ドラマの注目作として放送前から話題を集めていた『パリピ孔明』(フジテレビ系)。人気同名マンガ(四葉夕ト原作、小川亮作画)が原作かつ、2022年に放送されたアニメ『パリピ孔明』が人気を博したことも注目度を高めた要因ではある。
ただ、いざ放送が始まると孔明役の向井理の演技が話題を呼び、プロの歌手を目指す月見英子役の上白石萌歌の歌声に熱狂させられている人は多い。

ドラマそれ自体の面白さで日に日にファンを増やしている本作で企画を務める髙木由佳さん、プロデュースを務める八尾香澄さんに、原作と変更したシーンやライブシーン撮影の苦労など話を聞いた。

【写真】本格的なライブシーンが話題、ドラマ『パリピ孔明』スチール写真【21点】

──ドラマ『パリピ孔明』を制作するうえで、同じ映像作品としてアニメ『パリピ孔明』を意識した部分はありますか?

八尾さん アニメは一視聴者として面白く見ていました。が、アニメで出来ることと実写で出来ることは違うと思うので、引っ張られることは実はあまりなくて、あくまで原作に敬意を払いつつ、原作の核を大事に面白いドラマをお届けしたいという思いで制作しています。

髙木さん ドラマ放送が発表された時、SNSには「アニメ化からの実写化か…」というあまり前向きではない声が結構投稿されていました。「アニメがすごく浸透して、愛されているんだな」と感じましたが、八尾さんが話した通り、私もアニメはあまり意識していません。
「原作を忠実に表現しよう」と思っています。

──原作に対するリスペクトがひしひしと伝わってきます。

髙木さん ただ、アニメも原作から大きく逸れることもなく、オリジナル要素を足すこともなく、原作を大切にしていた印象です。アニメ制作に携わった人も、私達と同じで原作を強くリスペクトしていると思います。

──ただドラマでは原作と異なる部分が見られました。変更した意図を教えてください。


八尾さん 例えば、原作1話では道端で酔いつぶれている孔明を、英子が家に連れて帰るのですが、このシーンを生身の人間で表現すると妙に生々しさが出てしまう。「20歳そこそこの女の子がいきなり見知らぬ男性を家に連れて帰る」のは実写で表現するのは難しいという意見が出て、ドラマではBBラウンジの休憩室に連れていく流れにしました。

髙木さん 原作やアニメでは受け入れられる表現でも、生身の人間がやるとなると変更を余儀なくされる部分は珍しくありません。その辺りは原作者の先生方にもしっかりコミュニケーションをとり、変更を快く受け入れてもらっています。

──このシーン以外で変更した印象的なシーンはありますか?

八尾さん 4話で孔明がKABE太人(宮世琉弥)とラップバトルするシーンも少し変えています。原作では両者がラップしている最中、白熱する二人を三国時代の武将に例えて、姜維と趙雲のイラストが出てくる描写があります。
漫画ならではの表現で面白いと思ったのですが、ドラマでやる場合にはCGを使うなど方法はありますが、色々ハードルはあります。無理に漫画と同じ表現にせずとも、実写として白熱する孔明&KABEのお芝居で見せ切ろうと、そこは無しにしました。

──“あえてアナログで表現する”というのも魅力的に映りますよね。

八尾さん また、このシーンでは孔明が「兵・法!(HEY HO!)」と観客を煽るところも変更しています。原作では孔明の熱いラップを象徴するイメージとして“文官達が何人もいるように見える”という錯覚を観客が起こすのですが、演出を務める渋江修平さんのアイデアで、“錯覚ではなく文官役のエキストラを孔明が雇った”という設定にして、物理的に孔明の背後に文官が出現する演出にしました。

──映像的に違和感なく、むしろ「孔明ならやりかねない」と思えて面白いです。


八尾さん CGで居ないものを居るように見せることも技術的にはもちろん可能ですが、敢えてアナログな孔明らしい方法を取るところが好きです。休憩のタイミングを見計らって、文官達がステージ上から退場するように孔明が指示しています。その際に孔明は文官達の姿が見えないように袖を広げて隠しています。渋江さんらしい細かい演出ですが、見返してもらえると楽しんでもらえるのではないでしょうか。

──特に音楽に対するこだわりが強いドラマになっていますね。

八尾さん キャスティングからこだわっています。
英子役の上白石さんをはじめ、ミア西表役の菅原小春さん、マリア役のアヴちゃんなど、本物だから出せる上質感を大事にしました。

──演出面ではどういったこだわりが?

八尾さん 明確に音楽シーンで意識したことは“歌詞を入れる”ということです。歌詞を入れることになった経緯として、ラップバトルがあるため「歌詞がないと視聴者は何を言っているかわからないよね」というところから始まっています。ただ、ラップバトルだけ歌詞を出すと、それはそれで良くないと思い、一貫して歌詞を入れる方向にしました。

──ラップバトルは歌詞がないと困りますしね。

八尾さん ラップだけじゃなく、歌詞を入れることはこのドラマを一番効果的に伝えられる手段だと思いました。
初めて聞く曲の場合、あまり歌詞を全て聞き取るのは難しいと思います。歌詞を表示することで、例えば英子が『DREAMER』が歌う時に歌詞に込められた思いが伝わりやすくなります。『DREAMER』以外もクオリティにかなりこだわり抜いた楽曲ばかりなので、歌詞の良さを伝えるうえで良い選択だったと思います。

──楽曲のクオリティもそうですが、熱気十分なライブシーンに引き込まれる人も多いです。ライブシーンで意識していることは?

髙木さん パフォーマンスする際の空間・環境は重要視しています。BBラウンジはフジテレビのスタジオ内でセットを組んでいるのですが、通常だとスタジオの照明を使用するのですが、クラブ照明をやっている方を呼び、リアルなクラブの空間を再現しました。

──2話の『アートフェス(野外フェス)』でも本物のフェスさながらの空間でした。

髙木さん 竹芝近くの場所を4日間借りて撮影しました。やはり熱気を作るのは観客の存在ですが、ありがたいことに多くのエキストラさんに参加してもらいました。ただ、エキストラ募集をかけた時は、まだまだ情報解禁できないことが多く、大々的に「『パリピ孔明』の撮影です!」とは言えなかった。そのため、エキストラさんを集めるのには苦労しました。

──エキストラ集め以外で苦労したことはありますか?

八尾さん このシーンは真夏に撮影したので、とにかくエキストラさんの体調管理に気を配りながら撮影しました。それでも、エキストラさんは終始盛り上がってくれて本当に嬉しかったです。

──6話のゲリラライブも野外でしたが、2話同様の苦労が?

八尾さん 原作では渋谷の109前で行われるのですが、ゲリラライブのシーンはステージトラックを2台入れなければいけません。さすがにそこではできないため、いろいろ探した結果神戸で撮影することになりましたが、エキストラさん集めは大変でした。

──やはり暑い日の撮影に?

髙木さん そうです。AZALEAの古参ファン役で出演した平成ノブシコブシの徳井健太さんの腕は日焼けで真っ赤になってました。

──ちなみにAZALEAが売れるごとにメンバーの使用機材がランクアップしていました。

八尾さん 例えばギターは高校時代にコピーバンドを組んでいた時、プロを目指してインディーズバンドとして活動していた時、AZALEAになった時の3段階で機材を変えたり工夫しています。

──最後に最終回に向かってラストスパート中の『パリピ孔明』ですが、どのような楽しんでほしいですか?

八尾さん いろいろな登場人物を深堀できることが連続ドラマの良さの一つだと思っています。今後、BBラウンジーの小林(森山未來)や前園ケイジ(関口メンディー)など、今まで断片的に描かれていた登場人物の素顔に注目してもらえると嬉しいです。

髙木さん 孔明がいろいろ動いているように見えますが、実は英子の魅力に周囲の人達が巻き込まれていくドラマです。そんな英子の明るさやひたむきさから、視聴者のみなさんに元気や何かに挑戦する勇気を与えられればと思っています。

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▼ドラマ『パリピ孔明』(フジテレビ)
毎週水曜よる10時放送