンが東京女子プロレスの会場に流入してくるなど、二刀流効果は見え始めている。たしかにファンからしてみれば、自分の推しメンをずっと見ていられるプロレスの試合は魅力的かもしれない。
「あぁ~、そういう考え方もあるんですね。私にはなかったです(笑)。逆にコンサートだったら、端っこだったりもするけれど、2時間以上、ずっとステージに立っているじゃないですか? そっちのほうがお得に感じるのかなぁ~、と思ったり。
プロレスをはじめてから、ファンのみなさんには『いままでよりもアイドルっぽくなったね』とよく言われるようになったんですよ。たしかにアイドルとしてステージに立つときには、一瞬でもプロレスラーに見えないように、と気をつけるようにしているので、それがアイドルらしさにつながっているのかも。両方の会場に足を運んでいただければ、いろんな私を見ることができると思います」
その昔、アイドルをプロレスに例えて語ることが流行ったことがある。2010年ごろ、まさにAKB48がブレイクするぐらいのタイミングだった。筆者はまさにそのムーブメントに乗っかってアイドルについて記事を書くようになったのだが、当時、アイドルに見ていたプロレスラーっぽい暑苦しさは、現役アイドルにして現役プロレスラーの荒井優希にはあまり感じられない。これが令和のリアル、ということなのかもしれない。
デビュー1周年記念試合で、荒井優希は6人タッグマッチでみずからがフォールを奪って、堂々の勝利を収めた。
「1年前のことを考えたら、自分がこうやって後楽園ホールのリングで勝つことができるなんて信じられないですよね。
両国国技館で伊藤麻希に敗れたとき、彼女は「これでプロレスを続けていく理由ができた」と語った。2021年いっぱいで辞めるつもりでいたプロレスを自分の意志で続行し、さらにその先の可能性も示してくれたことになる。
「これはプロレスに限ったことではないんですけど、私、あんまり先のことを考えないっていうか、人生設計みたいなものはないんですよ(笑)。ただ、このままプロレスを辞めてしまったら、両国で伊藤さんに負けたところで辞めていても同じだったことになるじゃないですか? それは絶対に嫌なので、まだまだプロレスを続けていきます! 伊藤さんにも勝ちたいし、またアジャコングさんとも闘いたいので」
プロレスラーとして2年目に突入した荒井優希は、5月29日(日)に東京女子プロレスの東京・大手町三井ホール大会に参戦したあと、6月12日(日)にはさいたまスーパーアリーナ・メインホールで開催されるビッグマッチ『サイバーファイトフェスティバル2022』への出場も決まっている。現役アイドルにして、現役プロレスラーとして未開の道を往く荒井優希の闘いはプロレスファンならずとも一見の価値がある。