イングランド1部プレミアリーグで活躍中の選手達は、子供時代にどんなことをきっかけにサッカーの道を歩むことになったのだろうか。また時代と共に、そのきっかけや背景に変化はあるだろうか。

ここでは2000年・2001年生まれの3名のイングランド代表選手の子供時代のエピソードを紹介しよう。MFフィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)、MFブカヨ・サカ(アーセナル)、MFジェイドン・サンチョ(マンチェスター・ユナイテッド)である。

【プレミアリーグ】フォーデン、サンチョ、サカの子供時代のエピソード

2000年前後は背景が大きく異なる?

プレミアリーグの創設は1992年。フォーデン、サカ、サンチョらが生まれた時には既にリーグが存在し、各クラブの育成プログラムなどもある程度整っていた。元イングランド代表には、MFデビッド・ベッカム(1992-2013)、MFスティーブン・ジェラード(1999-2014)、FWウェイン・ルーニー(2000-2018)など確固たる名選手の存在も既にあった。生活環境の中に自然とサッカーを意識する要素が息づいていたと考えられる。

余談となるが、1970年代生まれのイングランド代表サポーターの1人によると、イギリスでは公立学校出身者はサッカーに興味を持ち、私立学校出身者はラグビーまたはクリケットを選ぶ傾向があったという。もちろん100%とは言い切れないが、サッカーは好きではないがラグビーは好きだという人は、私立学校を卒業している割合が高いそうだ。公立学校はおおよそ都市部に建てられていて、私立学校は都市部から離れていることから、サッカーはある意味「都市文化」の1つとされてきた。

また、プレミアリーグ創設年以前のイングランドでは、試合後の面白い恒例儀式があったという話も。試合後に選手達が挨拶周りで観客席へと近づくタイミングで、サポーターがチョコレートバーや、時折ソーセージパンなどをピッチに放り投げる。選手達はそれらを拾い上げ、試合に勝っても負けても笑顔で食べるという、イギリスらしいシュールなパフォーマンスが存在したそうだ。今では貴重な「ジョークが許された時代」であった。

そんな時代の移り変わりも感じつつ、では3選手の子供時代を見てみよう。

【プレミアリーグ】フォーデン、サンチョ、サカの子供時代のエピソード

フィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)

シティのボールボーイの仕事がお気に入り

2000年にマンチェスターに生まれ、現在マンチェスター・シティに所属するイングランド代表MFフィル・フォーデン。両親はシティの大ファンであり、幼い頃からサッカーに関する影響を受けて育った背景がある。

わずか4歳の時にシティのアカデミーに参加し、初めてエティハド・スタジアムのピッチに降り立ったそうだ。スタジアムでは家族と、いつもホットチョコレートとポテトフライを買って食べながら、試合のことなどを語り合った思い出があるという。当時の楽しかった日々を思い出すと少し寂しいとも語っている。

また、8歳からシティのユースチームに所属し、ボールボーイを務めていたことも知られるフォーデン。FWセルヒオ・アグエロ(2021年引退)を含む、当時の選手達と同じピッチに立つ。その時のことはしっかりと覚えているようで、仕事が終わったら何を食べようかなという妄想をしていたことも明かしている。憧れの選手達を近距離且つウォーミングアップの段階から見学することができるというのは、本当に嬉しかったそうだ。ボールボーイには年齢制限があるが、フォーデンにとってお気に入りの仕事だったため、このまま役目を続けさせてもらえないかとクラブへ頼んでいたという。

【プレミアリーグ】フォーデン、サンチョ、サカの子供時代のエピソード

ブカヨ・サカ(アーセナル)

自宅の柵をゴールに見立てて破壊超えからスタートした道

2001年にロンドンに生まれ、現在アーセナルに所属するイングランド代表MFブカヨ・サカ。フォーデンの環境と同様、サカの両親もまた大のアーセナルファンだったようだ。2人兄弟の弟である。

3歳の時に自宅裏の広場で父と兄と3人でサッカーボールに触れ始めるサカ。自宅を取り囲む柵をゴールに見立てて、シュートをしていたそうだ。幼いながらも徐々にボールに慣れていったサカは、最終的には柵を破壊するほどのゴールを決めた。この出来事をきっかけに父親は「遂にその時が来たか」と感じ、本格的なサッカーチームに加入させたという。

最初に所属したのはロンドンを拠点とするグリーンフォード・セルティック。在籍中には、チェルシー、トッテナム・ホットスパー、ワトフォード(EFLチャンピオンシップ)などからラブコールがあったそうだが、サカはアーセナルファンということもあり、希望のスカウトが来るまでは移籍することなく各試合で自身をアピールし続けた。そして2008年のある日、父親を介して夢にまで見たアーセナルのアカデミーに加入。キャリアをスタートさせている。

【プレミアリーグ】フォーデン、サンチョ、サカの子供時代のエピソード

ジェイドン・サンチョ(マンチェスター・ユナイテッド)

家族と友人に見守られた日々

2000年にロンドンに生まれ、現在はマンチェスター・ユナイテッドに所属するイングランド代表MFジェイドン・サンチョ。子供の頃はプロになるという意識も特別なく、近所の公園で単純に遊びとしてのサッカーを楽しんでいたという。

幼い頃から友人が多かったサンチョは、学校が終わった後にいつも仲良しの友達数人とグループを組んで、夜遅くまでサッカーに明け暮れていた。「この時に過ごした時間は一度も忘れたことはない」と現地メディアのインタビューで語っている。

人生のキーパーソンとなったのは家族や友人たち。特に家族とはサッカーの試合などについて話をし、次第にプロサッカー選手という言葉を意識するようになった。

サンチョが当時暮らしていた場所の治安はあまり良いものとは言えず、「家族の助言などからサッカーに集中できた事で、ある意味周囲の悪影響を受けずに済んだからこそ、現在の自分がある」としている。プロとなった今はとても幸せを感じているし、やはり何より家族や友人に本当に感謝しているそうだ。

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