──小さい頃から芸能活動をしていたそうですね。
塩川 小3から劇団に入って、子役として舞台に出ていました。中学生のときには「アニー」のオーディションを受けて“ダフィ役”を演じさせていただきました。
──そのまま芸能活動を続ける気持ちはなかったんですか?
塩川 「アニー」の舞台に立ったときは生の反応が楽しくて、その道に進みたい気持ちもありました。ただ父の転勤があって高校生活は香港で過ごして、インターナショナルスクールに通っていました。
──だから英語が堪能なんですね。セント・フォースに入社したきっかけは何だったのでしょうか?
塩川 大学進学が決まって、ミュージカルも含めてオーディションを受けようと思って幾つかの事務所に応募したんです。そのうちの1つがセント・フォースでした。
──アナウンサーに興味はあったんですか?
塩川 あまりなかったです(笑)。知人からセント・フォースは良い事務所だと聞いて履歴書を送ったんです。所属したのと同時ぐらいに『NEWS ZERO』(日本テレビ)のお天気キャスターが決まって、あれよあれよという感じでした。
──ほぼ準備期間がないままお天気キャスターに就任したんですね。
塩川 すぐにお仕事ができると思っていなかったので、アナウンススクールに通う暇もなく、事務所のレッスンしか受けていませんでした。ただ当時の事務所の先輩・山岸舞彩さんが、『NEWS ZERO』のキャスターを務めていたので、いろいろ教えていただきました。
──お天気キャスターを経験して、今の活動で生きているのはどんなことでしょうか?
塩川 当時は毎日、気象センターに通って、気象予報士さんやスタッフさんにいろいろなことを学びました。いただいた原稿を自分なりの言葉で伝えるのもやりがいがありましたし、お天気キャスターで身についた考え方や話し方は、少なからず今に生きていると思います。
──なぜ大学卒業後もアナウンサー業を続けようと思ったのでしょう?
塩川 就職活動の時期に、卒業後も伝えるお仕事は続けたいなと思って、セント・フォースにとどまることを決めました。
──現在は『AbemaNews』に出演していますが、初めてのニュースキャスターはいかがでしたか?
塩川 1人で約15分間ニュースを読み続けるので、すぐに持久力が必要だなと気付きました。それから肺活量と腹式呼吸を意識して、インナーマッスルのトレーニングをしています。最近になってアナウンス技術はミュージカルと相通じるところがあるなと気付いたんです。ニュースは一定のテンションで原稿を読みますけど、舞台で演技するときと発声方法は同じなんですよね。
──『AbemaNews』で特に大変なことは?
塩川 ストレートニュースにエンタメニュースと幅広く取り上げているのですが、手元に原稿が来るのは本番ギリギリなので、その準備が大変ですね。短い時間で下読みをしっかりして、分かりやすく伝えられるように頭をフル回転させて本番に臨んでいます。
──緊急ニュースが入ってくると対応力も問われますよね。
塩川 まさに『AbemaNews』は速報が多くて、急に火災や地震のニュースなどが飛び込んでくることがあります。最初の頃はパニックになりながらも、何とか乗り切った記憶があります。地上波では、そういう経験をする機会がないので、すごく勉強になりますね。
──どういうときにインターネットテレビの良さを感じますか?
塩川 私の周りで1人暮らしをしている友達はテレビを持ってない子が多いんです。なのでスマホでも手軽に見られるのは大きな魅力ですよね。それにAbemaTVは24時間、生配信でニュースが流れているので、いつでも見られるのが便利です。
──どんなキャスターを目指していますか?
塩川 お天気キャスター時代は、いろんな職業の方がいるので、どんな天候でも「良い天気」「悪い天気」という表現を使わないように意識していました。それはニュースでも同じことが言えて、誰が聞いても不快感を与えないように、言い回しに問題がないかなど、想像力を働かせるようにしています。いただいた原稿を読むだけではなく、思いやりのあるキャスターになりたいですね。
▽塩川菜摘(しおかわ・なつみ)
1995年5月25日生まれ、東京都出身。早稲田大学在学時からセント・フォースに所属、2014年3月から2016年3月まで『NEWS ZERO』でお天気キャスターを務める。