【写真】イタリアで国民的大ヒット『離ればなれになっても』【9点】
〇ストーリー
1982年ローマ、16歳のジェンマは同級生のパオロと恋におちる。彼の親友のジュリオとリッカルドと共に、弾けるような青春の時を過ごしていた。ところが突然、母親を亡くしたジェンマは、ナポリの伯母の家に引き取られる。1989年、教師、俳優、弁護士と、社会への一歩を踏み出した3人の男たちは、別人のように変わってしまったジェンマと再会する……。
〇おすすめポイント
ほとんどの人は、10代の頃に思っていた通りの人生なんておくっていないはずだ。運命の相手だと思っていたはずがそうでないと気づいたり、軌道修正を間違えて道を見失ってしまったり……。
愛や絆、友情を断ち切ったと思えば、またそれに助けられたりと、人は回り道しながら生きている。間違っている、間違っていないなんて思っても選んだしまった道は簡単に戻ることはできない。それを歳月によって実感していく、それもまた人生。
エットーレ・スコラ監督の『あんなに愛しあったのに』(1974)や、ディーノ・リージ監督『困難な人生』(1961)のような、古典的なプロットに基づいているため、コミカルというよりもシニカルな色が強いのはイタリアン・コメディの特徴ともいえる。
今作は、登場人物たちが観客に問いかける演出によって、観客の記憶にもリンクするのが特徴的。異なる道を進んできた4人だからこそ、それぞれが等身大の人生だからこそ、観る人によって、また誰に感情移入するかによって、感じ方が全く違ってくる作品だといえる。
特にヒロインのジェンマは、いわゆるステレオタイプなヒロイン像とは違い、心変わりも早いし、人生に疲れて希望を見失っているといった印象。10代の希望に満ち溢れていた頃とは全く違う姿を観ていると、シニカルに思えるものの、救われてほしいとも思って見守ってしまう。ジェンマが救われれば、自分も何かが変わるかもしれないと思うのだ。
だからこそ、多くの人の共感を得て、イタリアでは三週連続1位の大ヒットにもなったのだろう。感動というよりは共感する作品で、ビターな人間ドラマでありながら、かすかに人生も捨てたものではないと思わせる。
〇作品情報
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
出演:ピエルフランチェスコ・ファビーノ、ミカエラ・ラマツォッティ、キム・ロッシ・スチュアート、クラウディオ・サンタマリアほか
原題:Gli anni più belli /2020/イタリア/カラー/シネスコ
5.1chデジタル/135分/字幕翻訳:岡本太郎
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
配給:ギャガGAGA★
公式サイト:gaga.ne.jp/ thebestyears
12月30日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー
(C)2020 Lotus Production s.r.l. -3 Marys Entertainment
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