ひと昔前のミュージックビデオを見返すと、思いも寄らない有名人が出演していることが多々ある。たとえばアンジェラ・アキの『手紙~拝啓 十五の君へ~』には杏と足立梨花、コブクロの『赤い糸』には新垣結衣など、例を挙げたらキリがないだろう。
今回はその中でも特に鮮烈な印象を残した、3人の女優たちの足跡に注目したい。

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まずは今をときめく若手女優のひとり、浜辺美波だ。実は今からおよそ6年前、彼女がまだ高校生だった頃に、女性シンガー・Aimerが歌う『花の唄』のMVに出演した経験がある。

同楽曲は、劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第1章の主題歌だった。続く第2章、第3章の楽曲もAimerが歌い、いずれもMVには浜辺が起用されている。

MVの監督を務めたのは、映画『ソラニン』や『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』などで知られる三木孝浩氏。
『花の唄』について彼は「とてもエモーショナルで、劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]I.presage flower』の世界とすごくシンクロした歌」と語っており、MVに浜辺を起用した理由についても「その透明感とどこか憂いある表情が今回描きたいテーマにピッタリだったのでオファーしました」とコメントしていた。

そして浜辺は、監督の期待に違わない功績を残した。少女らしい美しさや儚さ、時折見せる力強い眼差しやアンニュイな表情が、MVの幻想的な世界観に上手く溶け込んでおり、まるで1本の短編映画を観ているような満足感を得られるのだ。

MV内に浜辺の台詞は1つも入っていないものの、その表情や仕草だけで観る者の心はぐっと揺さぶられる。当時はまだ17歳だったが、この頃から天性の演技力は健在だったのだろう。

魅惑の演技は多くの人の心をつかんだようで、7月11日時点で同楽曲のMV再生回数は2300万回をゆうに超えている。


女優・戸田恵梨香もまた、MVへの出演経験があるひとりだ。彼女が起用されたのは、2008年にリリースされた中島美嘉の楽曲『ORION』のMV。同楽曲は彼女の出演ドラマ『流星の絆』(TBS系)の挿入歌として使われていた1曲である。

歌詞が≪人を好きになれることに初めて気づいた≫≪伝えたい言葉を繰り返すのにまた声にならない≫と戸田演じる作中キャラクター“有明静奈”の心情を綴ったものになっていたため、制作サイドは“映像化するなら戸田さんに出演をお願いするしかない!”と踏んでオファーしたそうだ。

そんな制作陣の期待に応えるかのように、MVの戸田は静奈の繊細な気持ちを見事に表している。特にMV冒頭で絶妙な表情を浮かべながら流す涙は、演技力の高さをうかがえる。


ちなみにMV中盤、耳につけていたピアスを外すシーンがあるのだが、実はこれはドラマの中で静奈がつけていたピアスと同じもの。わざわざドラマスタッフに頼んで借りてきたそうで、ファンを喜ばせるための演出が際立っている。

戸田といえば、2005年10月期のドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)に出演していたイメージも強いが、同じく同ドラマでヒロイン・小谷信子を務めた元女優の堀北真希もMVへの出演経験者だ。

中でも有名なのは、15歳のときに出演したレミオロメンの『3月9日』だろう。しかし出演作はそれだけではなく、ヴィジュアル系ロックバンド・Janne Da Arcの『振り向けば…』やロックバンド・GOING UNDER GROUNDの『初恋』など、多数のMVに起用されていた。


とくに面白い逸話があるのが、BUMP OF CHICKEN『涙のふるさと』のMVだ。元々この曲は堀北が出演するロッテのチョコレート「airs(エアーズ)』のCMソングだった。そこで監督を務めていたのが、有名映像クリエイターの山崎貴氏。そしてCMをきっかけとして山崎氏はMVの制作に携わり、後には『ALWAYS 続・三丁目の夕日』の主題歌にBUMP OF CHICKEN が抜擢されることになった。ある意味、堀北がつないだ縁と言っても過言ではない。

言ってしまえばMVは、テレビや映画と同じように視聴者の記憶に残りやすいメディアだ。
若手女優からしてみれば、ある種の登竜門のようなものだろう。今後も人気ミュージシャンのMVが発掘する、新時代の女優たちに期待したい。

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