毎年3月8日は「国際女性デー」と国際連合(UN)に定められており、公式な祝日扱いにしている国もあれば、女性のみ祝日とする国も存在する。国連によると、国や民族、言語、文化、経済、政治の壁に関係なく、女性が達成してきた成果を認識する日だ

今年のこの日、日本のサッカー業界でも女子サッカーをテーマにいくつかのイベントが開催された。そこから見えてきた現在女子サッカー界で行われている取り組みや、課題とは何なのか?ご紹介していこう。

「国際女性デー」を通じて見えた!女子サッカーの盛り上がりと課題

女子サッカー繁栄のために重要なこと

日本国内だけに焦点を当てて女子サッカーの立ち位置について考えてみると、やはりまだ男子サッカーの背後に埋もれ、その良さが開花しきれていない状況だ。例えば、世間のワールドカップ(W杯)開幕までの過程における盛り上がり具合や、WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)に関連するネット上の反応などを見ていると、人々は女子サッカーに対し本腰を入れて興味を持つ「手前の段階」のように感じる。

一方で、2022年頃からいくつかのメディアでは、少しずつ女子サッカーの特集やイベント開催などの取り組みが行われ、目にみえる変化も感じられる。実例の1つとしては、この3月女性ファッション誌『SPUR(シュプール)』(集英社発行)が女子サッカーをフルカラー全7ページで特集を組むなどしており、スポーツに留まらずファッションの領域でも取り上げられるようになってきている。

メディア業務の1つである「普及させること」だが、今後の女子サッカー繁栄のためには、メディアに限らずサポーターや選手自身、そして育成・教育機関など、様々な業界との連携が重要となってくるだろう。

次に具体例を挙げていこう。

「国際女性デー」を通じて見えた!女子サッカーの盛り上がりと課題

大人気!JFA&ディズニーのプロジェクト

国際女性デーに併せて3月8日に開催された「JFA女子サッカーデー・トークイベント」では、元サッカー日本女子代表監督(2008-2016)であり、日本サッカー協会(JFA)女子委員長を務める佐々木則夫氏が、女子サッカー普及の為の話題の取り組みを紹介した。

JFAとウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社による女子サッカー応援プロジェクト「JFA Magical Field Inspired by Disney」の一環として行われている「ファミリーサッカーフェスティバル “First Touch”」である。これは小学生のサッカー未経験者を対象とした、保護者と一緒にスタジアムでサッカーを楽しむというイベントで、JFAと全国各開催地の都道府県サッカー協会が主催し開催中。大人気のため応募が殺到しているという。

一見、普通のサッカー体験イベントに思えるが、ディズニーのヒロイン達がデザインされたフォトブースがスタジアムの内外に点在し、サッカーとディズニーが見事に融合された独自の世界観が完成されているそうだ。当初は8回の開催からスタートしたが、現在では25回以上の開催にも上るという。

また、このプロジェクトのキャプテンを務めるのは元なでしこジャパン(1993-2015)の澤穂希氏。開催地の大学生や高校生などと共に、全国のいくつかの会場で子供達をサポートしているそうだ。

この、未だかつて無かった斬新なプロジェクトのポイントは、未経験の子供達が対象という部分だと筆者は考える。ディズニーとのコラボによってこれまで触れてこなかった層の興味も広く惹きつけ、まだ見ぬ才能を後押しするきっかけにもなり得るだろうし、そして何より本格的な場所で実際にボールを蹴ることができるということで、純粋に子供達にサッカーの楽しさを感じてもらえるのは、最大の利点だ。

「国際女性デー」を通じて見えた!女子サッカーの盛り上がりと課題

海外女子選手のロールモデル化も参考に

女子サッカーの普及には海外国の成功例も参考になるだろう。イングランドやアメリカは女子サッカーの強豪国として知られている他に、女子サッカーの認知度も高く、人気スポーツとしてランキング入りしているほどだ。

その背景の1つに、選手個人がインフルエンサーとして、いわゆる周囲のロールモデルの役割も果たしていることがある。

例えば、女子サッカー界のレジェンドといえば、元イングランド代表(2006-2022)MFジル・スコット(2022年8月引退)が挙げられる。FA女子スーパーリーグでは、エバートン(2006–2013、2021)、マンチェスター・シティ(2013–2020)、アストン・ビラ(2022)などで活躍した。2020年に女子サッカーの普及に貢献したとしてイギリスから大英帝国勲章(MBE)を授与されている。

スコットは、代表では161試合出場27ゴールの記録を残し、最多出場選手第2位にランクされているほど優秀だった一方で、現役時代から自身のSNSを活用し様々な選手との触れ合いや、ピッチの裏側なども寛容な姿勢で公開してきた。その社交性の高さからイギリスで大人気のTV番組やラジオなどにも多数出演し、老若男女問わずにファンは非常に多く、その中には同国のウィリアム王子の存在も知られる。

選手としての活躍はもちろんだが、それ以外にもSNSなどを活用して世間との壁を破り、1人の人間としても周囲との関係構築に成功したと言える。

この様なSNSを活用した女子サッカーの普及方法について、JFA女子サッカーデー・トークイベントに参加していた元日本代表(2006-2013)MFであり、川崎フロンターレ(2003-2022)一筋で活躍した中村憲剛氏は「プレーをしている姿も含め、ピッチ外のオフの姿などをファンの皆はより見たいだろうし、なのでSNSを活用して普及するのは良い方法だと思う。その場合は、続けていくのが重要だと感じる」と語った。

日本国内でも、女子選手たちがロールモデルとして如何に人々を感化させていけるか。これは女子サッカー普及のためのポイントの1つとなりそうだ。世間の目線が女子サッカー選手へと集まる日を大いに期待したい!