今年1月期に放送された日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』。人生をゼロから何度もやり直すというタイムリープものでありながら、地元の友達との友情を描いたヒューマンコメディーとして多くの共感を得て、最終回の放送中には、日本&世界トレンド1位を獲得。
TVerでのお気に入り登録者数も100万人を超えるヒットドラマとなった。

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個性的なキャストはもちろんのこと、何気ない会話の面白さ、音楽の使い方や選曲、壮大かつ秀逸な伏線回収などが話題となったほか、伊集院光や佐久間宣行、岡崎体育ら多くの著名人がTwitterやラジオ番組等でも絶賛。そんなドラマの脚本を手掛けたのが、芸人バカリズム=升野英知だ。既に何年も前から、業界関係者や芸人誰もが認める存在ではあったが、このドラマで改めて、その才能を思い知らされた人も多かったに違いない。

芸人からの評価として、最近とても印象的だったのは、佐久間宣行のYouTubeチャンネルでの企画「チュートリアルが嫉妬した芸人ランキング」での徳井義実の評価だ。ランキングの2位にバカリズムの名前を挙げた徳井は「憧れも嫉妬も全部ある。
バカリズムみたいな芸人になりたかった…」と評し、佐久間と共に「東西関係なく、芸人誰もが評価している」とその才能を認めた。

ちなみに、最近の若者はほとんど知らないかもしれないが、かつて、バカリズムはピン芸人ではなくコンビ芸人だった。1995年から2005年まで、升野は相方と共に「バカリズム」というコンビで活動。2000年代初頭には、非吉本の関東芸人の代表格であるバナナマンおぎやはぎ、アルファルファ(現東京03の豊本明長と飯塚悟志によるコンビ)、劇団ひとり、エレキコミック、スピードワゴンらと共に合同コントライブなどを行っていた。今思えば、この頃、切磋琢磨していた芸人達全員がいまだに第一線で活躍しているのも凄い話である。

ピン芸人・バカリズムに転向した後、『R-1ぐらんぷり』でも活躍はしたが、4回決勝に進出するも、優勝は叶わなかった。
当時は、「トツギーノ」や「地理バカ先生」といったフリップ芸が多かったので、世の中を斜め上から見ていて、ちょっと毒っ気がある、イラストの上手いピン芸人…くらいにしか見ていなかった人も多いのではないだろうか。

それが今では、ドラマの脚本を手掛け、自らも出演し、歌番組のMCを務め、CMにも引っ張りだこ。そして、ネタ番組に出れば「孤高のピン芸人」と称えられ、全芸人から嫉妬されるような存在となった。

そんな今のバカリズムを語る上で欠かせない番組がいくつかあるので、紹介したい。まずは『アイドリング!!!』。菊地亜美や朝日奈央が所属していたアイドルグループ・アイドリング!!!が出演していたバラエティ番組である。
地上波とCSを合わせると、通算1300回以上も放送されたこの人気番組で、バカリズムはMCを担当していた。

今にして思えば、バナナマンやオードリーのような、坂道シリーズなどのアイドルグループにおける「公式お兄ちゃん」的存在の先駆けだったと言ってもいいかも知れない。メンバー達が様々な企画に挑戦する中、バカリズムは温かく見守るのではなく、メンバーを茶化したり弄ったりしながら盛り上げてゆく。その頃から、ところどころにバカリズム特有の意地の悪さや独特の毒が見え隠れしていた。

そして、芸人バカリズムにとって最も大きな転機のひとつと言えるのが、やはり、『IPPONグランプリ』だろう。第1回での優勝後、ほぼ全回に出演し、5回の優勝を果たしている。
あの松本人志に認められ、千原ジュニアをはじめとした関西の大喜利芸人達にも認められ、うるさ型のお笑いファンにも認められる絶対的な大喜利王となったのだ。

ちなみに、前述した佐久間のYouTubeチャンネルでは、バカリズムの過去の大喜利での名回答を振り返る「大喜利回答10選」なる企画も配信されている。バカリズム自身による大喜利脳の自己分析も見られるのでオススメだ。さらに、同チャンネルで、千原ジュニアが「『IPPONグランプリグランプリ』は、バカリズムがダントツ1位なので、バカリズムVS全員だと思ってやっている」と語っていたのも印象的だった。

もちろん、『IPPONグランプリ』のチェアマンである松本もバカリズムの大喜利回答については一目置いている。イラストなど変化球を交えた回答の振れ幅、緩急、切れ味。
他の芸人を錯乱させたり、ペースを乱したりする様を、まさにバカなリズム「バカリズム」だと評価した。

さらに、もうひとつ注目したい番組がある。短命に終わってしまい、非常に残念だったのだが、バカリズムと千原ジュニアと劇団ひとりという3人によるレギュラー番組『オモクリ監督』も紹介したい。毎回、芸人や芸能人が監督となって、面白いVTRを作るという番組。ショート動画全盛の今の時代にはピッタリな企画だっただけに、もしかしたら…少しだけ時代が早過ぎたのかも知れない。

実際に、バカリズム達が監督を務めた作品が、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」のコンペティション部門に出品されるという展開もあった。
今後、脚本のみならず、再び、バカリズムが監督も務める作品が観られる日を楽しみに待ちたいものである。

バカリズムは、ライフワークとも言える単独ライブも精力的に続けている。今年の単独ライブは、つい先日終わったばかりなのだが、配信ではまだ視聴可能だ。さらに、この4月期は、自身初となるゴールデン・プライム帯での単独MC番組『私のバカせまい史』もスタートした。ここから更に、どんなバカなリズムで、観る者の期待を裏切っていってくれるのか?ますます楽しみである。

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