一時代を築き上げた「女傑」をこう評するのは失礼だが、もはや完全に再ブレイクを果たしたと言っていいだろう。3回連載の山田邦子インタビュー、1回目では、昨年大きく話題となった「M-1」審査員の舞台裏とコンプラ時代のお笑いについて語ってもらった。


【写真】芸人人生を謳歌する山田邦子の撮り下ろしカット【6点】

M-1グランプリ」の審査員は、話を頂いてからずっと「解禁しないでね」って言われていて。やっと発表されたら、友達から「おめでとう!」ってたくさんLINEが。「へえ、これっておめでたいんだ」って思いました。それと同時に、そのニュースを見たお若い方が「この人誰?」って言う反応で、それもまたおもしろかった。ずいぶんギャップがあるな、って。

「M-1」はずっと視聴者として見ていました。今は予選から見られるから、毎年、「なんだこれ!?」とか、「すごいおもしろいのに、残らなかったんだなあ」とか。まあお笑いは、ネタだけじゃなくて顔とかも含めて好みっていうのはありますよ。例えば私は決勝で真空ジェシカに最高得点を出したけど、松ちゃん(松本人志)はけっこう辛かったり…。審査ってそういうもんだし、それが重要だったりするとは思うんですけど。

審査員をやらせてもらったことで、決勝に出たコンビのファンだったりニュースを見た方だったりが、私のYouTube「山田邦子 クニチャンネル」を見に来てくれることも増えました。「今はもうYouTubeの時代なんだなあ」と改めて思いましたね。


YouTubeは、5年くらい前からやりたくてしかたがなくて。でも、当時はどうやって始めればいいか全くわからなかったんです。結局、前の事務所を離れたのも、YouTubeが出来なかったから、っていうところもあります。今は芸人がYouTubeをやってるのは当たり前だけど、ちょっと早かったのかもしれない。

「M-1」だって、去年は7000組以上エントリーがあったってことは、世に出たくても出てこれない芸人が山ほどいるわけです。自分たちでプロデュースしなきゃいけない時代になってるんですよ。私も他の方のYouTubeを見て、「こういうやり方があるんだな」「夜の8時くらいに出した方がいいな」「めっちゃ再生されてるけど、やってることは意外とシンプルなんだな」とか、参考にしながらやってます。

ウケがいいのは、昔の「オレたちひょうきん族」や(ビート)たけしさんとのエピソード。みんな聞きたいんでしょうね。私としては自分の趣味のこと、例えばリカちゃんとかバービーとかの人形の企画だったり、釣りも好きなんで釣りの企画をやっていきたいんですけど、視聴数は伸びませんね(苦笑)。まあでも、今後も企画を考えていろいろやっていきたいです

テレビが徐々にコンプライアンス重視の姿勢になっていったのも、「YouTube時代」を一気に進めましたよね。私個人は、人の見た目なんて個性なんだから、それをキャラクターにしている人は当たり前にいて、イジってもらいたいだろうなと思っているけど、時代がそれを許さなくなった。


若いお笑いの子たちも、そんな中で一生懸命ネタを作ってるなあ、って感心します。どこかみんなびくびくして、のびのびとしたネタは作れていないかな、という気はするけど。「M-1」で言えば、優勝したウエストランドは、よくやった! って感じですよ。あれ、嫌な感じは受けなかったですもんね。毒を散りばめても、ちょうどよく「そう思うわ~」っていう。

みんなすごく高度な、いい漫才をしているんですよ。でもやっぱり、全体として「勢い」みたいな部分は昔より弱くなってる。今の子たちにしても、私なんかに「うまい」って言われたくはないでしょうね。結局漫才って、おもしろいかどうかなんで。

たけしさんたちが漫才やってたころって、みなさんキャラがすごく立ってたし、そのコンビがいるだけで、そして舞台に立っただけで「待ってました!」って感じだった。そういうことはなくなりましたね。

昔はファンレターだとかたまたま町で出会ったとか、そういうことでしか見ている方の声が届かなかったけど、今はテレビやネットだけじゃなくてプライベートでも何かやった瞬間から本人に届くようにSNSにコメントが来る。
すごい時代ですよ。世の中全部が評論家で。

それって社会にとっては本当の自由ってことなのかもしれないけど、お笑いにまで作用してくるのなら、やってる方としてはちょっとしんどいな、っていう感じはするんですよね。

【中編はこちら】山田邦子、多忙すぎた昭和のテレビ界「朝6時に終わって朝6時スタート、何時に寝るの!?」
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