20億1486万9000円の赤字
J1クラブであるサガン鳥栖を運営する株式会社サガン・ドリームスが4月26日に定時株主総会を開き、20億1486万9000円を含めた2019年度決算が承認され、莫大な赤字額はJリーグ界を震撼させた。
今シーズンもサガン鳥栖は新型コロナウイルスによるリーグ戦中断やスポンサー撤退など数々の問題を抱えており、「クラブ存続の危機」を前に非常に難しいシーズンを過ごしている。
地方クラブでありながら、J1定着やフェルナンド・トーレス、フアン・イサーク・クエンカ・ロペスといった大物選手獲得など日本サッカー界に大いに貢献。
ここ1ヵ月、サガン鳥栖の経営難を各メディアは大々的に報じてきたが、他クラブの状況はどうなっているのだろうか。5月27日にJリーグが発表した2019年度のクラブの経営情報をもとに、J1クラブの「クラブ経営における成績表」をご紹介したい。
昨シーズンJ1リーグを戦った18クラブの内、1月決算の16クラブより「売上高」「入場料収入」「スポンサー収入」「人件費」「純利益」について上位5クラブを取り上げた。(3月決算の湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田は今回省いている。)なお、100万円未満は端数処理している。

売上高
どれだけの収入を得ることができたかを示す売上高だが、ヴィッセル神戸が売り上げた114億4000万円は2位の浦和レッズに圧倒的な差をつけて1位となった。昨シーズン加入したアンドレス・イニエスタの影響はJリーグのみならず、世界中でも話題を呼びクラブのプレゼンスを高めることになったのは言うまでもない。

入場料収入
どれだけスタジアムに足を運んでもらえているかを示す入場料収入だが、浦和レッズが唯一20億円突破したクラブとして1位の座を獲得した。Jリーグファンにとって埼玉スタジアム2002は一度は訪れたいスタジアムに挙げられるだろう。赤に染まる魅力的な北スタンドは選手を鼓舞するだけでなく、入場料収入にも貢献していることが分かる。

スポンサー収入
どれだけ企業に支えられているかを示すスポンサー収入だが、ヴィッセル神戸が74億500万円と大差をつけての1位となった。かつては単年度10億円以上の赤字を計上したヴィッセル神戸だが、楽天マネーによって資金は潤うようになった。しかし、当の楽天は楽天市場の送料無料問題、楽天モバイルの立ち上げ失敗、PCR検査キット問題など今年に入り何かと風当たりが強い。こうした問題がヴィッセル神戸に影響する可能性も排除できない。

人件費
クラブの経費の大部分の割合を占めることになる人件費だが、こちらもヴィッセル神戸が群を抜き1位となった。以降2位名古屋グランパス、3位浦和レッズと続くわけだが、昨シーズンのリーグテーブルを見てもお分かりの通り、人件費の増加と順位は必ずしも比例関係にないということが皮肉にも明白となった。ちなみに、昨シーズン覇者の横浜F・マリノスの26億8400万円はリーグで7番目の数字となっている。

純利益
経常利益・特別利益・損失を足し引きし、法人税や住民税を差し引いた残りの利益である純利益は、川崎フロンターレが5億6200万円で1位に躍り出た。Jリーグにおける強豪の一角であり運営も健全、まさに優良クラブである証拠と言えるだろう。また、3位には大分トリニータがランクイン。過去には経営危機を囁かれながらも、Jリーグからの融資や地元経済界にも支えられここまで這い上がることができた。

純利益(ワースト)
純利益も上位5クラブだけでなく下位5クラブについて取り上げた。前述したサガン鳥栖は大差をつけてワースト1位だが、続いてベガルタ仙台、セレッソ大阪、名古屋グランパス、そして北海道コンサドーレ札幌と続いている。営業利益では黒字を達成できたが、経常利益の赤字をまかないきれず最終赤字を計上した名古屋グランパスを除いた4クラブは営業利益でも赤字という苦しい結果となった。