【関連写真】ドラマ『海のはじまり』より夏(目黒蓮)&海(泉谷星奈)
目黒が演じる夏は曖昧な返事が多く、流れに身をまかせるタイプだ。彼をよく理解していた元恋人・水季(古川琴音)からは「夏くんは選べないから」と評されるほど。
ただ流れに沿って、曖昧にでも着実に普通を生きている……そんな人間なのではないだろうかと思っていた。しかし、今回の回でその考えは覆された。
実際にこれまでの夏は、海(泉谷星奈)に自分を産んだ父親だと認識されていたことで父親になるべきなのかと流れを見定めているように感じた。そして、望まれていることを懸命に受け入れようとして、もがいているようにも見えた。
また、待望の子供を亡くした朱美(大竹しのぶ)、まだ水季の死が受け止められず夏に冷たくあたってしまうことを反省する姿を見せる津野(池松壮亮)との対話を経て“大切な人を失った”という感情を整理し始めたように映った。
海と母子手帳を通して3人家族の一員として、過ぎ去った時間を取り戻すように気持ちを高めていく中、母との思い出の場所にいる海に対して「大丈夫?」と問いかけるも、海は答えず、気丈に明るくふるまう。それを受けて夏は海に対して「なんで元気なふりするの?」と詰め寄ってしまうのだ。
そこに、流れに身を任せ、頭のなかでぐるぐると考え、表に感情を出さずに曖昧なふるまいをする夏はいなかった。
夏は海に対し、「同じ別れの辛さを感じたはずなのに、なぜそんなに気丈でいられるのか。どうしたら自分もこのもやもやから抜け出せるのか」とまるで自問するように語り掛ける。
弥生(有村架純)の制止の声も聞かず、海の気持ちを汲み取らず、自分の考えだけをぶつける。夏がそんなにまっすぐに自ら動く姿はこの時初めて映し出された。
そして海もまた、弥生から優しく差し出された手をつかまずに夏に抱きつく。またしても2人は「外野」を残し、何かがはじまりそうなそんな気配を感じさせた。
夏と海、お互いに関わりあうことで水季との別れや失った悲しみを共有し水季との時間を噛みしめていく。そして、「パパやらなくてもいいから、いなくならないで」という海の願いを夏は受け止め、次へと進みだしていく。まだまだ不器用で不格好で言葉足らずな二人はたどたどしくも家族のはじまりを感じさせた。
一方で、そんな二人を身近に感じつつも、家族としてはじまる気配の切なさを感じている弥生。どうしても外野だと突きつけられてしまう現実と堕胎した過去。憧れの家族の姿になれていると浮かれていた気分はすぐに消えてしまう。
子を産むということ、産まないということ。我が子を産まなかったという現実と、産む選択をした結果が目の前にある状況でなお夏と海と向き合おうとする。朱美に突き放すようなことを言われても凛とした態度で応じる。彼女の強さや優しさがどうしようもなく切なく、悲しい。
強くならなければ生きられなかった弥生にとって曖昧で繊細で流れのままに生きる夏は憧れであり、愛おしい存在であったのだろうと想像できる。
しかし、自分の意志で海と向き合い始めた夏に対して今後どのように向き合っていくのか。そして弥生の過去を夏はどのように受け止めるのか。きっと来週も涙なしで見終えられないのではないだろうか。
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