2023年に25周年を迎え、盛り上がりを見せているハロー!プロジェクト。実に2000曲以上ともいわれる膨大な音楽を創作し続けてきたが、今夏にかつての楽曲を大量にYouTubeで公開を始めた。
モーニング娘。を筆頭にトップアイドルたちの楽曲だけでなく、ニッチでも愛されて受け継がれてきたナンバーが気軽に視聴できるようになった。それら隠れた良曲をピックアップしてみたい。

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アップフロントグループの情報を紹介するDC FACTORYのX(ツイッター)アカウントから、8月7日に突然、過去の楽曲のMV映像をYouTubeで公開していくことが伝えられた。7回に分けて公開されていった映像はまさしく“お宝づくし”で、当時を知るファンには懐かしく、若いファンにとってはオリジナルの楽曲のクオリティを堪能できるまたとないチャンスに。
90年代末から2000年代前半にかけてのハロプロ全盛期の曲が、ネット上で手軽に振り返られる時がやってきた。
 
この、ハロプロ初期を楽しむのに欠かせないアーティストといえばまず『太陽とシスコムーン』だろう。実はモーニング娘。と同じく『ASAYAN』内でのオーディションで選ばれたユニットで、メンバーは信田美帆・稲葉貴子・小湊美和・RuRuの4人。

元体操選手でソウル五輪出場歴もある信田・元大阪パフォーマンスドールの稲葉・民謡小湊流家元の家系出身の小湊・中国出身のRuRuというユニークな経歴揃いながら、声量豊かな歌唱力でファンク系の楽曲を得意とした。代表曲といえば『ガタメキラ』(1999)で、冒頭から派手なシャウトで歌唱力を見せつけ、ハロプロ独特の16ビートのリズムを取るのも難しいナンバーだが、ライブで現役メンバーがカバーする度に盛り上がる曲でもある。


5thシングルの『Magic of Love』も幸福感あふれるハロプロの愛唱歌で、特にJuice=Juiceが1stアルバムでカバーして以降、Juice=Juiceのライブ定番曲にも定着。落ちサビのフェイクを高木紗友希や段原瑠々といった実力派メンバーが歌い継いできており、現役メンバーにとってこのパートを任されることはいわば光栄だ。

R&B風のデビューシングル『月と太陽』や、ジャズ風の『Everyday Everywhere』などをリリースしつつ、2000年3月にはT&Cボンバーに改名し10月に解散。活動期間は2年足らずながらハロプロ史に不可欠なグループであり、9月10日の25周年記念コンサートにも稲葉・信田・小湊が出演して年齢を感じさせないパフォーマンスで盛り上げた。

モーニング娘。が国民的グループに成長した2000年になると、00年代前半にブームになる、グループの枠を越えたシャッフルユニットが作られ始める。
そのはしりが黄色5・青色7・あか組4の3ユニット。ユニットの人数と色を組みあわせただけのシンプルな命名だが、モーニング娘。・T&Cボンバー・ココナッツ娘。・平家みちよがこの混合ユニットに参加。黄色5のファンキーな『黄色いお空でBOOM BOOM BOOM』、青色7の『青いスポーツカーの男』がロック調、あか組4の『赤い日記帳』がバラードと、サウンドの特徴もくっきり分かれている。

MVを見てみると、当時のモーニング娘。
メンバーの立ち位置も興味深い。青色7の『青いスポーツカーの男』では市井紗耶香がセンターで矢口真里飯田圭織がフロントに立ち、『黄色いお空でBOOM BOOM BOOM』には安倍なつみ保田圭が参加して、特に保田の明るい空気感が楽曲を引き立てる。『赤い日記帳』では後藤真希がアイドル然とした赤いミニスカートの衣装で、圧倒的なセンター感を醸し出している。このMVでは中澤裕子が涙を浮かべるシーンがあるが、これには中澤が楽曲に共感するあまり本番で涙してしまい、そのまま採用されたというエピソードがあるそうだ。

市井・保田・後藤の3人は当時『プッチモニ』としても活動していたが、テレビ出演時にしばしば着ていたパーカーの配色(市井:青、保田:黄、後藤:赤)とユニット配属が一致しているのも面白い。この3組の後にも三人祭・7人祭・10人祭といったお祭り的なユニットが花開くが、その先駆けになった活動でもある。


モーニング娘。メンバーによるユニットの「タンポポ」といえば、『乙女 パスタに感動』『恋をしちゃいました!』前後のガールズポップ風のかわいらしいイメージが強いが、結成当初のいわゆる第1期時代はクールで大人びたカラーのユニットだった。1stシングルの『ラストキッス』(1998)から石黒彩・飯田圭織・矢口真里の3人によるハーモニーが哀愁を醸し出していて、とりわけ矢口は後年にミニモニ。やバラエティで見せる親しみやすさとは違うクールな顔を見せている。

1期時代後半の『聖なる鐘がひびく夜』(1999)の時期から転換が図られていたが、石黒が卒業して石川梨華加護亜依が加わっての『乙女 パスタに感動』(2000)でキュートでお洒落なセンスを備えた都会的なユニットカラーになった。お姉さんポジションの飯田と矢口、正統派アイドルの石川に妹キャラの加護というメンバーも絶妙で、2020年代に見ても洒落たデザインのMV衣装にもつい目をもみはってしまう。


モーニング娘。が「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」の最終選考の落選者を集めて結成されたことは語り草となっているが、初代リーダーの中澤裕子もやはりソロでの歌手デビューを志して応募していた。その中澤の夢がかなったともいえるのが、1998年よりリリースされた彼女のソロ曲たち。

ところが初ソロ曲の『カラスの女房』(1998)は同じアップフロントプロモーション所属の堀内孝雄が作曲した演歌。その後のシングル2曲も演歌が続いたが、4thシングル『上海の風』からはつんく♂が作曲しポップスも歌った。演歌的なしっとりとした歌唱から、伸びやかで明るいポップスまで音域は広く、モーニング娘。での「おばさんキャラ」とは違う中澤の表現力を見ることができる。25周年コンサートでの彼女は『悔し涙 ぽろり』(2001)をソロで歌い上げつつ、ステージ上に火花が噴き上がる演出で客席を驚かせた。

また8月18日にメロン記念日の楽曲MVが一挙に公開された時、驚きを呼んだのが『お願い魅惑のターゲット』(2006)のMVだ。柴田あゆみ村田めぐみ斉藤瞳・大谷雅恵の4人組のガールズユニットのはずなのにメンバーが一切登場せず、4人の黒人男性がパフォーマンスをしているだけという珍映像が映し出されるMVだったのだ。なぜこんなMVになったのか、メンバーや事務所スタッフからも当時の経緯は一切語られたことはないが、こんな遊び心が時々発揮されるのもハロプロならでは。

メロン記念日自体は2000年からの10 年という長期間、メンバーの入れ換えなしで続いた稀有なユニットだが、初期のガールズポップ路線から徐々ラテン的な色気も醸し出すようになり、セクシーな衣装も着こなしていく。MVでユニットの変遷をたどっていくと、00年代初頭の『告白記念日』『さぁ、恋人になろう』などのハッピーオーラあふれる曲にはじまり、情感豊かなバラードの『香水』やセクシーなR&B風の『肉体は正直なEROS』、ハロプロらしいディスコチューンの『アンフォゲッタブル』など、実に幅広いジャンルを開拓してきた4人だったことがわかる。一時期村田がMVで眼鏡をかけている時期があったのもアクセントを添えている。

特筆すべき曲のひとつに4thシングルの『This is 運命』(2001)がある。ベートーヴェンの「運命」をオマージュしたかのようなイントロに始まり、エレキギターによるロック調の本メロが続く。こういったクラシック曲へのオマージュ的な技巧はアンジュルムやBEYOOOOONDSなどでも見られるテクニックで、25周年コンサートではBEYOOOOONDSがこの曲をカバーした。ハロプロの現役グループにも受け継がれる音楽性を、メロン記念日も持っていたようだ。

これらの楽曲はオリジナルのメンバーがハロプロを卒業してからも、現役メンバーによってライブや個人のイベントでカバーされてきた。ハロプロ黄金期の2000年前後にはまだまだ活気があったテレビの音楽番組で幾度も流れ、お茶の間で親しまれていた音楽が、YouTubeへと媒体を移しながらも映像と一緒に楽しめる時代がまたやってきた。

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