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「笠置さんの資料を読めば読むほど、本当に情に厚い人だな、すごく謙虚な方だなというのが印象的でした。なので人情深さ、懐の深さは大事な要素だなと思っていました」
モデルとなった笠置シヅ子のエピソードを基盤に、人情深いキャラクターとして生まれたスズ子。さらに、脚本の足立紳氏、劇中音楽を担当した服部隆之氏と話を進めていくと、ある一つのキーワードが浮かび上がってきたのだという。
「足立さんがカラッとしたい、じめじめしたくないっておっしゃっていて。人情深さは描くけれど、カラッとしている感じがいいですよねとお話しました。その後、服部隆之さんと劇中の音楽のイメージを相談しているときに、隆之さんが『あんまり湿った曲は俺書かないからね』『乾いている感じ、ドライな感じっていうのが大事な気がするんだよ』と、おっしゃったんです」
足立氏と話した“カラッと”のイメージは隆之氏には伝えていなかったというが、奇しくも双方から同じワードが飛び出したのだ。この“カラッと”は、福岡チーフプロデューサーが考えるスズ子像にも一致した。
「カラッとしているところが、スズ子の気持ちよさなんじゃないかなと思いました。そこを大事にしたいと思ったんです」
また、そんな“カラッと”したスズ子を育てた、母・ツヤと父・梅吉も重要な存在だろう。ツヤと梅吉はスズ子以上に人情深い人で、はな湯の常連客やゴンベエと密にコミュニケーションを取っていた姿が印象的だった。
「スズ子の中にすごく両親の存在を感じるところが面白いなと思っています。明るく笑い飛ばすところはツヤさんを感じますし、冗談を言ったり一言多かったりするところは梅吉をすごく感じます。ドラマの設定の枠を超えて、スズ子に受け継がれているのではないかと思います」
こうしてツヤと梅吉のエッセンスを取り入れつつ完成していった“福来スズ子”だが、もちろんモデルとなった笠置シヅ子への敬意も忘れてはいない。史実をドラマに落とし込む上で気を付けていたことはあるかと聞くと、福岡チーフプロデューサーは真っ直ぐにこう答えてくれた。
「基本的には、笠置さんのエピソードに乗っ取って進んでいきたいと思っていました。その上でスズ子だったらどうするかという細かい調整はありましたが、笠置さんの思いを大切にしたいと思っていました」
「笠置シヅ子さんの存在があってこその福来スズ子」という制作陣の強い思いが根本にあったからこそ、スズ子は個性際立つ一人のキャラクターとして成長することができたのだ。
最後にドラマオリジナルの登場人物について話を聞くと「実在した人物をなんとなく混ぜ合わせてキャラクターを作ったりしているので、はっきりとしたモデルは服部良一さんと笠置シヅ子さんと淡谷のり子さんぐらいなんです」と教えてくれた。
有楽町を界隈を取り仕切る「ラクチョウのオミネ」(田中麗奈)など、物語後半になっても個性的なキャラクターが登場している『ブギウギ』。最終回に向けて、どんな新たなキャラクターが登場するかも楽しみたい。
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