ジャポニズムの再来なのだろうか。ここ最近海外では、日本を舞台にした侍や忍者のドラマが立て続けに大ヒットを記録している。
しかし今回のブームが今までと決定的に違うのは、“正しい日本のイメージ”がそのまま受け入れられつつあることだ。

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たとえば典型的なのは、2月から「ディズニープラス」で独占配信が始まった戦国スペクタクル・ドラマ『SHOGUN 将軍』だ。ハリウッドの制作陣が、関ヶ原の戦いをめぐる重厚なストーリーに挑んだ作品だが、そこでは日本文化を正しく描くことが重視されている。

これまでハリウッドの作品で日本が舞台になる際には、ある種のファンタジーを反映した“海の向こうのヘンテコな世界”として造形されることが多かった。おかしな日本語のネオン看板でお馴染みの『ブレードランナー』から始まり、明治時代なのに忍者が出てくる『ラスト サムライ』や、京都の近くに富士山がそびえたつ『ブレット・トレイン』など、その例を挙げていけば枚挙に暇がない。

もちろんそこには愛情も含まれており、フィクションと分かっていて“架空のNIPPON”を表現しようとするクリエイターが多いという事情もあるだろう。
とはいえ日本文化が海外に正しく伝わらない要因となっている側面も否めない。この文脈で思い出すのは、2013年に公開された、キアヌ・リーブス主演の『47RONIN』だ。同作は忠臣蔵をモチーフとした歴史モノで、日本人キャストが大勢登場するにもかかわらず、全員が英語で会話するというツッコミどころが存在した。

そんななかで『SHOGUN 将軍』が革命的だったのは、エグゼクティブプロデューサーのジャスティン・マークスは日本文化に敬意を払い、日本人のキャストやクルーを積極的に採用する姿勢を見せたこと。そして俳優の真田広之が主演・プロデューサーとして作品の根幹に携わり、徹底的な監修を行ったことで、同作は“トンデモな日本”から卒業することに成功した。

作中では日本の文化や歴史はもちろん、歩き方や座り方といった細かな所作まで本物らしさが追求されている。
また言語の扱い方にも誠実で、世界の視聴者がターゲットとなっているにもかかわらず、作中で飛び交う言語はほぼ日本語だ。主人公のジョン・ブラックソーンはイギリス人の船乗りなので例外だが、基本的には“日本人キャストが日本語を話す”という当たり前の光景が実現している。

そんな作り手の熱意が伝わったのか、同作は海外にて高く評価されている様子。辛口で知られるアメリカの映画レビューサイト『Rotten Tomatoes』では、批評家によるスコアが一時“100%”を記録するという快挙を達成し、一般視聴者のレビューでも高いスコアを維持している。

『SHOGUN 将軍』の大ヒットに関しては、真田の貢献についても言及しておくべきだろう。同作が制作される前から、真田はハリウッドにおいて、千葉真一(サニー千葉)に続く日本人スターとしてキャリアを築き上げてきた。
たとえば英語版の『SHOGUN 将軍』トレーラー映像には、「Hiroyuki Sanada is a legend」といったコメントがずらっと並んでいる。

もちろん真田の出演作には、ファンタジー的に日本を描いた作品も数多く含まれていたが、そこで築き上げたメディアイメージを逆に武器として利用することで、『SHOGUN 将軍』という画期的な作品が生まれたのだと言えるだろう。その足跡は、2022年の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』にて、ハリウッドの歴史の影に隠れていたアジア系俳優、ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンが一躍スターとなったことを想起させる。

他方で日本文化を題材としたドラマとしては、2月にNetflixで公開された『忍びの家 House of Ninjas』も大きな注目を浴びている。同作は現代に生きる“忍者の家族”を描いた作品で、俳優・賀来賢人が持ち込んだ原案をデイブ・ボイル監督が映像化した。

その勢いはまさに破竹のごとしで、「今日のシリーズTOP10」にて世界16の国と地域で1位を獲得したほか、世界92の国と地域でTOP10入りを達成。
「Netflix週間グローバルTOP10」(非英語シリーズ)で1位を獲得するなど、未曽有の世界的ヒットを記録している。

忍者を題材としつつ、生々しい現代日本の状況も描いており、たんなるファンタジーでは終わらない面白さを秘めているのが同作の魅力だ。

日本人が制作に深く関わった作品が、これまでにないグローバルヒットを生み出している2024年。ハリウッド映画に出てくる日本のイメージも、今後大きく変わっていくかもしれない。

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