【写真】ウエストランド・井口ほか、撮り下ろしカット【4点】
――井口さんといえばやはり毒舌。改めて、そこについてお話を聞かせてください。
僕は毒舌という意識は全くないです。世の中を良くしようと、本当のことを言っているだけで、むしろ一番優しいですよ。世の中が平和になっちゃったらやることがなくなるけど、お笑い界が一向にそうはならないので。
――連載開始から約3年、お笑い界は良くなっていないのでしょうか?
僕自身は変わっていないですけど、僕らのあとに令和ロマンがM-1を連覇して、(髙比良)くるまが力を持ってみんなが信じるようになって馬鹿になっちゃって、脳みそがどんどんなくなっている。もう日本は終わりです。すごそう、新しそうだけで崇めるようになっちゃって、本当に終わり!YouTubeでもそれっぽいことだけ言う人が人気になって、どんどん考えなくなっている。
――最近もなにか怒りのポイントはあったんですか?
バッテリィズのエースが結婚していたというニュースで、SNS見たら祝福していて。嘘ついてたんだからまず謝らないと。あいつアナザーストーリーで「実家ぐらし」とか言ってたぞ。(みんな)なんで疑問に思わないのか、吉本がすごい好きなんでしょうね。謝らないのもおかしいし、どっちもやばいです。じゃあなんにも公にしなきゃいいってなりますよ。(芸能人が)もうすべて内緒にしても絶対に怒んないでくださいねって。そういうやつばっかりなので絶望ですよ。
――テレビの現場でも「最悪」は感じますか?
僕らはテレビが好きで、華やかなテレビの世界を見て出たいと思って芸人になった。
――井口さんから見ると、そんな最悪の時代になってしまったんですね。お笑い界はこのままなのでしょうか?
いつかひっくり返ると思う。そんなやつばっかりじゃ日本の経済も立ち行かないですから。組体操とかももう一回やり始めるんじゃないですか(笑)。「老害で結構」と自分で言っていたけど、若いからじゃなくてあいつらが嫌なやつなんですよ。仮に年上でも嫌な先輩だし、みんな騙されないでほしい。僕はずっと正しいことを言ってるんだから!
――すでに井口さん節が炸裂していますが、その毒舌にはなにか井口さんなりの信念だったり、工夫みたいなものはあるのでしょうか?
なんも考えてないですよ。世の中みんなが思っていることとか、誰も言っていないことを言うだけ。M-1で優勝したネタのYouTuberがどう、とか「佐久間さーん!」とかもみんながちょうど思い始めたときに言うくらいですかね。たまにSNSで「これの悪口言ってください」とか来るけど、なにもわかってないヤツが決めんなよと。
――結構きついこと言っていても、不思議と受け入れられるのが井口さんのすごいところですよね。
こんなちっちゃいやつなんで、最悪武力でなんとでもできますからね。しかも、吉本でもなくタイタンのこんなちっちゃいやつに何にも思わないでしょ。やることに意味ないですから。毒舌ばかり言ってしんどくないかとか言われるけど、ピンとこないんですよ。「眠いな」と言っているのと変わらないですからね。
――改めて書籍についても伺います。率直な感想はいかがですか?
M-1で優勝するより前からやっているので、気づいたら結構やっている。本が出たという実感はないですね。まだ読んでもないんですけど。連載してきたことが書籍化なので、稼働もないしいいなと思います。
――記憶に残っている部分もありますか?
特にないですし、それくらいがいいですよ。ただ雑談しているだけなので、気楽に読んでもらえれば。
――巻末にある爆笑問題の太田光さんとの鼎談は読み応え十分でした。
そこだけでも買う価値ありますよ。やっぱりWikipediaとか見ても当時の空気感とかわからないし、実際に話を聞かないとね。僕も太田さんの話を聞くのが好きだったので、レジェンドの当時の話を残していくのは大事なんじゃないですかね。
――お笑い界の歴史もこの書籍で残っていきますね。
相当しょうもないですけど、だからこそ貴重です。僕のおじいちゃんが自分史を書いていて読んだことがあって。戦争の話が書かれていて、偉人の戦時中の話はあるけど、田舎の当時の若者の話はないですよね。すべてのおじいちゃん、おばあちゃんが書いたほうがいいと思いました。この本も同じようなことばっかり言っているけど、どうでもいい話という点では貴重かもしれないです。
▽井口浩之(いぐち・ひろゆき)
1983年5月6日生まれ、岡山県津山市出身。2008年中高の同級生・河本太とウエストランドを結成。2022年M-1グランプリ優勝。お笑いナタリーの連載を再編集した『書籍!!今月のお笑い ウエストランド井口と作家飯塚のお笑い界ひねくれ大解説』(宝島社)が6月25日に発売された
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