4月21日からスタートした山田裕貴主演のドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(TBS系)が日に日に注目度を高めている。本作は8時23分に発車したつくばエクスプレスの車両内に偶然乗り合わせた乗客達が、急に荒廃した世界にワープしてしまうというSF作品。


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現在、3話まで放送されているが、ワープした先が未来であるのような描写もあったが、ハッキリとわかっていないため、「どこに飛ばされたのか?」、大前提として「なぜワープしたのか?」など考察できる要素が多い。実際、各話では伏線、ヒントが散りばめられており、それらを頼りに独自の見解を披露したり、意見を出し合ったりといった動きがSNS上で活発である。

どのような結末を迎えるのか気になるドラマではあるが、人間関係がいかに壊れていくのかにも注目したい。そもそも、ワープ先は森林の中であり、食料や飲み物も十分に持っておらず現地調達が必須。

3話では何とか食料状況は改善したかに思えたが、風呂にも入れず、服も満足に洗濯できない人達との共同生活は悪臭が予想され、ストレスなく過ごせる環境とはとても言えない。なにより、文字通り現実離れした空間に飛ばされたわけなので、正気を保ち続けられる方がおかしい。
人間が追い詰められた時、いかに残酷に、暴力的に、ずる賢くなるのか、そんなハードな展開を待ちたくなる。

“いきなり未来にワープ”という展開を聞くと漫画『漂流教室』が思い出される。同作では小学校が校舎丸ごと未来にワープしてしまうが、そこで教師達は正気を保てずに自殺したり殺し合ったりなどして全員死ぬ。取り残された子供達も冷静さを失い、子供を十字架に張りつけにして火あぶりにしたり、ペストに感染した疑いのある子供を殺したりなど、残虐極まりない行動を見せている。

また、『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』では登場人物が予想不可能な事態に身を置いているということで、映画『ミスト』と重なる点も少なくない。突然謎のモンスターに住民が襲われ、逃げ込んだスーパーマーケットでの人間模様を描いた同作では、危機的な環境から救いを求める人達が、熱狂的なキリスト教信者の中年女性であるミセス・カーモディの声に耳を傾け、カーモディの号令に従って殺意を持つまでになる。


普段は“街の変わり者”として煙たがられる存在だったにもかかわらず、状況が一変すると“教祖”のように持ち上げる様子も恐ろしい。それはおどろおどろしいビジュアルをしているモンスター以上の恐怖だ。さらには集団心理だけではなく「自分自身にも同じ行動を取るかもしれない」という感覚に陥り、人間という生き物の様々な怖さを感じた。

『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』でも、これらの作品のように人間のリアリティを嫌というほど見せてほしいが、今、現在狂気的な言動を見せたのは田中弥一(杉本哲太)のみ。周囲の乗客達は驚いてはいたが、田中に触発されることはなかった。

わずかな食料と水で飢えをしのいでいるため、狂うほどの気力がないだけなのかもしれない。
また、戦闘力の高い白浜優斗(赤楚衛二)がリーダーシップを発揮しているため、狂いたくても狂えない可能性もある。

そもそも、3話では乗客達の間に団結が生まれており、人間関係の崩壊は今後展開されないかもしれない。それでも、冷静になれば冷静になるほど良くない未来しか考えられない状況下、むしろ狂っていないと正気でいることされ難しいのではないか。タガが外れる人、自分だけ何とか生き延びようと企てる人が現れ、作品をかき乱してくれることも心持ちにしたい。

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