SKE48のメンバーとしてステージに立ちながら、レスラーとしてリングに立つ“二刀流” 荒井優希。8月12日の後楽園ホール大会で、東京女子プロレスのエース・山下実優と準決勝を闘う。
今勢いに乗る彼女のこの夏の成長について、元週刊プロレス記者の小島和宏が、レポートする。

【写真】SKE48荒井優希がベスト4進出(7月29日後楽園ホール)

今年のゴールデンウィークは連日、荒井優希を見てきた。

5月4日の夜はLINE CUBE SHIBUYAにてSKE48のチームコンサート。このところプロレスラーとしての活躍ばかり見てきたので、アイドル・荒井優希のパフォーマンスは新鮮に映った。特にセンターを務める楽曲でのカッコよさは特筆モノで、変な話、プロレスのリングよりもカッコよさを感じてしまった。

よくよく考えたら、プロレスでは相手に蹴飛ばされたり、ぶん投げられたりするわけで、四六時中、カッコよくいられるわけではない。
誰にも襲われる心配のないアイドルのステージのほうがキリッとした魅力を全開にできるのかもしれない。プロレスラー・荒井優希はカッコよさのポテンシャルをまだまだ秘めているようだ。

翌5日はお昼から東京女子プロレスの後楽園ホール大会。前夜のコンサートがかなりガッツリとしたセットリストだったことを考えると、寝て、起きて、すぐ試合というのは、なかなかハードなスケジュールだったが、二刀流をはじめて、ちょうど2周年を迎えた荒井優希は、当たり前のようにリングに立っていた。

これには対戦相手も『アイドルとプロレスを両方やることはできるけど、両方に全力を注ぎ込める荒井優希はすごい!』と舌を巻いた。ダブルヘッダーで完封勝利を飾った直後にホームランをかっ飛ばした大谷翔平に通ずる部分すら感じてしまう。

 
面白いな、と思ったのは、リングで見せるなにげない仕草が、アイドルとしてのステージよりもキュートだったりすること。

プロレスラーよりカッコいい、アイドル。

アイドルよりキュートな、プロレスラー。

2日連続で見たからこそ、気づいたことではあるが、2年間、続けてきたことで、間違いなく相乗効果がそれぞれのステージで発揮されはじめている。アイドルとしても、プロレスラーとしても追いかけているファンの方は、最高に推しがいがあるだろう。

そして、この夏、新たな魅力がプロレスラー・荒井優希に萌芽しはじめた。


7.8大田区体育館で荒井優希は沙希様とタッグで初対決。沙希様はかつてのタッグパートナーである赤井沙希……に酷似したレスラー。赤井沙希が11月に引退することが決まっているため、荒井優希と沙希様の対決もこれが最初で最後になるかも、と注目されていた。

しかし、なかなかふたりの絡みは実現しない。パートナーの上原わかなが完全に捕まってしまい、試合開始から5分以上に渡ってローンバトルを強いられてしまったのだ。

この試合の裏テーマは荒井優希が後輩の選手と組んで、いかに引っ張っていけるのか、だった。
まだまだルーキーの上原わかなをうまくフォローし、勝利へと導くことができるのか? プロレスラーとしてのキャリアが3年目に突入し、後輩も増えてきたタイミングだから、このミッションは重要な鍵になってくる。

ようやく上原わかなからタッチを受けて、リングインすると館内の空気がガラッと変わった。待ってました! という歓声だけでなく、これでひと安心、という安堵に似たムードまで漂ったのだ。

いつのまにか荒井優希は『頼れるプロレスラー』『頼れる先輩』になっていた!

試合には破れたが、さらなる飛躍を予見させるには十分すぎる闘い。事実、7月15日に開幕した真夏の最強決定トーナメント『東京プリンセスカップ』では安定感の高い好勝負で連戦連勝。過去にトーナメントで破れた選手にリベンジを果たすなど、これまでは『点』でしかなかったものが『線』としてつながってきた。
プロレスラーとして、こうやってドラマを紡いでいけるようになったことは非常に大きい。ブロレスラー・荒井優希の物語は3年目のここからが、より面白くなるはずだ。

トーナメントでは堂々、ベスト4に進出。8月12日の後楽園ホール大会では、山下実優と準決勝を闘うこととなった。

山下は東京女子プロレスの旗揚げメンバーであり、エースとして10年間、団体を牽引してきた。最近では海外での活躍も顕著で、こうやってシングルマッチで闘える機会もなかなかない。


荒井優希にとって避けては通れない存在ではあるが、準決勝で当たるにはあまりにも高くて大きすぎる壁だ。裏を返せば、ここを突破すれば悲願の初優勝が一気に現実味を帯びてくる。プロレスとアイドルのハイブリッド種は、3年目の夏に大きく花開くことができるのか? 

目を離せないクライマックスがやってくる。

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