PPEはコスプレ業界にプロを確立したとも言われるが、社長のよきゅーんさんは、所属するタレント達はあくまでも “家族”だという。「(PPEがやっているのは)私たちとファンによる農民一揆なんです」。笑顔でそう語るよきゅーんさんに、えなことの出会いから、コスプレイヤーへの愛情、これから目指す先を聞いた。(3回連載の1回目)
【写真】自身もアイドル、タレントとしても活躍、よきゅーんの撮り下ろしカット【10点】
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――PPエンタープライズ設立から約1年半。この時間はよきゅーんさんにとって怒涛の日々だったのでは?
よきゅーん そうですね、もう記憶にないぐらい目まぐるしくて、慌ただしくて。ふとした時にスケジュール帳やカメラロールをえなこと一緒に見て、「ああ、コレやったな!」と、やっと思い出せるぐらい記憶にありません。事務所とは言ってもスタッフは私しかいないので、毎日ドタバタしていますね(苦笑)。
――TV、ネットに雑誌……今やえなこさんを見ない日はないぐらいの活躍ですからね。
よきゅーん 私がコスプレを初めて約20年、曲がりなりに芸能経験者として見てきましたが、中川翔子ちゃんの登場などで10年以上前からバラエティなどで面白がっていただたりと、コスプレイヤーに商業的価値を見出してもらえるベースはあったとは思うんです。ただ、大きく商業的に使えるまでは成長できていなかったと思うんです。それがえなこの登場で、より業界全体がコスプレイヤーを面白がってくれる空気に変った気がします。えなこは今のようにメディア露出がない状態の時からコミケでとてつもない集客をしていて、いつか大きくなるとは思っていましたが、ここまでブームを呼ぶとは……正直想像もつきませんでした。
――えなこさんが出る雑誌は軒並み売り上げが上がるという話も聞いています。
よきゅーん 雑誌の売り上げ5~10%アップし、消化率も7割だったと聞いています。コロナ前に開催した雑誌の即売会イベントでは、5千冊程売れたそうです。
――すごいですね。出版不況と言われる中では考えられないほどの数字です。
よきゅーん ですよね。私もビックリしました。編集部の方に「価値がある子」なんだという意識をもってもらえたのは強いですよ。私もえなこも大好きな『週刊ヤングジャンプ』(集英社)さん、『少年チャンピオン』(秋田書店)さん……たくさんの憧れの媒体さんに呼んでいただいた時は身に余る光栄で。「このご縁を大事にしていきたいね」と、えなこと二人で話したのを強く覚えています。
――そもそも、えなこさんとの出会いについてうかがえればと。
よきゅーん 2011年に30歳を迎え「腐男塾(現:風男塾)」を卒業した後、ここから先は事業に挑戦してみようと思い、念願だったメイド喫茶の運営を始めたんです。
――今ではえなこさんを筆頭に様々なコスプレイヤーさんがPPEに所属しています。芸能の世界でコスプレイヤーをメインでマネジメントする会社を経営されているのは、珍しいですよね。
よきゅーん そもそも事務所を立ち上げようと思っていたわけではなく、全てメイド喫茶からの繋がりなんです。16年にえなこが来たタイミングで、業界で「コスプレイヤーを起用したい」という企業さんが多くなり、私が長年ガンホーさんで『ラグナロク・オンライン』というゲームのイメージガールをやってきた事もあり、企業さんからキャスティングのお手伝いをしてほしいという依頼をいただいたんです。当時のコスプレ業界って、仕事の依頼を受けたのに、いざ当日になると現場に来ないというパターンも多くて。
――以前、コスプレイヤーで社長業もされている火将ロシエルさんも「気分次第で遅刻したり、現場に来ないレイヤーが多い」と同様の悩みを答えていました。
よきゅーん やはり(笑)。今日はコンディションが悪いからと現場に来ず、カメラマンさんを泣かせる光景を結構見てきて。失礼な言い方かもしれませんが、やはりプロではないんですよね。そうした時に私に、「ちゃんとイメージキャラクター業務を全うしてくれる子をアサインしてほしい」という代理業務をいただいき、えなこを色んな企業案件にあてられるようになっていったんです。そこから長い付き合いの友人・吉田山(吉田早希)が30代を超えてこれから先のことを考えていたタイミングだったので、うちなら空いてるよ~って、言ってのらりくらり加わり(笑)。昨年には現場で一緒になるたびに「良い子だなぁ」と思っていたさきみー(宮本彩希)やつんこ、とにかくお顔が大好きな篠崎こころちゃん……と、私がこれまで出会ってきた人たちが自然に集まってきたという感じなんです。
――事業拡大してやろう、というよりは、成り行きで今の規模になった感じですね。
よきゅーん 本当にその通り。ラッキーでしたね。ただ、仕事仲間として受け入れただけでなく、私としてはみんなを“扶養する”という気持ちをもって受け入れています。事務所ってひょっとしたら生活の面倒を見る義理はなく、タレントには売り上げを出してもらうのが第一と考えるものなのかもしれません。けど、プレイヤー側だった私としては、女の子たちが生活できずに不安な気持ちになるのは重々承知していて。
※インタビュー<2>えなこ所属事務所社長・よきゅーんさんに聞く芸能界とコスプレ界「頑張れば売れるということを教えたい」はこちらから。