現在放送中の『セクシー田中さん』(日本テレビ)は木南晴夏主演、地味なOLでありながら、ベリーダンサーとしても活躍する田中京子を主人公にしたラブコメディだ。

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劇中での木南のベリーダンスも見どころだが、物語で注目すべきは、主人公・田中の同僚で、田中の生き方に強い憧れを持っている倉橋朱里(生見愛瑠)とのシスターフッドが描かれている点だろう。


そもそも、シスターフッドという言葉をご存知だろうか。もともとは1960~70年代にかけて世界各地で起きた女性解放運動で使われた言葉。男性優位な社会に対して、女性同士が立ち上がり、連帯を示す言葉である。近年、日本でもシスターフッドをテーマにした作品が多く制作されるようになった。日本では、実際の姉妹でなくとも、強いつながりを持ち、友達を越えた人間関係を描く作品をシスターフッドと表現する事も多い。

『セクシー田中さん』においても、主人公・田中と倉橋が深い関わりを持ち、仕事やベリーダンスを通してお互いに支え合う様子が描かれている。田中は、友達も恋人もできたことのないアラフォーOLでありながら、ベリーダンサーSali(サリ)として舞台に立つ一面をもつ。OLとしての実力も申し分なく、税理士の資格を持ち、TOEIC900点越え、さらには一人暮らしの家での家事も完璧にこなす才色兼備。一方倉橋は、派遣OLとして田中と同じ会社で働く愛され女子で、田中とは対極にいるような存在だ。

しかし二人にはそれぞれに悩みがあった。田中は胸を張って生きたい、変わりたいという切実な思いからベリーダンスを始めた経緯がある。また一見愛されキャラの倉橋も「若くてかわいい」ことのみが自分の価値だと考えており、長くは続かない自分の魅力に危機感を持ち、普通の幸せを探しているところだ。


倉橋は、偶然観たベリーダンスのショーで、そのダンサーが同僚の田中であることに気づき、田中のファンになる。田中への憧れが募るあまり、自身もベリーダンス教室に通い始めるのだ。ドラマの初期では、田中を追いかけるようにして頻繁にベリーダンスを観に行ったり、レッスンに通ったりと、憧れが募るあまり倉橋が田中を追いかける構図があった。

しかし一方通行な気持ちだけでなく、お互いを思いやり、良い影響を与え合える存在こそシスターフッドといえる。

物語が進み、その変化が見られるようになり、より踏み込んだ人間関係が描かれるようになってきたのである。恋愛経験のない田中が、男性との人間関係を倉橋に相談するように。また、倉橋も若くてかわいらしく、いつも愛想笑いをしている状態から、田中の前では自分の弱みを見せるようになっていた。

2023年7月クールでも同じようにシスターフッドをメインテーマに掲げたドラマがあった。深田恭子福原遥が主演を務めたドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS)だ。仲川有栖(福原)が、大学生ながら1児の母親になり、それを全面的に支援する成瀬塔子(深田)という構図が大きな軸としてあった。しかしそれだけではなかった。40歳に差し掛かり、結婚や子どもの存在を考えるなかで恋愛に前向きになれない塔子の背中を押したのは有栖だったのだ。


シスターフッドは、やはり一方向の気持ちでは成り立たず、お互いに支え合い、良い影響を与え合える存在こその連帯意識だ。年齢が違う相手、こと他人においては、上司と部下、先生と生徒のような関係性になってしまい、配慮に欠けた言動を受け苦い思いをした経験が誰しもあるだろう。

しかしドラマを通して、年齢や生まれ育った環境、今自分が置かれている状況が違っていても、思いやりをもって支え合える存在がいることがわかる。これは視聴する多くの人にとっても吉報であり、学ぶべきことも多いだろう。友達とも、実際の姉妹とも違うが、自分の労力や時間を捧げても良いと思える相手がいることはかけがえのないことだと知らせてくれる。

『セクシー田中さん』では、ドラマ最終回まで仕事や恋、将来に悩みながらも前に進もうとする田中と倉橋の深い人間関係が見られるであろう。人との関わり方や距離感に疑問を持つ人こそ観るべき作品だ。

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