欅坂46「夏の全国アリーナツアー2019」東京ドーム公演のアンコールで約1年9カ月ぶりに披露され、観客全員を興奮の渦に巻き込んだ『不協和音』。中でも注目を集めたのが、卒業した長濱ねるが担当していた「僕は嫌だ」のパートを引き継いだ二期生・田村保乃だ。
今回、「欅坂46 LIVE at 東京ドーム ~ARENA TOUR 2019 FINAL~」DVD/Blu-rayの発売を記念して、『月刊エンタメ』2019年12月号に掲載された田村保乃のインタビューを公開。彼女はどんな想いでこの楽曲と向き合ったのか、その舞台裏を語ってくれた。
──田村さんは東京ドーム公演のMCで「この公演にはいろんな想いがある」と仰っていました。一体どんな想いがあったのでしょうか?

田村 ドーム公演はリハ期間も限られていて、それに加えてダンスや立ち位置など覚えなきゃいけないものがたくさんあったので頭がいっぱいだったんです。それに、ライブ前に9thシングルの選抜発表があって、選抜に選んでいただいているのに上手くパフォーマンスをできる自信がなくて。リハのときはステージに立つのがただただ怖かったです……。こういう感情は初めてでした。

──田村さんはドーム公演直後のブログ(9月21日投稿記事)でも「初めての感情にたくさん出会った」と書いていましたね。

田村 初めて欅坂46としてステージに立ったときももちろん不安だったし、むしろ自信を持ってステージに立てたライブの方が少ないんですけど、今回はそれとはまた違うプレッシャーや不安がありました。自分だけの問題じゃなくて欅坂46としてできない自分を見られるのが怖かったです。

──田村さんは『不協和音』のパフォーマンスは観たことがありましたか?

田村 もちろんあるんですけど、『不協和音』って自分の意思を曲げない曲じゃないですか。私は本当に真逆で、周りに流されますし、嫌なことは嫌だってあんまりハッキリ言えない性格なので上手く表現できるのかなと不安でした。
私がこのパートを言って、みなさんに想いを届けられるかなって……。

──『不協和音』に参加することを知ったときはどう思いましたか?

田村 元々2期生でもパフォーマンスしてみたいって言うメンバーが多くいたので「ついにこの曲をやる日が来たんだ」と思ったのと、パフォーマンスメンバーに自分の名前を見つけて素直に楽しみでした。それに、ファンの方も喜んでくださるだろうなって。でも、そのときは長濱さんのパートのことはあまり意識していなくて、ふとしたときにメンバーから「『僕は嫌だ』のパートだね!」って言われて、はぁっ! って驚きました(笑)。

──そんな『不協和音』を初めてパフォーマンスするにあたって、先輩メンバーからアドバイスをもらったりしましたか?

田村 私は人に悩みとか相談できないタイプなんです。でも初めてリハをしたときに平手さんが「大丈夫? 考え込んじゃってるよね?」って気づいてくださって。私はそんな雰囲気を出しているつもりは無かったし、誰にも相談していなかったので「あぁ、すごい見てくださっているんだな」と思いました。それに「不安なことがあったら何でも相談してね」って言ってくださって。だけど、私は本当に相談できないタイプなので連絡しないだろうなと思っていたんです。でも、リハで初めて『不協和音』を踊ったとき、何度踊ってもステージに立つことや、あのパートを自分が叫ぶことが本当に怖くなってしまい、平手さんに泣きながら連絡をしました。平手さんからは「すごく気持ち分かります」という優しい言葉をいっぱいかけてもらって。その言葉が無かったら1人で抱え込んでグチャグチャなまま本番を迎えていたんじゃないかなって思います。


──不安の大きい中、本番を迎えましたが、どんな気持ちでパフォーマンスに臨みましたか?

田村 始まる前は怖かったんですけど、パフォーマンスしているときは正直怖いとは思わなくて“苦しかった”です。後から映像を観返してもすごく苦しそうな顔をしていたなと(笑)。でも正直あんまり覚えていなくて、ただ1日目の終演後は「できなかったな」とすごい落ち込んでめっちゃ号泣しちゃってました。

──どんな部分ができなかったと思ったんでしょう?

田村 1日目は初めっから『不協和音』のことしか考えられなくて。もうそこの時点でよくないし、そんな自分が許せなかったです。大事なところでも間違えてしまいましたし、「僕は嫌だ」の叫びも公演通して全て納得できないどころか申し訳なくて。「ごめんなさい」ってずっと泣いていました。

──そんな出来事があってからの最終日(2日目)はいかがでしたか?

田村 これまでは初日が終わったら間違えてしまうところも分かっているし、それ以降の公演は落ち着いてできることの方が多かったんです。でも、今回は逆に間違えるところを分かっているからこそ、絶対に間違えられないという怖さがありました。

──でも、2日目の田村さんのパフォーマンスや「僕は嫌だ」という叫びは心に響くものがありました。あの叫びは何か意識して声を出していたんでしょうか?

田村 正直あんまり覚えていなくて、後から映像を観て「あ、こんなんだったんだ」という感じでした。『不協和音』をやっているときに観た景色も全然覚えていないですし、今思えばペンライトも全く見えていなかったと思います。
ただ覚えているのは平手さんの「僕は嫌だ」の声と、イントロが流れたときの歓声、パフォーマンスが終わったときのことだけ。

──アスリートなどが極限の集中状態のときに記憶がなくなることがあると聞いたことがあります。田村さんもそうだったのかもしれませんね。

田村 集中してたのかな(笑)? そうだったらうれしいです。

──1日目は悔しい思いをしましたが、2日目は終わった後に納得できましたか?

田村 1日目はできなかったって思ったんですけど、2日目は出せるものは出し切ったと思います。それが良いものだったのかは自分では分からないですけど「良かったよ」という言葉をたくさんの方からかけてもらいました。どうなんですかね? でも、1人でも良いと思ってくれているのなら良かったかなと思います。

──『月刊エンタメ』11月号のインタビューで田村さんが「ダンスが上手くなりたいというよりかは、誰か1人でもいいから会場にいる人の心に来るパフォーマンスがしたい」と言っていたのがとても印象的でした。あのパフォーマンスは観客全員の心に刺さったと思います。

田村 いやぁ、そうだったらうれしいです。正直まだ自信がないので、ただただ必死に踊ったり歌ったり私のできることを頑張りました。今回、ステージ裏でも本当にライブのことしか考えていなかったのでそれが伝わっていればいいなって思います。


──公演後のブログでは平手さんに抱きついている写真が話題となりましたが、あのときはホッとした気持ちだったのでしょうか?

田村 そうです。あのときは公演が終わったあとに平手さんと会ったときで、もうお互い抱き合いました。実は公演期間中は全然お話をしていなかったんです。それは平手さんも『不協和音』をやる上である程度距離を置かないといけないのかなと思っていたみたいで、私のためにそうしてくださったらしくて。でも、それが終わって私も安心して、もう完全に身を任せてしまいました(笑)。「保乃ちゃんで良かった」って言ってくださって、もう本当にそれだけでうれしかったです。

──そういえば、今回のドーム公演では『不協和音』の最後のポーズでいつもとは違い、田村さんが平手さんの腕をしっかりと支えているシーンが話題を集めていました。

田村 本来は欅ポーズのときに手を置くだけなんです。でも、私は平手さんにパワーを送りたくて握ってしまいました。1日目は「明日も頑張りましょう」、2日目はこの後に披露するダブルアンコールに。内緒でやっていたはずなので、まさかそこをクローズアップされるとは思っていなかったです。

──心にグッとくるものがありました。
改めて東京ドーム公演を終えて、今の気持ちを教えてください。

田村 ドーム公演が始まる前、本当に周りの方に申し訳ないほど1人でずっと泣いていて。もっと強くならなきゃって改めて思いました。もうすぐグループ加入1年になりますし、周りに頼ってばっかじゃいけないなと思います。とりあえず、ドーム公演では精神面、パフォーマンス面全てにおいて今までで一番課題が見つかったので、それをこれからの活動の糧にできるように頑張ります。

──2期生にとっては初となる全国ツアーを経て、9thシングルのリリースも控えていますが今後の意気込みを教えてください。

田村 そうですね……。選抜発表される前のライブと、された後のライブでは今考えると心の持ちようが全然違ったなと思っていて。される前は自分ができることを一所懸命やって、精一杯楽しんでいたんですけど、発表されてからは背負うものとか感じるものが変わりました。ただ、それをプレッシャーに感じるのではなく、糧にできるくらい強くなれたらいいなと思っています! 欅坂46にとっては初めての選抜制で、やっぱりいろいろと思う方もいると思いますし、もしかすると納得できない方もいるかもしれません。それでも欅坂46の楽曲を届けたいって気持ちは全員変わっていないので「欅坂46って良いな」って絶対に思っていただけるよう、努力して頑張ります!
▽田村保乃(たむら・ほの)
1998年10月21日生まれ、大阪府出身。163.5センチ。
A型。二期生。ニックネームは「ほにょ」。東京ドーム公演に続き、「第70回NHK紅白歌合戦」でも『不協和音』を披露。2020年も活躍が期待される。

▽「欅坂46 LIVE at 東京ドーム ~ARENA TOUR 2019 FINAL~」DVD/Blu-ray
発売中
DVD初回生産限定盤 8,000円、DVD通常盤 5,200円、Blu-ray初回生産限定盤 10,000円、Blu-ray通常盤 7,200円(すべて税込)
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