2023明治安田生命J1リーグ第9節の全9試合が4月22日と23日に行われ、湘南ベルマーレは23日、敵地の豊田スタジアムで名古屋グランパスと対戦。最終スコア2-2で引き分けた。

2点のビハインドから驚異の追い上げを見せたものの、直近のリーグ戦3試合連続ドローと、上昇気流に乗りきれない現11位の湘南。ここでは名古屋戦を振り返るとともに、同クラブが試合を掌握しきれなかった原因について解説する。

【J1リーグ2023】湘南が名古屋戦でぶち当たった壁。遅攻停滞の原因は

名古屋vs湘南:試合展開

名古屋のコンパクトな守備隊形に手を焼いた湘南は、自陣後方からのパス回しがままならず。

前半41分、DF大岩一貴からMF山田直輝への縦パスを名古屋のMF米本拓司に狙われ、湘南がボールを失う。ここから名古屋の速攻が始まると、FW永井謙佑の左サイドからのクロスにFWキャスパー・ユンカーがヘディングで反応。このシュートを湘南のGKソン・ボムグンが防いだものの、DF杉岡大暉がクリアしきれなかったボールを名古屋のDF森下龍矢に押し込まれ、アウェイチームが先制点を奪われた。

後半開始直後も試合を掌握しきれなかった湘南は、同5分に相手のコーナーキックから失点。

この場面では、ペナルティアークの後方からペナルティエリアへ走り込んだ名古屋のMF稲垣祥をフリーにしてしまい、同選手によるアシストを許す羽目に。稲垣の頭でのパスに反応したDF中谷進之介にヘディングシュートを放たれ、湘南のビハインドが2点に広がった。

【J1リーグ2023】湘南が名古屋戦でぶち当たった壁。遅攻停滞の原因は

湘南は苦境に陥りながらも、リードを広げた名古屋が自陣にこもり始めたため、徐々に攻撃のリズムを掴む。

後半10分、途中出場の湘南DF畑大雅のクロスのこぼれ球にMF奥野耕平が反応し、ペナルティエリアへパスを送る。このボールをFW町野修斗が見送ると、ペナルティエリア右隅に立っていた山田がキックフェイントで名古屋の守備陣をかわし、左足を振り抜く。このシュートがゴールマウスに吸い込まれた。

後半29分には、山田が敵陣ペナルティエリア内の密集に走り込み、名古屋のDF中谷と交錯。この直後に名古屋のFWマテウス・カストロのミドルシュートが湘南のゴールに吸い込まれたが、ビデオアシスタントレフェリーの介入を経て、岡部拓人主審によるオンフィールドレビューが実施される。中谷の山田に対する接触が反則とみなされ、湘南にPKが与えられた。キッカーの町野がこのチャンスを物にし、試合はこのまま幕引きとなっている。

【J1リーグ2023】湘南が名古屋戦でぶち当たった壁。遅攻停滞の原因は

湘南の攻撃面の課題とは

この日も[3-1-4-2]の基本布陣で臨んだ湘南は、杉岡、大岩、DF舘幸希の3センターバックを起点に名古屋の守備ブロックの攻略を試みたものの、これが思い通りに運ばず。名古屋の前線からの守備によってパスワークをサイドへ誘導させられ、湘南のDF石原広教とMF中野嘉大(両ウイングバック)が厳しいプレッシャーに晒されたほか、強引な縦パスをホームチームに奪われる場面が多かった。

湘南の中央突破がままならなかった原因は、中盤の底を務めた奥野、MF平岡大陽とFWタリク(前半39分より山田)の2インサイドハーフが、名古屋の選手の真後ろに立ち続けたことだろう。

基本布陣[3-4-2-1]の名古屋の1トップ、ユンカーの真後ろに奥野、永井とマテウスの背後にタリク(山田)と平岡が常に立っていたため、杉岡、大岩、舘としてはそこにパスを出しづらい状況だった。

これを改善するために必要だったのは、奥野、タリク(山田)、平岡がユンカー、永井、マテウスの斜め後ろに立ち、パスコースを作ること。3センターバックがボールを止め、顔を上げた瞬間にアンカー(中盤の底の選手)と2インサイドハーフが相手選手の斜め後ろに移動し、パスを受ける。この動きが得意なMF小野瀬康介の欠場も、湘南にとっては痛手だった。

【J1リーグ2023】湘南が名古屋戦でぶち当たった壁。遅攻停滞の原因は

「前半に関しては外ばかり」と山口監督

湘南の山口智監督は、名古屋戦終了後に自軍のパスワークについて言及。効果的な縦パスが少なかったことを改善点として挙げている。

「前半に関しては外(へのパス)ばかりで、ただそれが何のためかというところは少し薄かったのかなと思います。横パスの揺さぶりのなかでいつ縦にスイッチを入れるのかというのは、前半の終わりくらいから少し良くなって、ハーフタイムにも伝えてよりゴールに向かえたのかなと感じました。やはりボールを握って(保持して)どう崩していくのかというのは簡単ではないですし、速く攻められるところと攻められないところの状況判断というのはもちろん難しいところではある。もちろん課題もありますけど選手はよく相手を見ながらボールを動かそうとしていましたし、そのなかで一番大事なゴールへ向かうというところが大きな課題として残ったのかなと。それは闇雲に突っ込むということではなくて、その横パス一つもそうですしバックパス一つもそうです。何のためにそれをやるのかというところは相手がいることなので、もっともっと自分自身が振り返って共有できればと思っています」(湘南ベルマーレの公式ホームページより引用。

一部加筆・補正)

相手選手の斜め後ろに立ち、パスコースを作る動きが得意なMF永木亮太が投入された名古屋戦の後半21分以降は、湘南のパスワークが安定している。小野瀬や永木頼みの遅攻からの脱却が、今の湘南には必要だ。