2023年は日本の映画業界が大いににぎわった年だった。山崎貴がメガホンを取った『ゴジラ-1.0』が全世界興収100億円を突破する一方、是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二がタッグを組んだ『怪物』は第76回カンヌ国際映画祭にて脚本賞、クィア・パルム賞を受賞。
菅田将暉主演の『ミステリと言う勿れ』は、全国映画動員ランキングで5週連続首位という快挙を成し遂げた。果たして今年の映画界ではどのようなヒット作品が生まれるのだろうか。本稿では、2024年に公開される期待の実写邦画を3つご紹介しよう。

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まず今年注目すべきは、9月に公開が予定されている『スオミの話をしよう』だろう。同作は『THE 有頂天ホテル』や『ステキな金縛り』などの名作を手がけてきた三谷幸喜監督による、約5年ぶりの新作映画だ。

ジャンルとしては「サスペンス・コメディ」と銘打たれており、突然行方をくらませた大富豪の妻・スオミを巡るストーリーとなる模様。
スオミを愛した5人の男がひとつの屋敷に集まるのだが、口々に語られる彼女のイメージはなぜか見た目も性格もまったく異なるものだった……という謎めいたあらすじに興味をそそられる。

そこで物語のカギを握るスオミ役を演じるのは、言わずと知れた人気女優の長澤まさみだ。三谷監督にとってこのキャスティングには重要な意味があるらしく、12月13日に行われた2024年東宝配給作品ラインナップ発表会では、「『スオミの話をしよう』は長澤まさみ作品です」とまで言い切っていた。いわく、「今現在の一番素敵な部分、コメディエンヌとしての輝きも含めて、長澤まさみさんの魅力をスクリーンに収めたかったのが1つの目標でもありました」とのことで、コメディエンヌとしての才能を大きく買っているようだ。

実際に長澤はキャリアの最初期こそ類まれな“ヒロイン力”によって注目を浴びていたが、近年は演技の幅が格段に広がっている。たとえばドラマ『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)では、中国人富裕層やくノ一、山形弁を話す40代など、どんな人物にも成りすませる能力を持つダー子という人物を演じ、強烈なインパクトを与えた。


“三谷ワールド”全開だという『スオミの話をしよう』では、そんな長澤のさらなる意外性が爆発するかもしれない。

また2024年夏に公開が予定されている『ラストマイル』は、“最強タッグ”による最新作として期待が高まっている。同作のメインスタッフは、監督・塚原あゆ子、脚本・野木亜紀子という布陣。『アンナチュラル』や『MIU404』(いずれもTBS系)を手がけたヒットメーカーだ。

『アンナチュラル』では石原さとみ演じる法医学者、『MIU404』は星野源綾野剛演じる機捜刑事を主人公に据えていたが、『ラストマイル』では満島ひかり演じる巨大物流倉庫のセンター長が主人公となる。

ストーリーとしてはショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発するという、連続爆破事件を描いた内容となる予定で、『アンナチュラル』や『MIU404』と世界線が交差するシェアード・ユニバース作品として制作されるという。


いったいどのように世界線がリンクしていくのか今のところ不明なものの、『MIU404』では『アンナチュラル』のキャラクターが続々と登場したため、もしかしたら今作にもサプライズゲストが控えているのかもしれない。爆破事件を扱った作品ということを考慮すると、『MIU404』の“機捜コンビ”伊吹(綾野)と志摩(星野)が活躍する……という展開もあり得そうだ。

ここまでは誰もがよく知るヒットメーカーの作品を取り上げてきたが、最後は2月9日公開予定の“無名監督”による長編映画『復讐のワサビ』に注目したい。監督を務めるのはヘマント・シンというインド人で、同作が長編デビュー作品となる。インドのリアリティー番組をきっかけに俳優を目指し、独学で映画制作を学んだ彼が、日本映画界に一石を投じるべく全財産を投入した作品だという。

物語の主人公となるのは、顔の傷が原因で幼少期から執拗ないじめの被害にあってきた少女・カノ。
貧しい生活から抜け出し、明るい未来を目指すことを決意するものの、母親が壊滅的な出来事に巻き込まれたことで、過酷な運命を強いられる──。あらすじだけ見るとシリアスな印象を受けるものの、実際はサスペンスやコメディといった複合的な要素を取り入れたエンターテイメント作品に仕上がっているそうだ。

ちなみに映画のポスタービジュアルには、「“目には目を”だけでは、世界は盲目になってしまう」というマハトマ・ガンディーの言葉が添えられている。「復讐」というタイトルをいい意味で裏切るような展開が待ち受けているのかもしれない。

ほかにも累計発行部数1900万部以上を誇る人気マンガを原作とした実写映画『ゴールデンカムイ』や、YouTube動画の総再生回数が1600万回を突破している『変な家』の映画化など、2024年はヒットを予感させる実写邦画が目白押し。はたしてどの作品が覇権を獲るのか、今年の映画界に注目しよう。


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