2022シーズンの明治安田生命J1リーグは、清水エスパルスとジュビロ磐田の静岡勢W降格で幕を閉じた。サッカー王国と呼ばれるほど日本でも屈指のサッカーが盛んな地域を牽引した2クラブだが、近年の成績はいずれも思わしくない。
昨2022シーズンのJ2リーグを見ても、J1昇格は実力や実績のあるクラブでも難しいことは明らかだ。レギュレーションの都合上、前年にJ1を戦った降格4チームを加えてスタートしたシーズンだったが、終わってみれば1年で復帰を果たしたのは横浜FCのみ。残る1枠をアルビレックス新潟に奪われ、3チーム(ベガルタ仙台、徳島ヴォルティス、大分トリニータ)は降格後2シーズン目を迎える結果となっている。
しかし、そんな一筋縄ではいかないJ2リーグの歴史の中でも、圧倒的な戦力や選手層を誇りJ2環境を“荒らした”チームも存在する。ここでは、再び名門復権のため1年でのJ1復帰を狙う清水、磐田のJ2での戦いが始まる前に、過去にJ2を圧倒した5クラブを紹介していく。

2004シーズン:川崎フロンターレ
1試合平均2.36という得点力
今でこそJリーグでも屈指の強豪クラブへと成長した川崎フロンターレだが、2000年の降格から4シーズンの間J2での過酷な昇格争いに巻き込まれている。当時の川崎には、MF鬼木達(現監督)や、現役生活のすべてを川崎に捧げたバンディエラMF中村憲剛(2020年引退)がまだまだ2年目の若手として在籍していた。
見事J1への再昇格を果たした2004シーズン。圧巻だったのは何といってもその高い攻撃力だ。特に1人で37得点を挙げ、この年のJ2得点王となったFWジュニーニョ(2013年引退)の活躍は大きなものだった。クラブ単位で見ても、44試合で104得点と歴代J2で最多の得点数を上げている。試合数の違いから他の年度と単純比較はできないまでも、1試合平均2.36という得点力は驚異的だったと言わざるを得ない。

2008シーズン:サンフレッチェ広島
J2史上初の全節首位
2007年のサンフレッチェ広島は、天皇杯では準優勝と好成績を残しながら、リーグでは入れ替え戦の末クラブ史上2度目のJ2降格を味わった。しかし、迎えたJ2での2008シーズンは、Jリーグでも屈指の名将ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現北海道コンサドーレ札幌)が留任。選手層を見ても、日本代表で活躍したFW佐藤寿人(2020年引退)やDF槙野智章(2022年引退)、MF戸田和幸(次2023シーズンよりSC相模原の監督就任)など圧倒的な戦力を誇った。
リーグ戦開幕前には、J2クラブとして初めてゼロックス・スーパーカップで優勝。リーグ戦開幕後も勢いは衰えず、J2史上初となる全節首位での優勝を成し遂げた。

2013シーズン:ガンバ大阪
代表経験豊富な選手層
元日本代表のMF遠藤保仁(現ジュビロ磐田)やMF今野泰幸(現南葛SC)らを筆頭に、J1の中でも高い戦力を有しながら、2012シーズン17位とまさかのクラブ史上初となるJ2降格を味わったガンバ大阪。だが、主力選手の大半がチームに残留。長谷川健太監督(現名古屋グランパス)のもと、1年でのJ1復帰を果たしている。
勝ち点だけ見れば、2位となったヴィッセル神戸との差はわずかに「4」だった。しかし、特筆すべきはやはりその戦力だ。遠藤、今野に加え、MF二川孝弘(現FCティアモ枚方監督)、DF加地亮(2017年引退)、MF明神智和(2019年引退)といった代表経験も豊富な選手たちがJ2の舞台に揃うことは、この先も滅多に見られない光景だったと言えるだろう。

2014シーズン:湘南ベルマーレ
開幕から14連勝の快進撃
J1ではなかなか1桁順位が遠い湘南ベルマーレ。しかし、J2では2014シーズンに開幕から14連勝の快進撃を記録。最終的には42試合中31勝、敗戦もわずかに「3」と圧倒的な勝率でJ2優勝を果たしている。
堅守を誇ったDFラインには、今や代表でも欠かせないデュエル王MF遠藤航(現シュトゥットガルト)に加え、現在はJ1名古屋グランパスで活躍するDF丸山祐市。

2019シーズン:柏レイソル
マイケル・オルンガの存在
柏レイソルといえば2010シーズンにもJ2で優勝を果たし、その際わずか2敗という好成績を残した勢いそのままに、次2011シーズンにはJ1優勝をも成し遂げたことでも知られる。だが、柏のファン、サポーターのみならずJリーグファンにとってより衝撃的だったのは2019シーズンではないだろうか。
理由は何といってもFWマイケル・オルンガ(現アル・ドゥハイル)の存在だ。前年の2018シーズン途中に柏に加入したオルンガは、チームに残ると2度のハットトリックを達成するなどJ1復帰に大きく貢献。特に最終節の京都戦では、1人で1試合8得点を挙げJリーグにおける1試合最多得点記録の保持者となっている。
この高い得点力と圧倒的な身体能力を見せつけたオルンガの存在は、次シーズンに向けJ1各クラブにとっても脅威的であったことは間違いない。それほどまでにJリーグ全体から見ても、柏の2019年はインパクトのあるシーズンとなったと言える。