3月24日。2022FIFAワールドカップ・カタール(カタールW杯)への出場をかけたアジア最終予選、オーストラリア戦に挑んだサッカー日本代表は2-0で勝利。

1試合を残して7大会連続のW杯本大会出場を決めた。

同試合、日本は決定機を逃し続け終盤まで得点を奪えずにいたが、0-0で迎えた後半39分に三笘薫を投入した森保一監督の采配が、ピタリと的中。三笘は89分、後半アディショナルタイム4分と立て続けに得点を挙げて試合の行方を決めてみせた。これで日本は最終予選、3戦を終えて1勝2敗という絶望的なスタートからの6連勝となった。

森保監督のメンバー固定化傾向

最終予選ここまでの9試合には、様々な出来事があった。日本は序盤に出遅れ、森保監督に対する批判が集中。また固定化されたメンバー選考への疑問の声が多くのサポーターから上がり、筆者も当時、新陳代謝を願う記事を書いている。

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このメンバーの固定化は現在でも変わらず、24日に行なわれたオーストラリア戦、29日に行なわれるベトナム戦に向けても、ほぼ「いつもの面々」というべき選手が招集されている。

なぜ森保監督はあまりメンバーを代えず、ほぼ固定するのだろうか。固定化はダメだという考えを一度置き、固定化する理由を考えてみたところ、ある1つの考えが頭に浮かんだ。「森保一監督は、日本代表をクラブチーム化しようとしているのではないか」

カタールW杯出場決定の森保ジャパン「クラブチーム化」の行く末は!?

代表チームとクラブチームの違い

代表チームとクラブチームには、通常大きな違いがある。

代表チームはその国の国籍を持つ、基本的に全ての選手から監督やスタッフが選出することができる。合流してからは数日間だけ、場合によっては前日だけの練習を経て試合に臨む。予定された試合が終わるとすぐに解散となり、選手達は各所属クラブへと帰っていく。

そのため優れた選手を選べて入れ替わりも激しくなりがちだが、ゆえに連携面はクラブチームに及ばず、比較的オーソドックスな戦術を採用することが多い。

クラブチームは、当たり前だがそのチームに所属している選手で戦わねばならない。選手を入れ替える機会は基本的に年2回の移籍市場のみ。登録した30名前後の選手達で日々の練習を重ね、試合を戦うことになる。個々としては代表チームに及ばないが、連携面では上回ることが多く、個性的な戦術を採用しているチームも多い。

簡単にまとめると、代表チームは連携面に課題を抱えることが多く、クラブチームは個々の能力に課題を抱えることが多い。

カタールW杯出場決定の森保ジャパン「クラブチーム化」の行く末は!?

クラブチーム化のメリットとデメリット

森保監督はできるだけメンバーを固定することで、代表チームとクラブチームのいいとこどりを目指しているのではないだろうか。現在の日本代表をクラブチームとして見ると、納得がいく点は多い。

監督によって大きく異なる部分ではあるが、選手には序列があり、簡単には入れ替わらないことは珍しくない。スタメンを固定化することで成熟度を上げようとし、極端な例であれば練習を分けることもある。森保監督はそこまではしていないが、スタメンや招集メンバーはある程度固定しており、はっきりと序列があるように見える。

これによるメリットは、合流からわずかな期間で試合に臨むことになっても連携面での不安が少なく、クラブチームのように安定した内容の試合を披露できることだ。

一方デメリットは、選手が目には見えない序列を感じることで競争が起きにくくなり、期待以上のパフォーマンスをという発揮することが難しいということが考えられる。

最終予選の最初の数試合では、完全に後者が現れていた。

カタールW杯出場決定の森保ジャパン「クラブチーム化」の行く末は!?

過去の日本代表と、森保ジャパンへの期待

過去の日本代表を振り返ると、クラブチーム化と対極にあったのはジーコ監督下のチーム(2002-2006)だろう。選手に自由を与え、インスピレーションを発揮させることを優先。実際にアジアの舞台で強さをみせ、2005年のコンフェデレーションズカップではブラジルと2-2で引き分けるなど強豪と渡り合う試合も少なくなかった。

ただ、集大成となるべき2006年のドイツW杯では1分2敗、グループFの最下位で大会を去ることに。同大会の前年頃から、采配や選手起用の自由さが減少するなどブレてしまったことも要因だが、日本代表は自由を与えるやり方が上手くいかなかった経験を持つ。

その点、森保監督は批判を浴びながらもブレることなく、現在までクラブチーム化に思える試みを続けている。オーストラリア戦の翌日、森保監督は「ワールドカップでベスト8以上の成績を収めたい」と目標を語っており、もし実際にW杯本大会でベスト8以上に進出できれば批判の全てはひっくり返る。圧倒的な称賛へと生まれ変わる。

日本代表は、W杯にてベスト16までは3度(2002、2010、2018)進出している。中でも前回ロシア大会は、強豪ベルギーを相手にあと一歩まで迫った(2-3で敗退)。予選で苦しんだ森保ジャパンが、4度目の正直なるか。

クラブチーム化は結果に繋がるのか、注目したい。

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