3月30日(土)31日(日)に幕張メッセで開催された「Hello! Project 20th Anniversary!! Hello! Project ひなフェス 2019」。初日昼公演はハロプロ20周年企画回として、
に関するニュース">モーニング娘。OGの辻希美加護亜依新垣里沙道重さゆみ鞘師里保が出演した。中でも大きな話題を呼んだのはやはり、辻希美と加護亜依の共演だろう。その共演の意味を改めて考えてみたい。

3月30日、千葉・幕張メッセで開催された『Hello! Project 20th Anniversary!! Hello! Project ひなフェス 2019』で、辻希美と加護亜依が13年ぶりに同じステージに立った。オープニングからいきなり『ロボキッス』を熱唱した2人は、「リーダーの辻希美と!」「サブリーダーの加護亜依!」「2人合わせてW(ダブルユー)で~す!」とお決まりの挨拶を披露。会場からは割れんばかりの大歓声と、「うぅ……ここまで長かったよう」とむせび泣く嗚咽が交錯した。

2人は黄金期のモーニング娘。を牽引し、ミニモニ。では全国のちびっ子たちの憧れとなった。グループ卒業後もユニット・W(ダブルユー)を結成し、現在のアイドルブームの礎を築いたことは今さら説明の必要もないかもしれない。

だが、この日の共演は単に“伝説的ユニットの復活劇”というだけではなかった。
戦後の芸能史に刻まれるような“電撃的和解”と言っても過言ではない。なぜか? 加護の卒業は決してまれたかたちのものではなかったからである。2006年と07年、未成年ながら喫煙している姿を週刊誌に連続でスッパ抜かれた加護は、事務所から解雇される。それは時代を切り拓いた人気メンバーの、あまりにも寂しい幕切れだった。

だからこそ──。辻にとっても、加護にとっても、この日の共演は感無量だったはず。決して開かれないはずのドアが開いた。絶対に戻らないはずの時計の針が戻った。これは一種の“事件”なのである。

この日、2人は計5曲をパフォーマンスした。クライマックスはモーニング娘。’19の現役メンバーと一緒に披露した『I WISH』。
感極まった加護は途中から歌うことができなくなった。その隣で加護を支える辻も万感の想いで涙ぐむ。こうなると、客席はもちろん大号泣大会だ。

≪人生って すばらしい ほら 誰かと 出会ったり 恋をしてみたり≫

≪晴れの日があるから そのうち雨も降る 全ていつか納得できるさ!≫

『I WISH』がリリースされた00年9月の時点で辻は13歳、加護は12歳だった。驚くべきことに、プロデューサーであり作曲家でもあるつんく♂もまだ31歳に過ぎない。それゆえ、当時は壮大なスケールの歌詞が「綺麗事すぎる」と熱心なファンからも揶揄されたものだった。

それが今となってはどうだろう。辻の、加護の、つんく♂の歩んできた人生が歌詞のメッセージ性に独特の深みを与え、唯一無二の説得力を持つに至ったのである。逆に言うと、もし加護のスキャンダルがなかったら、ここまで『I WISH』の歌詞は当日の観客に響かなかったかもしれない。

ここでポイントとなるのは以下の2点だ。ひとつは「人生は長期戦である」という絶対的真理。そしてもうひとつは「取り返しのつかない失敗なんて、そうそうない」という生きる上での希望である。


たとえば政治家の汚職や不倫を糾弾している雑誌社の記者も、私生活では叩けば埃のひとつやふたつは出てくるかもしれない。逆にどんなにまっすぐ正直に生きていても、リストラ、破算、病気、離婚、親の痴呆などのトラブルは予想もしない角度から襲ってくる。それが人生というものである。生きるということは、そういった邪魔くさい諸々と向き合うことに他ならない。『I WISH』が主張しているのは、まさにそういうことなのだ。

加護の生き様は、間違いなく『I WISH』にブルージーな味わいを与えた。 「I=亜依。WISH=希美。つまり『I WISH』とは辻・加護の曲である」とは当時からファンの間で囁かれていた噂。その真贋はつんく♂に聞かないとわからないが、この3月30日に『I WISH』が完成形となったのはたしかだろう。

当日の加護はビジュアルもパフォーマンスも完全に“仕上げて”きており、ハロプロ現役メンバーにも大きな刺激を与えただろう。対する辻も第4子を昨年12月に産んだとは思えないほどの“現役アイドルぶり”を発揮し、その本気度を露わにした。
昨年末、日本レコード大賞の舞台でピンクレディーがキレキレのパフォーマンスで現役感を誇示して、視聴者を唖然とさせたのと同じ構図である。となると、気になるのは今後のこと。果たしてW復活はあるのか?

「クビにしたタレントを自社の公演で復活させる」という通常では考えられない決断を下した事務所の度量にはファンからも称賛の声が上がったが、今後のこととなると、まったく予想がつかないと当の事務所関係者が語っている。私たちにできることは、辻・加護という物語を最後まで見守ることだけなのかもしれない。