岡山を軸に活動する地方地下アイドル「ChamJam」のメンバー・市井舞菜と、彼女の応援のために人生の全てを賭けるファン・えりぴよを軸に、ファンとアイドルの関係を時にコミカルに、時に感動的に描く『推しが武道館にいってくれたら死ぬ』(通称:『推し武道』、刊:徳間書店)。
2020年のアニメ化に続き2022年10月にはドラマ化。
松村沙友理が主人公・えりぴよを熱烈なまでに演じて話題を呼ぶと、5月12日には劇場版も公開決定。今回、映画公開記念として、松村と原作者の平尾アウリ先生の特別対談を実施。互いの愛を存分にぶつけてもらった。

【写真】伝説のファン"えりぴよ"を演じた松村沙友理×平尾アウリ先生【5点】

──平尾先生は、えりぴよを松村さんが演じると決まったとき、どう思われました?

平尾 「いやあ、えりぴよ、可愛すぎないか?」って。もう、えりぴよ役が決まる前から沙友理さんのことが好きで、松村さんの絵を描いてはTwitterに上げていたんですよ。メチャクチャ可愛い方、お顔が好みな方だなあって……(照れて俯く)。

松村 いえいえいえ! けど驚きました。私も「推しのどこが好み?」と聞かれるとついつい「顔」と即答しまうんです。なので、勝手に先生とシンパシー感じちゃいました(笑)。

平尾 そうなんですね(照笑)。その松村さんに、まさか自分の描いた作品のキャラを演じていただけることになるって……。実際に撮影現場にお邪魔して松村さんにごあいさつしたとき、「えりぴよがいる」と感動しました。
ジャージ姿、メチャクチャ似合っています。

松村 ウフフ。乃木坂46時代はジャージをよく着ていたからか、あまりにあの赤いジャージがシックリきすぎて「私、この格好でずっと過ごせるな」と思えたぐらい(笑)。撮影中、共演者のみなさんが衣装も髪型も変わる中、私は常に赤ジャージ、しかも映画版もこのジャージ。もう「ジャージ=私の肌」と思えたほどです。

──あはは、それほど松村さんの中でもえりぴよという存在が強く馴染んだと。

松村 はい。撮影期間中、頭の中はずっと「舞菜が世界一‼」状態でした(笑)。回を重ねるごとに“松村沙友理”が抜けていって、終盤には完全に「えりぴよという一人の人生を歩んでいる」、そんな気分になっていました。

平尾 もう、松村さんが動いているだけで嬉しかった。とにかく可愛いし、オタク三人(豊田裕大、ジャンボたかお)との並びのバランスもすごく見事で。松村さん、絶対に普段されないようなガサツな動きをされていて、すごくえりぴよを理解してくださっているんだなと感じました。


松村 ありがとうございます(ニコニコ)。

──松村さんは、えりぴよ役が決まる前から、『推し武道』の熱烈なファンだったそうで。

松村 はい。一読者・視聴者として『推し武道』を漫画もアニメも、感動して泣くほど楽しませていただいて。正直、本当に申し訳ないのですが、「えりぴよって、私に近いなあ」と勝手に思いながら読んでいたので、このオファーをいただいたときは「私以外いないでしょ‼」と思ってしまったぐらい(笑)。しかもクラインクインは2、3ヶ月先なのに、えりぴよの髪の明るさにしたりして。

平尾 てっきり役に近づけるために、染められたと思っていました(笑)。

松村 偶然、前髪も長く伸ばしていて。「これ、えりぴよは完璧に私じゃん!」と、どんどん意識していっちゃって。私は長年アイドルをやってきて、立場は違いますが、自分に近い世界を舞台にした作品に出演できるのは本当に光栄です。原作とアニメへのリスペクトを最大限に出すよう、演じていました。

──好きな作品の主役を演じたことについて、相当力がこもったはずです。


松村 はい。元々大好きな作品ですので、「えりぴよなら、こう動くよな」と原作から大きくズレないようにと常に考えて演じていたので、そこのプレッシャーがありました。私は、見る側としては、「二次元そのままが絶対!」というタイプではなく、「二次元は二次元、三次元は三次元」とすみ分けて見ているんです。ただ、実際自分が演じるとなってからはこんなにも「えりぴよに絶対に近づけたい!」という気持ちが産まれるものなんだと、発見しました。

ただ、全部撮り終えても……気持ちだけは完全にえりぴよになれた気分でしたが、技術面は追い付いていたかとなると、別の話だったなあって。自分でももっと上手くやれたんじゃないか?とか、10年後の私が演じればもっと深味が出たんじゃないかと、反省する部分、足りない部分はありました。けど、100%ではなくとも、私の想いは全部乗せられたかなと思っています。その部分は満足でした。

平尾 もう、ここまで思ってくださっていらっしゃったとは……それだけで漫画を描いてきてよかった。これだけ「好き」と言ってくださる方に演じていただけるのは、この上ない幸せ。だってこれだけ作品を愛してくださってくれる方が実際に演じてくださるって、可能性とすれば本当に微かなものですよね。本当にえりぴよが松村さんでよかった。


松村 本当ですか! 先生はどう思われているのだろう?と、少し不安だったので、本当に嬉しいです(満面の笑み)。

平尾 むしろ私こそ、これが松村さんの人生の汚点になったらどうしよう⁉と不安になっていたんです。知らぬうちに、プロフィールから消されているんじゃ……って。

松村 いやいや(笑)! 本当に大切な作品ですから。

【後編はこちら】松村沙友理、『推し武道』原作・平尾アウリに直撃質問「どこまでが取材や実体験?」

▽『劇場版 推しが武道館いってくれたら死ぬ』
5月12日(金)全国ロードショー
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