【写真】壮大な夢を語る、牧野アンナ撮りおろしカット【7点】
──現在、沖縄アクターズスクールのオーディション中ですが、実際にレッスンが始まったらダンスに関してはどのように育成していきますか?
牧野 そもそも才能を育てるというのは、教えることではなくて、育つ環境を作ることなんです。その子に何かしらの目標があって、失敗をしながらも自分で考えて、動き出す。これがアクターズの基本的な考え方で、その上で土地柄に合わせていきます。
沖縄はもともと踊る文化が強いのでリズム感があるのに、シャイな人が多くて、ちゃんと育成をしないと才能が開花しないんですね。だからアクターズは、なるべく初期段階でいろんなものを与えないようにしています。
──開花させるために「与えない」?
牧野 まずは自分の心を爆発させる、これが大事だと思っています。「エンターテインメントは戦いだ」というのが父の教えで、よくボクシングに例えながら、「最初は技術よりも“何がなんでも勝つんだ”という闘志が大事だ」と言っていました。そこから徐々に戦い方を覚えていけばいいんです。エンターテインメントに当てはめると、まずはお客さんの心を掴むのが何よりも大事なんです。
──確かに、日本型アイドルのレッスンは受け身がほとんどのイメージがありますね。
牧野 だからアクターズのレッスンは「曲を流すから自由に踊っていいよ」というところからスタートするんですけど、初めは誰でも恥ずかしいものです。でも、それを乗り越えないといけません。
初めから踊る子もいますけど、踊れない子には「まず曲を聴いてごらん」と声を掛けて「動きたい」が発芽するのを待ちます。そこからようやく体が動いてくると、今度は個性が見えてきます。誰かの真似をする人もいれば、派手な動きをする人もいるし、リズムをとるだけの子もいる。そうやって自分で考えて前進していく……それがダンスの原点だと思っています。
でもやがて、自由に踊るためにはスキルが必要だと気がつくんですね。そのためにはどうしたらいいのか……沖縄の人はシャイだけど誠実な人が多いから、「やっているフリ」ができなくて、言われたことを素直に取り入れて、考えて、成長していくんですよ。それは復活祭で行った短時間のレッスンでも感じたことだったので、そもそもアクターズの教え方と沖縄の県民性がすごくマッチしているんだと思いますね。
──ほかにアクターズスクールの教えで独特なのは、歌いながら踊るレッスンです。普通は別々に教えることが多いですよね。
牧野 もちろんそれの必要性も理解できますけど、私としてはむしろ「何で分けるの?」と思っているんですよね。基本的には歌いながら踊るわけですから、最終的に同時に使いこなせないと意味がないじゃないですか。
だから基本的にアクターズにはボーカルのみのレッスンはありません。レッスン生のうちにそこまで専門的な教えが必要なほどボーカルレベルがずば抜けて高い子がいなかったから、というのもあります。それが必要なレベルに達した頃にはデビューしていることがほとんどですしね。
だからそのときに、自分に合ったボイストレーナーを見つけるのがいいと思っています。現に大知がそのパターンで、彼も昔から歌いながら踊っていましたけど、歌が大きく伸びたのは自分に合ったトレーナーを見つけたからだと言っていましたから。
──DA PAMPや安室奈美恵さんなどアクターズ出身者の歌を聴いて育った世代が親になり、その子供たちが今回新たに始動した沖縄アクターズスクールに応募してくるとなると、また日本の音楽シーンが変わりそうな予感がします。
牧野 まさにそうで、親御さんはアクターズに入れたがるけど、子供は韓国でデビューしたがっている……そんな問い合わせがいくつかありました(笑)。だからこそ、今の十代に響く生徒を早く育てないといけないなと思っています。
(取材・文/犬飼華)
▽牧野アンナ(まきの・あんな)
1971年12月4日生まれ、東京都出身。二度の芸能界デビューを経て、沖縄アクターズスクールのチーフインストラクターとして活躍。2002年からダウン症の子供たちにダンスを教えるスタジオ LOVEJUNXを開業する傍ら、振付師としてAKB48やSKE48の代表曲を手掛ける。
Twitter:@lovejunx210
Instagram:annamakino
▼Information
沖縄アクターズスクール「B.B.WAVESオーディション」が開催中。