10月29日に行われた明治安田生命J1リーグ第33節。優勝がかかる1位の横浜F・マリノスは、FWアンデルソン・ロペスとFWエウベルがそれぞれ2得点を挙げ、意地を見せる8位の浦和レッズ相手に4-1で完勝した。
同日には、2位の川崎フロンターレもヴィッセル神戸(12位)相手に2-1で勝利し、横浜FMとの勝ち点差は2のまま、優勝争いは最終節(11月5日)まで持ち越しとなっている。最終節、横浜FMは神戸と、川崎はFC東京(6位)と対戦予定だ。
ここでは第33節の横浜FMと浦和の試合を振り返り、注目ポイントを確認しよう。

横浜FMの推進力が生んだ先制点
この試合、横浜FMは前への推進力が非常に強かった。ディフェンス陣も圧力が強く、浦和がペナルティーエリア内に容易に侵入することができていなかった。そんな前への推進力が生んだ先制点は17分。
ビルドアップから、横浜FMのアンデルソン・ロペスへと縦ボールが入る。ロペスが①の位置から下がることで、元々いた①のスペースはがら空き状態となる。ロペスはボールをワンタッチで渡辺皓太へパス。ここから一度もスピードを落とさず、浦和陣地へ侵入していく。

渡辺が前にボールを運ぶのにあわせて、逆サイドからエウベル、センターからは西村拓真、右サイドを水沼宏太が猛然とスプリントを仕掛ける。この鬼神迫る迫力が横浜FMの攻撃の神髄である。結果として、水沼のシュートがリフレクトし、エウベルが決めた形となったが、前への迫力で奪った先制点であった。

浦和はノーチャンスだったか?
決して浦和にもチャンスがなかったわけではない。5分の松尾佑介のカットインからのシュートは得点を予感させるシュートであった。しかし開始15分以降、横浜FMの圧力に負けて引いてしまった感が否めない。キャスパー・ユンカーと江坂任のペナルティーエリアへの侵入は効果的であったが、決め切ることができず、攻撃の流れが生まれなかった。
苦しい時間帯が続いていたディフェンス陣だが、GK西川周作のプレーは今年1番の出来と言えよう。特に64分のヘディングを防いだシーン。右へステップを踏みながらも、逆方向のシュートに対して反応。ボールをはじく方向も相手にセカンドチャンスを与えないために、ライン外に出す完璧なセービング。熟練されたプレーであった。

MVPは西村とロペスに
同試合のMVPは、横浜FMのダイナモ(運動量豊富に貢献する選手)西村拓真とアンデルソン・ロペスである。もちろん、横浜FMの全選手がMVP級の活躍をしたことは言うまでもない。そのなかでも2名を選出させていただく。
まず、西村。ピッチを縦横無尽に走る走力で横浜FMの迫力の原動力となった。
続いて、ロペス。非常に勤勉なストライカーである。それは39分のシーンが象徴している。高丘陽平からのフィードをコーナーフラッグめがけて猛烈にランをし、ボールをしっかりマイボールにする。ここでボールを収めてくれることで攻撃に厚みが出てくる。こうした1つ1つのプレーを大事にできるストライカーがいるチームが強い。また、37分と65分のゴールもこぼれ球に対し、1番最初に反応してことによって生まれたゴールである。この2ゴールは準備をし続けたストライカーへのギフトだ。勤勉さこそ、ロペスの強みである。

この街にシャーレを、この街に頂点を
試合後、印象的なシーンがあった。怪我で長期離脱中のFW宮市亮に対し、サポーターが「トリコロールの宮市亮・再びピッチで輝け・待ってるぞ」の横断幕で宮市を迎え入れたのだ。宮市の音頭と共にチャントの1つである「この街にシャーレを、この街に頂点を」が歌われた。
2022シーズンJ1リーグは残り1試合。横浜FMがシャーレとこの歌でフィナーレを迎えることができるか。