【写真】メイコ(原菜乃華)も上京を夢見てのぶの家へ、『あんぱん』第14週【5点】
まずは長女・のぶ。のぶの得意なことといえば、幼い頃から一貫して「運動」だった。パン食い競争で「走るのが好き」と自覚したのぶは、体操の先生を目指して女子師範学校へ進学。夢を叶えたも束の間、戦争によって子どもたちに愛国精神を説かざるを得ない状況に追い込まれてしまう。
そんなのぶが新たに身につけたのは、意外にも「速記」のスキルだった。運動とは畑違いに思えるが、“身体の一部を素早く動かす”という点では共通しているのかもしれない。夫・次郎(中島歩)が速記でメッセージを残していたことがきっかけで、のぶはあっという間に速記を習得。それが記者として働く転機につながった。
学生時代はそれほど勉強熱心には見えなかったのぶだが、記者となってからは集中して原稿に向かう姿が印象的だ。取材現場を走り回り、その勢いのまま記事を書く……そのエネルギーは、止まることを知らない“はちきん”気質ゆえだろう。
一方、のぶの苦手分野は「細かい作業」である。父・結太郎(加瀬亮)が亡くなったあと、母・羽多子(江口のりこ)は内職の仕事を始める。まだ幼かったメイコを除き、のぶと蘭子(河合優実)も内職を手伝っていたのだが、蘭子の方が器用に内職をこなしていたのを覚えているだろうか。また、裁縫が苦手というエピソードもあり、のぶはやはり、身体も頭もフル回転させながら動く方が性に合っているようだ。
そう考えると、嵩(北村匠海)と結婚した後も、のぶが主婦業におさまるとは思えない。家事は一通りこなせるだろうが、のぶの仕事への意欲は尽きないだろう。のぶのモデルとなった小松暢は、「代議士の秘書になる」という理由で高知新聞を退職しているが、のぶもきっと何らかの形で仕事を続けていくだろうと予想する。
次に、私が密かに期待している「朝田パン復活」の鍵を握るのは、次女・蘭子だ。前述したとおり、蘭子には“手先が器用”という伏線が張られており、まだ回収されていない。第69回では、釜次(吉田鋼太郎)に「女子いうんは大胆なことを考えよるにゃあ。おまんもか?」と聞かれ、「さあねえ……」と意味ありげに返答する場面もあり、蘭子の中には何か思惑があるはずだ。
結婚して御免与町を離れる未来もゼロではないが、蘭子はこの先も豪(細田佳央太)のことを思い続けるだろう。
そして三女のメイコは、戦争によって自分の将来と向き合う時間を奪われてしまった。のぶのように進学することも、蘭子のように就職することもできず、自分を“みそっかす”と卑下していたが、ようやく「歌が好き」という夢の手がかりを見つける。
メイコは町であんぱんを売るときにオリジナルソングを歌っていたり、三姉妹で歌う場面では誰よりもノリノリだったりと、歌好きの片鱗は確かに散らばっていた。今回、それが夢として芽吹いたこととは、親心のような気持ちで大変喜ばしい。とはいえ、時代は淡谷のり子や笠置シヅ子ら『ブギウギ』(2023年後期)のモデルが活躍する激戦の最中。メイコが歌手として成功するのは、決して簡単ではないだろう。
それでも、メイコには希望もある。次郎を失ったのぶ、豪を失った蘭子と異なり、彼女の思い人・健太郎(高橋文哉)はまだ生きているのだ。御免与町を出て物理的に健太郎との距離も近くなったため、“好きな人と結ばれる”という幸せな未来が待っている可能性も十分にある。
朝ドラ視聴者の中には、『とと姉ちゃん』(2016年前期)、『まんぷく』(2018年後期)、『スカーレット』(2019年後期)など、朝ドラの“三姉妹”が好きだという人も多いことだろう。『あんぱん』の三姉妹は一体どのような未来を選択していくのか、今後も目が離せない。
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