ここ最近、TVドラマ業界が新たな試みを始めているように見える。漫画などの原作付き作品をドラマ化する際、事前に映画化についても発表し、ドラマと映画を立て続けに公開する……という流れを作りつつあるのだ。


【関連写真】『からかい上手の高木さん』でTBSドラマ初主演を務める月島琉衣&黒川想矢【5点】

わかりやすい例が、今年10月期のドラマ『マイホームヒーロー』(TBS系)だろう。同作は『ヤングマガジン』で連載中の同名コミックスを実写化したもので、連続ドラマと映画の同時製作という異例の形をとっている。

もちろん昔から『踊る大捜査線』(フジテレビ系)や『TRICK』(テレビ朝日系)シリーズのように、ドラマから劇場版が作られ、また映画化がきっかけで知名度が上がった作品はたくさん存在した。ただいずれもドラマ版が放送されていた時から映画化が告知されていたわけではなく、ドラマが予想以上に人気を博したので、後から“ファンサービス”としての劇場版を作っていたという印象だ。

5週連続1位に輝いた大ヒット映画『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)に関してもそうだ。2022年1月クールの月9枠で放送されたTVドラマ版は、第1話から世帯視聴率13.6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)をマークし、2話以降も10%超えの高視聴率をキープ。最終回も有終の美を飾ったが、映画化が発表されたのはそれから半年以上後のことだった。

このように本来はドラマの評判を見てから、映画化するかどうかを決めるのが一般的。しかし『マイホームヒーロー』の場合、実写化が発表された時点ですでに劇場版の公開も告知しているのだ。

さらに最近になってもう一つ、ドラマの放送を待たずして映画化を発表した作品がある。それが『からかい上手の高木さん』だ。

原作コミックスの『からかい上手の高木さん』は、すでにアニメが第3期まで作られている大ヒット作。
同作に似ている構造の漫画が“高木さん系”と呼ばれ、もはや一つのジャンルとして捉えられるほどの人気を博した。

原作は今年10月におよそ10年にもわたる連載を終えたばかりだが、ほぼ同時期にTVドラマの実写化が決定。高木さんを月島琉衣が演じ、彼女に翻弄される男の子・西片役には黒川想矢が抜擢されている。

そして今回続報として、2024年5月31日より劇場版が公開されるとの発表が。どうやら本編から10年後の話を描いたオリジナルストーリーになるようで、大人になった高木さんと西片には、それぞれ永野芽郁と高橋文哉が起用されるようだ。

TVドラマは2024年3月から放送されるので、ちょうど最終回を迎えたタイミングで映画が公開される流れになる。視聴者が“高木さんロス”になることを見越して、受け皿的な需要を狙っているのではないだろうか。

『マイホームヒーロー』もそうだが、ドラマ・映画業界がこうした手法をとっているのは、大ヒットしなくとも一定の客を見込めることが大きいのだろう。ましてや何百万、何千万部の累計発行部数を記録する大人気漫画の実写化となればなおさらだ。

もちろんそれなりのリスクもあるため、『マイホームヒーロー』や『からかい上手の高木さん』のようにネームバリューのある人気漫画が原作であること、そして実写化しやすいリアル志向の作風であることが必須条件となりそうだが……。

今や数多くのTVドラマが映画化される時代。だからこそ今回の結果次第では、これまでのやり方が大きく変わるかもしれない。
そのきっかけになれるのか、来年の映画公開が楽しみだ。

【あわせて読む】『セクシー田中さん』が描く“双方向”のシスターフッド、対人関係に悩む人こそ観てほしいドラマ
編集部おすすめ