2月12日に行われる、川崎フロンターレ浦和レッズの「FUJIFILM SUPER CUP」によって幕を開ける、明治安田生命J1リーグの2022シーズン。今年は冬にFIFAワールドカップ・カタール大会が行われるために前倒しのスケジュールとなっている。

そのため移籍市場の動きも早く、J1のクラブはスカッドが固まりつつある。

そこでスケジュールに負けじと、1月5日時点での各クラブの補強診断を行った。戦力の収支をA(大きくプラス)~E(大きくマイナス)の5段階で表し順位を付け、3クラブずつまとめていく。なお、以降の移籍動向についても文中に反映しているが、ランキングには反映していない。

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2022シーズン全J1クラブの補強診断&ランキング(15~13位)

15位:横浜F・マリノス

戦力収支:D

OUT
天野純(蔚山現代FC:期限付き移籍)
西山大雅(横浜FC:完全移籍)
平井駿助(ラインメール青森:期限付き移籍)
山谷侑士(横浜FC:期限付き移籍)
前田大然(セルティックFC:期限付き移籍)
杉本健勇(浦和レッズ:復帰)
南拓都(いわてグルージャ盛岡:期限付き移籍)
生駒仁(レノファ山口:完全移籍)
梶川裕嗣(ジュビロ磐田:完全移籍)
和田拓也(横浜FC:完全移籍)
山田康太(モンテディオ山形:完全移籍)
伊藤槙人(ジュビロ磐田:完全移籍)
椿直起(水戸ホーリーホック:期限付き移籍)
榊原慧悟(ラインメール青森:期限付き移籍)
松田詠太郎(アルビレックス新潟:期限付き移籍)
扇原宏(ヴィッセル神戸:完全移籍)
ティーラトン(ブリーラムユナイテッドFC:完全移籍)
原田岳(V・ファーレン長崎:完全移籍)

IN
池田航(カマタマーレ讃岐:復帰)
吉尾海夏(FC町田ゼルビア:復帰)
樺山諒乃介(モンテディオ山形:復帰)
榊原彗悟(ラインメール青森:完全移籍)
ンダウ・ターラ(FC町田ゼルビア:復帰)
小池裕太(セレッソ大阪:完全移籍)
藤田譲瑠チマ(徳島ヴォルティス:完全移籍)
西村拓真(ベガルタ仙台:完全移籍)
永戸勝也(鹿島アントラーズ:完全移籍)
オビ・パウエル・オビンナ(栃木SC:復帰)
山根陸(横浜F・マリノスユース:昇格)
西田勇祐(横浜F・マリノスユース:昇格)

一時は川崎フロンターレを追い詰め、川崎を上回るリーグ最多得点を記録したものの、終盤の失速により2位でシーズンを終えた横浜F・マリノス。打倒・川崎の一番手となり得る存在だが、昨季に比べ得点数は減る可能性が高い。

リーグ得点王かつ前線からの守備にも貢献していた、前田大然という最大の武器を失ってしまったためだ。

その他にも扇原貴宏、ティーラトンという主力、チームにアクセントを加えていた天野純らがチームを離れている。

代わりに前線に西村拓真、センターハーフに藤田譲瑠チマ、左サイドバックには永戸勝也と小池裕太を確保。実力は確かなものの、永戸を除き実績では前任者に劣ると言わざるを得ない。その他では町田ゼルビアから復帰した吉尾海夏に期待したい。セットプレーのキッカーを務めるほどの左足の精度を武器に、昨年町田で10得点を挙げた23歳は定位置を掴む可能性を秘める。

期限付き移籍先から復帰した池田航、樺山諒乃介、ンダウ・ターラ、オビ・パウエル・オビンナ。

ユースから昇格した山根陸、西田勇祐にも注目だ。

今回の移籍市場では明確な戦力アップには至っていないが、そもそも既存の戦力がリーグ屈指。続投濃厚といわれるケヴィン・マスカット監督のもと、サイドを軸とした持ち前の攻撃的サッカーの進化を図る。新たなヒーローが現れ、3年ぶりの王座に就くことはできるだろうか。

2022シーズン全J1クラブの補強診断&ランキング(15~13位)

14位:鹿島アントラーズ

戦力収支:D

OUT
町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ:期限付き移籍)
垣田裕暉(サガン鳥栖:期限付き移籍)
須藤直輝(ツエーゲン金沢:期限付き移籍)
佐々木翔悟(ジェフユナイテッド千葉:完全移籍)
白崎凌兵(清水エスパルス:完全移籍)
遠藤康(ベガルタ仙台:完全移籍)
犬飼智也(浦和レッズ:完全移籍)
永木亮太(湘南ベルマーレ:完全移籍)
レオ・シルバ(名古屋グランパス:完全移籍)
奈良竜樹(アビスパ福岡:完全移籍)
永戸勝也(横浜F・マリノス:完全移籍)
有馬幸太郎(いわきFC:完全移籍)

IN
鈴木優磨(シント=トロイデンVV:完全移籍)
中村亮太朗(ヴァンフォーレ甲府:完全移籍)
名古新太郎(湘南ベルマーレ:復帰)
樋口雄太(サガン鳥栖:完全移籍)
キム・ミンテ(コンサドーレ札幌:完全移籍)
仲間隼斗(柏レイソル:完全移籍)
小田逸稀(ジェフユナイテッド千葉:復帰)
溝口修平(鹿島アントラーズユース:昇格)

2位、3位、3位、5位、4位。ここ5年の鹿島アントラーズのリーグ戦成績は上記の通りで、2018年のAFCチャンピオンズリーグは制したものの、J1を8回制している名門としては納得がいく結果ではないだろう。

9度目の優勝のための鍵はクラブ初の欧州出身の監督、トネ・ヴァイラー氏が握っている。

ベルギーのRSCアンデルレヒトやエジプトのアル・アハリでリーグ優勝。ドイツの1.FCニュルンベルクを率いるなど国際経験豊富で実績十分な監督だが、最大の懸念材料はいつ来日できるか、という点だ。チームの下地を作るキャンプ時に監督が不在となると、同じく外国人監督を迎えたサンフレッチェ広島同様順位そのものに影響を与えることだろう。

新加入選手で最も注目が集まるのは鈴木優磨だ。下部組織から鹿島で育ち、ベルギーのシント=トロイデンVVで昨季17得点を挙げた男が古巣に戻ってきたのだから。リーグ随一の動き出しの巧みさを持つ上田綺世と共に、リーグ屈指の最前線を形成することになる。

また、センターハーフにはヴァンフォーレ甲府で2シーズンを過ごした中村亮太朗が加入。レオ・シルバや永木亮太といった選手が移籍したためかかる期待は大きい。

中盤の攻撃的なポジションにはサガン鳥栖の10番を背負い絶対的な存在だった樋口雄太、柏レイソルから加わった仲間隼斗、期限付き移籍先の湘南ベルマーレで19試合に出場した名古新太郎が加わった。中でも樋口は豊富な運動量をベースにキックの精度の高さ、思い切りの良いシュートを備えている。

そしてこれらの選手以上にチームの成績に直結する可能性があるのが、コンサドーレ札幌から加わったキム・ミンテ。昨季センターバックの主力だった犬飼智也と町田浩樹が一気にチームを離れたため、新加入ながら関川郁万らと中心を担うことになる。

移籍した左サイドバックの永戸勝也の穴を埋めうる小田逸稀、溝口修平にも期待だ。

2022シーズン全J1クラブの補強診断&ランキング(15~13位)

13位:北海道コンサドーレ札幌

戦力収支:D

OUT
中野嘉大(サガン鳥栖:完全移籍)
白井康介(京都サンガFC:完全移籍)
キム・ミンテ(鹿島アントラーズ:完全移籍)
岩崎悠人(サガン鳥栖:期限付き移籍延長)
ジェイ・ボスロイド(未定:退団)

IN
藤村怜(モンテディオ山形:復帰)
檀崎竜孔(ジェフユナイテッド千葉:復帰)
興梠慎三(浦和レッズ:期限付き移籍)
井川空(筑波大学:新加入)
田中宏武(立正大学:新加入)

2018シーズンからチームを率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督の続投が見込まれ、選手も継続路線のコンサドーレ札幌。大きな変化は見られないが、ジェイ・ボスロイドとキム・ミンテの退団はトピックだろう。

ジェイは2017年の夏に札幌に加入すると、14試合で10得点を記録。チーム得点王になるとともに残留に大きく貢献。その後も空中戦の強さを武器に、安定した活躍を見せていた。

キム・ミンテは2017年の加入から主力を担ってきたが、田中駿汰の台頭もあり徐々に出場機会を減らしていた。

そうした中での補強の目玉は、名実を併せ持つ興梠慎三だ。9年連続二桁得点というJリーグ初の記録を持っており、実績はJリーグ屈指。昨季は1得点に留まったがマークを外す動きは衰えておらず、ジェイの抜けたFWに異なる強みをもたらすはずだ。

檀崎竜孔と藤村怜という、J2で経験を積んだ2人にも注目したい。期限付き移籍先のオーストラリアのブリスベン・ロアーで活躍した檀崎は、ジェフユナイテッド千葉への期限付き移籍を経て今季改めて札幌で競争することとなった。U-15から札幌で育ちトップチームへと昇格した藤村怜は昨季モンテディオ山形へ期限付き移籍したものの、リーグ戦の出場は5試合のみ。札幌での競争は簡単なものにはならないだろうが、今季に勝負を懸ける。

大卒の2人も即戦力候補だ。井川空は札幌のU-18で戦い、筑波大学で成長し怪我を乗り越えて札幌入団を勝ち取った。立正大学から加わる田中宏武はすでに昨年のルヴァン杯で3試合に出場している。

微減という印象はあるが戦力の増減は少なく、ルーキーながら7得点を挙げた小柏剛、抜群の個のスキルで欠かせない選手となった金子拓郎など攻撃の破壊力は間違いない。課題は昨季と同じく守備面だ。主な顔ぶれは変わらないだけに、組織の熟成と個々の成長に期待することになる。