2023年10月10日火曜よる11時から、新ドラマ『時をかけるな、恋人たち』(フジテレビ系)の放送がスタートする。主演・吉岡里帆という要素だけでなく、さまざまな点から同作には “覇権”の匂いが漂っている気がしてならない。


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まずヒットの予感を感じさせるのは、「タイムトラベル」を題材としたユニークな設定だ。主人公の常盤廻(吉岡)は、広告代理店で働くアートディレクター。仕事は優秀で後輩からも慕われているが、恋愛になるとどうしても一線を超えられず、人知れずヤケ酒で涙を流す毎日を送っていた。

そんなある日、未来からやってきたタイムパトロール隊員・井浦翔(永山瑛太)と出会い、運命が一変。成り行きから、歴史を変える恐れがある「違法トラベル」を取り締まることになる。しかしタイムトラベラーたちは、さまざまな恋の事情を抱えており、廻は心を動かされていく……。


「タイムパトロール」や「タイムトラベラー」という用語からもわかる通り、同作はただのラブコメ作品ではない。脚本を手がける「ヨーロッパ企画」の代表・上田誠氏は、これまでにも『四畳半タイムマシンブルース』や『リバー、流れないでよ』など、タイムトラベルを題材とした名作を数々生み出してきた。そして今作では、違法トラベルと恋愛を掛け合わせた、ややぶっ飛んだSFラブコメ作品に挑戦するというわけだ。

ところでこの振り切った設定から、2023年1月期の大ヒットドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)と同じ“ヒットの匂い”を感じないだろうか。同作もタイムリープを題材にした作品で、来世で人間に生まれ変わるため、何度も人生をやり直しするという内容だった。

放送前はそれほど話題になっていなかったが、斬新な設定でありながら伏線回収が見事な構成によって、視聴率は右肩上がり。
数々の新作ドラマが放送されるなか、頭一つ飛び抜けておもしろいと称賛され、2023年1~3月期の「TVer(ティーバー)番組再生数ランキング」では、3,072万再生を記録してトップを飾っていた。

実際に放送が始まらなければわからないものの、上田氏が脚本を務める『時をかけるな、恋人たち』もまた、思いもよらない奇天烈な展開と、緻密に計算された伏線回収が待ち受けているに違いない。となれば『ブラッシュアップライフ』と同様、“今期の覇権”になる可能性が十分考えられるだろう。

また覇権を予期させる要因はそれだけではない。カギを握るのは、主演女優・吉岡里帆の存在だ。

実は吉岡はその清純なイメージとは裏腹に、ひと癖もふた癖もある役柄を演じることが多い。
最近でいえば、2023年8月25日より公開された映画『Gメン』の雨宮瞳役がいい例だろう。

同作の舞台は「私立武華男子高校」の問題児ばかりが集められた「G組」で、瞳は担任の教師として配属される。一見すると清楚な美人教師であり、自己紹介でも不良生徒たちを前にダブルピースを披露するなど、にこやかな振る舞いを見せていた。

ところが、あるシーンで漫画を持ち込んでいた生徒を注意した際に「何すんだババア」と貶されるや否や、性格が豹変。漫画を取り上げた上で「誰がババアだよ、この野郎」と生徒を引っ叩き、「どこの国民的美少女捕まえてババアつってんだよ、アァン?」とドスのきいた声で凄んでいた。

ちなみにこのワンシーンはYouTubeに投稿された「映画『Gメン』キャラクターPV 第7弾【雨宮 瞳編】」でも紹介されているが、この予告はほんの序章にすぎない。
映画鑑賞者からは「吉岡里帆の女優魂を見た」という称賛の声も上がっており、彼女の振り切った演技力に思わず魅了された人も少なくないはずだ。

また2017年に放送されたドラマ『カルテット』(TBS系)で演じた来杉有朱(きすぎ ありす)も、実に印象的な役柄だった。常に笑顔を絶やさない清楚な女性でありながら、その本性は喜々として人の心を弄ぶ魔性の女であり、物語の随所で暗躍していた。

あまりの二面性ぶりから視聴者の注目を集め、最終話で外国人男性をはべらせながら「人生、チョロかった!」と高笑いするシーンは、多くの視聴者が度肝を抜かれたことだろう。

さらに2018年に公開された映画『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』では、声が小さすぎるストリートミュージシャン・明日葉ふうかを熱演。こちらは終始おとなしめの性格だったが、阿部サダヲ扮する世界的ロックシンガー・シンに引っ張られる形でギャグ調の絶叫ツッコミを披露している。


このように吉岡とぶっ飛んだ作品の相性は意外にも悪くない。今回彼女が主演を務める『時をかけるな、恋人たち』も単純なラブコメではないため、数多の作品で培った“振り切った”演技にも期待が持てるだろう。現に第1話の予告動画では、言葉にならない悲痛な叫び声をあげる姿や、「恋に落ちたい…」と呟いた瞬間、地底に落ちていくコミカルな姿などが描かれており、否応なしに期待が高まってしまう。

もしかしたら『時をかけるな、恋人たち』は今期の覇権にして、吉岡の真骨頂を発揮する作品となり得るかもしれない。兎にも角にも10月10日の放送を心待ちにしていよう。

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