柿谷曜一朗 写真提供: Gettyimages

2020年の明治安田生命J1リーグが、2月21日にいよいよ開幕となる。今シーズンはどんな戦いとなるだろうか?

フットボール・トライブ・アジア編集部のクリシュナ・サドハナによる大胆なJ1ランキング予測を、ここで数回に分けて紹介したい。

これから厳しい戦いに挑むJ1クラブを分析し、降格、カップ戦優勝、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)枠を含めて、シーズン終了後にはどのようなランキングとなるかを予測していく。果たしてどの予測が実現するかしないか。

もちろん、これはあくまでも予測であり、違う考えを持つサポーターも多いだろう。是非SNSやコメント欄を使ってご意見ください。

今回は8位から5位までの予測をどうぞ。前回までのランキングはこちら。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(13位~9位)

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(18位~14位)

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
ジェイ・ボスロイド 写真提供: Gettyimages

8位:北海道コンサドーレ札幌

2019結果:10位/2020注目選手:ジェイ・ボスロイド、チャナティップ・ソングラシン

ミハイロ・ペトロビッチ監督はミラクルな指導者である。J2とJ1の間で降格と昇格を繰り返していた北海道コンサドーレ札幌を、上位を狙える競合クラブに進化させた。2016年の昇格以来、札幌は現在クラブ史最長のJ1滞在を楽しんでいる。2017年の11位を除くと、その後2シーズンはトップ10内という結果。この活躍の始まりは、長年の業績不振チームをJ1エリートに変える元浦和レッズのペトロビッチ監督が札幌に到着した時と一致している。

ペトロビッチ監督以外に札幌の成長に影響を及ぼしたのが、ジェイ・ボスロイドとチャナティップ・ソングラシ(タイではジェイと呼ばれている)の、素晴らしい「ジェイ&ジェイ」コンビだ。

若い方のジェイ(26歳のチャナティップ)はタイ代表選手で、2017年途中にムアントン・ユナイテッドから札幌にレンタルで移籍して以来、素晴らしい活躍を見せ続けてきた。

そのパフォーマンスは札幌を納得させ、完全移籍に至った。日本中のディフェンダーを脅かす存在になった小柄なウィンガーである。

年上のジェイ(37歳のボスロイド)は、イングランドサッカーの熟練したベテランであり、プレミアリーグやチャンピオンシップでの多くの経験を持つ。チャナティップとほぼ同じ時期に(2017年7月)ジュビロ磐田から移籍し、年季の入った足で札幌の攻撃の中心としてその地位を築いてきた。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
チャナティップ・ソングラシン 写真提供: Gettyimages

もちろん、他の選手の素晴らしい貢献も忘れてはいけない。鈴木武蔵、ルーカス・フェルナンデス、アンデルソン・ロペスは、攻撃面でジェイコンビの力となり、白井康介と荒野拓馬は中盤を固める役割を果たしてきた。福森晃斗、進藤亮佑、深井一希が守備に揃い、韓国代表GKク・ソンユンは見事にゴールを守ってきた。

2020年に向けてはチームの変更がわずかにしかなく、サポーターにとっても喜ばしいことだろう。注目すべき移籍の動きは2件ばかりあった。ルーカス・フェルナンデスがレンタルから完全移籍となったことと、タイ人GKカウィン・タンマサッチャーナンをベルギーのOHルーヴェンから2年の期限付きで迎えたことだ。

カウィンには、GKク・ソンユンが来年一時的に尚州尚武FC(軍隊のチーム、韓国の「兵役法」で入隊の義務があるため)に移籍する際に、新しいメインキーパーとなってゴールを守ることが求められる。チャナティップが札幌に想像以上の成功をもたらしたことを考えると、同じタイ人のカウィンも同様のインパクトを与えられるかどうかが興味深い。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
柏好文 写真提供: Gettyimages

7位:サンフレッチェ広島

2019結果:6位/2020注目選手:ドウグラス・ヴィエイラ

サンフレッチェ広島は安定した2019年を過ごし、6位でシーズンを終えた。今年もその一貫性を保ち、J1の上位半分の争いに留まると予測する。

城福浩監督は2017年12月の就任以来、素晴らしい働きぶりだ。2018年には2位までに駆け上り、前述の2019年は上位半分での争いを保っての6位。確かに広島は過去には劇的な衰退もしており(2015年優勝、2016年6位、そして2017年にはなんと15位)、2018年の順位と比べると2019年も実際下降してはいる。しかし城福監督の元では、前監督時の様な酷い状況にまで陥るとは思わない。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
サンフレッチェ広島サポーター 写真提供: Gettyimages

移籍に関しては、広島は2019年の多くの重要メンバーを保持した。トップスコアラーの柏好文やドウグラス・ヴィエイラ、ミッドフィルダーの森島司や川辺駿らが、2020年も広島に残って戦う。また、松本山雅から広島に期限付き移籍し9試合中4得点を挙げたレアンドロ・ペレイラ、そしてブラジルのトンベンセから同じく期限付き移籍したハイネルは、共に契約延長となった。城福監督は昨年とほぼ同じオプションに頼ることができる。

今回広島を離れた特筆すべき選手は、名古屋グランパスへ渡った稲垣祥、レンタル期間を経てガンバ大阪に完全移籍を決めたパトリック、ベガルタ仙台に旅立った吉野恭平、そして大分トリニータを選択した渡大生だ。

一方、城福監督に攻撃のオプションを増やす選手としては、降格した松本山雅から永井龍が加入。そして、昨シーズン清水エスパルスからレンタルで復帰した清水航平も完全移籍となった。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
大岩剛 写真提供: Gettyimages

6位:鹿島アントラーズルヴァンカップ優勝)

2019結果:3位/2020注目選手:土居聖真

誤解を恐れずに言おう。鹿島アントラーズは現在、移行期にある。

まず、クラブを離れた大物選手は中国サッカー甲級リーグの長春亜泰足球倶楽部に渡ったセルジーニョのみだが、前シーズン王者の横浜F・マリノスから広瀬陸斗、名古屋グランパスから和泉竜司、川崎フロンターレから奈良竜樹といったクオリティの高い選手が多数加入となった。そして何よりも、この茨城のクラブに最も影響を与えてきた監督の変更が最大の理由となる。

これまでの鹿島の成功の多くには、大岩剛前監督の功績が大きく関わってきた。彼は選手としても活躍した鹿島で2011年からアシスタントコーチとなり、2017年から2019年までを監督として務めたが、その間鹿島がスポットライトを浴びるいくつかの最高の瞬間を目の当たりにしてきている。石井正忠前監督のアシスタントとして2016年のJ1リーグ優勝にも関わり、同年のFIFAクラブワールドカップ決勝戦でレアル・マドリード相手に勇敢に戦った時もベンチにいた(結果は延長戦後4-2で敗北だったが)。2017年に石井監督の後を引き継いだ時も、全く期待を裏切らなかった。

大岩監督時代の鹿島はJ1優勝こそできなかったが、2018年にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝を果たしている。また、2019年にトロフィーは獲得できなかったが、J1リーグ優勝争いを照らし上げ、天皇杯では決勝進出もした。しかし、その決勝戦でのヴィッセル神戸相手の黒星が響き、大岩監督は契約期間満了に伴い辞任を決意した。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
鹿島アントラーズサポーター 写真提供: Gettyimages

そして2020年から鹿島を率いるのが、アントニオ・カルロス・ザーゴ監督である。彼にとって鹿島での就任は、イタリアのローマと、ウクライナのシャフタール・ドネツクでのアシスタントコーチに続き、地元ブラジル外で3度目。

さらにブラジル外での初めての監督経験となる。

ザーゴ監督の就任によって、鹿島の選手たちは新しい戦術や戦略に適応しなければならない。当然ながらこのブラジル監督は、彼らが大岩監督から学んだこととは違う考えを持っている。1月28日に行われたACLプレーオフでは、メルボルン・ビクトリー(Aリーグで下位3番目、5試合連続勝利なし)相手に0-1で敗北を喫し、新監督下でチームがまとまるには、まだまだ時間がかかることが示された。

上記の試合のパフォーマンスを踏まえて、2020年鹿島が優勝争いに絡むことは難しいと考える。新監督への適応に時間がかかるだろう。しかし、このチームのクオリティを考えると、リーグが始まれば悲劇的な衰退は避けると思われる。何はともあれ鹿島には、レオ・シルバ、土居聖真、永木亮太、内田篤人らが残っており、優勝争いは難しくとも上位で争うことになるだろう。

加えて、鹿島が今年のJリーグYBCルヴァンカップで活躍することを予測する。このトーナメントではベストメンバーではなく若手選手を起用するクラブが多い。ACLプレーオフで早々に敗退した鹿島には、ルヴァンカップで活躍するチャンスがあると思われる。ノックアウトステージまでは多くのチームがベストプレイヤーを温存させる大会で、鹿島のような名門チームは少なくとも何かを引き出すだろう。

予測では鹿島がグループステージを進み、ノックアウトステージで苦戦しつつ、タイトルを獲得する。またも炎上する予測かもしれないが、皆さん、サッカーですよ?何が起きるのかはわからない。

(後記:2月16日に行われた開幕戦では名古屋に敗れてしまった)

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
松田陸 写真提供: Gettyimages

5位:セレッソ大阪

2019結果:5位/2020注目選手:奥埜博亮

大阪のピンクのチーム、セレッソは、まずまずな2019シーズンを過ごした。開幕後まもなく14位まで順位が下がったこともあったが、すぐ立ち直り残留争いに巻き込まれることもなかった。多くの時間を上位半分内で過ごし、後半には調子を上げ優勝争いにまで手をかけた。タイトルを獲得するまでの調子ではなかったが、5位と結果には満足してもいいだろう。

チームに関しては、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督お気に入りのキープレイヤー達が残り、2020年も豪華な選択肢となるだろう。目立った移籍といえば、前年優勝の横浜F・マリノスに渡ったミッドフィルダーの水沼宏太、そしてサウジアラビアのアル・イテファクに渡ったブラジル人のソウザのみだ。

重要な戦力のマテイ・ヨニッチ、松田陸、奥埜博亮、清武弘嗣、藤田直之、柿谷曜一朗がら残り、ウルグアイのデポルティーボ・マルドナドからレンタル中のブラジル人ストライカー、ブルーノ・メンデスは1シーズン契約延長となった。

2020明治安田J1リーグのランキング大胆予測(8位〜5位)
清武弘嗣 写真提供: Gettyimages

ソウザの代わりに加入したのは、ブラジルのシャペコエンセから期限付き移籍となったルーカス・ミネイロだ。ベルギー1部からも2人の才能の溢れる日本人選手がやって来て、長居陸上競技場でプレーすることとなる。シント=トロイデンから小池裕太、KASオイペンから豊川雄太だ。

両選手共に以前は鹿島アントラーズの選手であった。

比較的変更のなかったチームメンバーが揃い、C大阪は2020年も前シーズンとほぼ同じ結果になると見込んでいる。安定の上位フィニッシュで、優勝争いとはまだ行かないも、下位チームとの差を見せた戦いをするだろう。ロティーナ監督率いるチームが昨年のような開幕直後の不調に陥ることなく、2019年より力強いパフォーマンスを見せてくれることを期待しよう。

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