【写真】小野花梨&風間俊介W主演『初恋、ざらり』3話場面カット【7点】
――テレビ東京「ドラマ24」(以下、「24」)といえば、『勇者ヨシヒコ』や『孤独のグルメ』シリーズほか、人気作品や話題作が多いドラマ枠です。
祖父江 テレビ東京深夜ドラマの看板枠で、歴史や伝統だけでなく“テレ東らしさの原点”のような作品の枠であることは間違いないと思います。担当として常に「『24』はどうあるべきか」を考えるし、結構プレッシャーがあります。
これまでも『モテキ』の大根仁監督や『勇者ヨシヒコ』シリーズの福田雄一監督など、今、大活躍しているクリエイターの方たちが、若いうちに「24」で作品を手掛けてきました。だからこそ新進気鋭の意欲ある若手のクリエイターや俳優陣に、「あの枠に携わりたい」「出演したい」と憧れを持ってもらいたいですし、すでに活躍してポジションを築いている方たちにも「深夜だけどテレ東の『24』なら、やってみたい」と思われるような存在でありたいですね。
――実際に2018年7月期『GIVER 復讐の贈与者』主演の吉沢亮さんが会見で、「24」の主演オファーをもらった時の喜びを語っていましたし、2017年1月期『バイプレイヤーズ』では大杉漣さんをはじめ豪華キャストが集うなど、ステータスを感じる枠になっていると思います。そうした「24」の企画について、特徴やコンセプトはありますか?
祖父江 企画選定は、募集で行っています。募集要項を作る際、普通は「ラブストーリーを募集します」「サスペンスを募集します」などの枠組みを設けますが、この枠ではジャンルを作らないと決めているんです。テーマやカテゴリーを絞らないことが、こだわりみたいなところがありますね。
――そうした中、「24」で『初恋、ざらり』のドラマ化が決まった理由は?
祖父江 なんとなくラブストーリーは避けられてきたのですが、ジャンルを絞っていない以上、避ける理由はない。あえて「24」でラブストーリーをやるとしたら、どんな作品かを考えた時、インターネットやSNSでバズっただけでなく、主人公の特殊な設定やさまざまな視点を内包した作品だからこそ、「この枠でやる価値がある」と感じたのが選んだ理由です。
――人気漫画が原作ですが、作品をご存知ない方もいると思います。改めて、今回のドラマ『初恋、ざらり』とは?
祖父江 小野花梨さん演じる軽度知的障害と自閉症がある女性・上戸有紗が、新しいアルバイト先で風間俊介さんが演じる先輩・岡村龍二と出会い、恋をするラブストーリーです。ポイントになるのは有紗の知的障害が軽度で、一見しただけじゃわからないこと。日常の生活は送れるけれど、家族であったり、恋人になったり、一緒に働いたり、関係が深くなるにつれ、「なんだかちょっと変わっているな」と障害に気づく点にあります。もう一つ大きな要素は、有紗は障害があることから自己肯定感が低く、“普通であること”に強い憧れを持っている部分です。
――障害を持つ女性の設定ではありますが、自己肯定感が低く、“普通”にこだわってしまうのは、一般的にも持っている人が多い感覚かと思います。
祖父江 最初は「自己肯定感の低い女の子の恋愛」という面が、多くの人の共感を集めていると感じました。でも実際にドラマとして取り組み始めた時、やはりどうしても“障害がある方ならではの特殊性”みたいなことと向き合わざるを得ない。「単純なラブストーリーじゃないぞ」ということを作りながらまざまざと感じています。
――ドラマ化が発表されてからの反響では、主人公2人のラブストーリーだけじゃなく、「障害を持つ人の家族や周囲の人たちの視点」への期待感も見受けられます。
祖父江 いろんな方が、それぞれの視点で共感したり、さまざまなことを感じ取ったりできる作品だと思います。一方でセンシティブなテーマに、批判的なご意見があるかもしれません。
障害者の恋愛や性について、批判的なことを言いたいわけでは絶対にない。健常者と全く同じだと、訴えたいわけでもない。ただ、“確かにそこに存在する障害者の恋愛を描く”ということ。それ以上でも、それ以下でもない気がしているのが、今、作品と向き合う中で実感していることですね。
――有紗が強い憧れを持つ“普通”。台本を拝見して、有紗以外の登場人物たちのセリフにも“普通”という単語が多く、それぞれが抱える“普通”に対する考えや感じ方の違いも印象的で、「“普通”ってなんだろう?」と、改めて考えさせられました。
祖父江 “普通であること”が良いのか悪いのか、人によって全然違いますよね。昨今のような自己顕示欲や承認欲求を満たす視点で考えると、「普通でありたくない」人もたくさんいます。逆に、有紗のような障害や家庭環境など、自分の力ではどうしようもない困難を抱えていると、「普通でありたい」と心から願う…。“普通”の捉え方は人それぞれで、本当に「“普通”ってなんだろう?」と思うし、難しい言葉です。
一般的に言われる、“普通の幸せ”みたいなもの。
――『初恋、ざらり』だけでなく、これまで祖父江さんが携わった『来世ではちゃんとします』シリーズ、『だから私はメイクする』『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』なども、登場人物の女性たちが“普通”を意識し、自己肯定感を求めるところがあります。作り手として、そうしたテーマを意識していますか?
祖父江 意識しています。今、作品タイトルを並べてもらって、はっきりそう思いました(笑)。私自身もそうですが“今の自分が充実している”としても、“普通の幸せ”に距離を感じると、自己肯定感が低くなってしまう人は多い…。そんな女性が「私はこれでいいんだ。幸せなんだ」って思えたり、幸せになれたりするドラマというのが、テーマの一つなんだと思いますね。
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