2012年に「第13回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを獲得してから、女優としてのキャリアを積み上げてきた吉本実憂。現在は『恋愛ドラマな恋がしたい in NEW YORK』(ABEMA)に出演するなど、若い世代を中心に注目を集める彼女に芸能界入りのきっかけやターニングポイントになった作品について振り返ってもらった。


【写真】くるくる変わる表情に注目、吉本実憂の撮りおろしカット【15点】

──吉本さんは今年でデビューされて10年になりますが、もともと芸能界に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

吉本 実は興味を持っていなかったんです(笑)。すごく人見知りだったので、お母さんがこのままだったらどんな仕事もできないだろうから、と出してきたのが全日本国民的美少女コンテストでした。

──お母様が心配するくらいというのは、どの程度の人見知りだったんですか?

吉本 家族と友だちとは喋れるけど、親戚とは恥ずかしくて少し喋れないという感じでしたね。私がコンテストを受けたのが高校1年生のときだったんですけど、その年で親戚とも恥ずかしがって喋っているのが多分不安だったんだと思います。当時は姉の真似をして文化系の部活に入ったりして、やりたいことや自分の意志がないことも不安に思っていたのかなと思います。

──極度の人見知りで、芸能界にも興味がなかった中でのオーディションは怖くなかったですか?

吉本 もちろん言葉を発したり大人の前で表現することに怖さはありました。
でも、昔からテレビを見るのは好きでしたし、小さい頃に劇をして楽しかった記憶があったので、どこかで芸能界に対して「楽しそう」みたいなのは思っていたのかもしれません。ただ、そんな状態でグランプリをいただいてしまったのが、どこか申し訳ないなという気持ちもありますね。

──お仕事をする中で、人見知りは改善されました?

吉本 治りました(笑)。でもデビューして5年くらい経った、20歳を過ぎてからですかね。『クズの本懐』という作品があって、私が演じた役が原作でボブヘアだったのでロングだった髪を30cmくらい切ったんです。それまで自分で勝手に「いい子でいなきゃいけない」「ちゃんとしなきゃいけない」と決めつけて縛りつけていた部分が髪を切って解放されたというか。


──解放ですか。

吉本 勝手に「国民的美少女コンテスト出身」のイメージを守らなきゃいけないと思ったり、清純派と言われたらそういなきゃと思ったりしていたんです。だけどこのお仕事を始める前はずっと髪が短かったのもあり、髪を切ったことで子どもの頃の気持ちを思い出した感覚に近いんですよ。短い方が自分のもともとの性格に合うと思っていたし、そこから徐々にいい意味で人の目を気にしないようになっていきました。

──もともとはどういう性格だったのですか?

吉本 簡単に言えば、アクティブで元気。小さい頃は冬でも裸足で外を走り回ったり木登りをしたり、部活とかじゃなくて、ただ動くことや自然が好きなんです。


──そこは清純派と言われることで、あまり出せずにいたところなのでしょうか。

吉本 ちゃんとしなきゃと思っていた部分ではあります。普段はそういう呼び方をしてないんですけど、こういうインタビューではおじいちゃんとおばあちゃんを祖父、祖母と言わなきゃいけないとか(笑)、そういう積み重ねですね。勝手に変な自分を作り上げちゃったんだと思います。

──気持ちが解放されて、演技がやりやすくなった部分もありますか?

吉本 今までは役とは別のところですごく人に気を使っていて、でもそれは「この人からこう思われたらどうしよう」「こう思われたくないな」と自分に矛先が向いていたんですよね。髪を切ってからは相手に矢印が向くようになって、「この人はどういう役作りをしているんだろう」「この監督はどうやって演出する方なんだろう」と人に興味を持つようになったんですよ。
今は自分に正直に、変に自分を作らずにいられている気がしますし、やっと現場での居方を見つけた感じがしました。

──自分らしくいることや、自分の気持ちに嘘をつかないことが吉本さんにとって大事なんですね。

吉本 そうです。自然体、嘘をつかない、真っ当に生きる……。なんか「真っ当」っていい言葉じゃないですか? 「まっすぐ」もすごく素敵な言葉なんですけど、それは純粋に、天性で持っているものだと思うんです。でも「真っ当」は何かを経験していろんな失敗を経た人が使う言葉かなと思うので、すごく好きなんですよね。
今までいろいろな経験をさせてもらったので、それはそれでお芝居に活かせると思うし、これからは自分の素直な感情で生きた方がお芝居にも作品にもいい影響を与えると思っています。

──変化のきっかけになったり、お仕事に向き合う姿勢が変化した作品はありますか?

吉本 お芝居をやりたい、この仕事をしたいとしっかり思ったきっかけは内野聖陽さん主演の『罪の余白』という映画です。私はどうしたら人が傷つくかを分かっている、スクールカーストの頂点にいるような女の子を演じたんですけど、人を簡単に傷つける感覚を落とし込むために1ヶ月かけて役作りをしたんです。そこまでしないと役を自分に取り込めないんだと思いましたし、それまでこんなに熱中することがなかったからその時間が楽しくて、今もこうやって役者という仕事を続けてきているんだと思います。

あとは『さくらの親子丼』。世の中や家族への葛藤を吐き出せずにいる子に、真矢ミキさん演じるさくらさんが親子丼を食べさせて背中を押すという作品で、温かいごはんの力ってすごく大きいなというか、言葉なんていらないんだなというのをすごく感じました。
それに家族の明るいお話というよりも、もっとディープな作品を作ることをひとつの目標にしていたので、それが叶ったということもターニングポイントになった気がしますね。

──ちなみに、普段から出演された作品はご覧になるんですか?

吉本 そうですね。どういうものになっているか、客観的に作品として見られるようになるまでに何回か重ねて観ています。でも今出演している『ドラ恋』はまた別です(笑)。ドキュメンタリーの部分は怖いから一回だけ、でも「自分ってこういう表情をするんだ」みたいな発見があったら巻き戻して観ることもあります。「ブルーベリーナイツ」「幸せの花束を」とか主演を取れたドラマの部分は何回か観ていますね。

──ご自分の作品を見る以外に、役のため、演技のためにしていることはありますか?

吉本 日々の感情を大切にするのと、映画やドラマとか作品をいっぱい観ること。あと最近は本を読むようにしています。私、語彙力がないんですよ(笑)。自分の感情を伝えたいけど言葉が出てこないみたいなことがたくさんあるので、ちゃんと表現するために読むようになりましたね。

──特に好きな作品や、影響を受けた作品はありますか?

吉本 「こういう作品を作りたいんだ」と思ったのは『存在のない子供たち』という映画です。内容は家族や貧困の問題を描いていて、作品全体の質感がすごくリアルで生々しいんですよ。面白い作品として人に勧めるのとは少し違いますが、今までで一番心に刺さった作品ですし、自分の軸になりました。あとは『アデル、ブルーは熱い色』とか、泥臭かったりちょっと生々しかったり、リアリティが伝わってくる作品が特に好きですね。

(取材・文/東海林その子)
▽吉本実憂(よしもと・みゆ)
1996年12月28日生まれ、福岡県出身。
「第13回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを受賞し芸能界デビュー。2014年7月に『獣医さん、事件ですよ』でテレビドラマ初出演し、女優として歩み始める。代表作は『クズの本懐』『レディ in ホワイト』『HiGH&LOW THE RED RAIN』など。
Twitter:@MiyuYoshimoto
Instagram:miyu_yoshimoto_official

▼information
音楽朗読劇「星の王子さま Le Petit Prince~きみとぼく~」の1月28日(土)に木戸大聖とともに出演。
詳細(https://lepetitprince23.peatix.com/)