5月26日、明治安田生命J1リーグ、J2リーグ、J3リーグ計56クラブの昨2022年度決算情報が発表された(7月発表予定の柏レイソル湘南ベルマーレを除く)。サッカーは予算で戦うわけではないが、資金が少なくては運営が厳しいこともまた事実。

ここではそのデータを読み解き、Jリーグでの優勝争いや昇格争いに加わるためにはいくら必要なのか、また、売上高の急成長で今後が楽しみなクラブの傾向をまとめてみよう。

Jリーグ優勝&昇格争いには何億円必要?2022年度クラブ決算情報を読み解く!

J1リーグ:優勝争いに加わるにはいくら必要?

2022シーズンのJ1リーグは、横浜F・マリノスの優勝で幕を閉じた。同クラブの2022年度売上高はリーグ3位の約65億円。これは前年度と比較すると12億円以上も上積みした数字である。それに伴いトップチーム人件費(以下、人件費)も前年度より約9億円増額の約34億円(リーグ2位)。選手補強や既存戦力の維持などが実った優勝だったといえる。

一方、前年王者ながら、惜しくも2022シーズン2位で連覇を逃した川崎フロンターレ。同年度人件費は約4億円下がり約30億円(リーグ3位)となっている。2021年度と2022年度を比較すると、横浜と川崎では人件費の順位が入れ替わっており、この差が順位に現れたとも考えられる。ちなみに、両年度とも人件費の1位はヴィッセル神戸。おそらく2023年度も1位であろうことを考えると、今シーズン現時点首位に立っていることも納得である。

2022シーズン3位のサンフレッチェ広島は、売上高が約40億円、人件費は約23億円でリーグ9位。広島は他クラブと比べて下部組織からの育成や新卒選手の発掘に長けており、人件費を抑制できていると考えられることから「広島の人件費が優勝争いに加わるための最低ライン」という見方もできるのではないだろうか。

一方、2022年度は16クラブ中12クラブで売上高が増加しており、今後もこのラインは上昇する可能性が高い。

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J2リーグ:昇格争いに加わるにはいくら必要?

2022シーズンのJ2リーグは、アルビレックス新潟が優勝し、横浜FCが2位でJ1昇格を達成した。新潟は同年度売上高約25億円(リーグ5位)に対し人件費は約7.5億円(リーグ8位)。横浜は売上高約29億円、人件費約17.5億円で共にJ2トップの金額であった。

リーグ3位の成績だったファジアーノ岡山は売上高約19億円、人件費は約5.8億円(リーグ12位)。今季自動昇格圏にも付ける東京ヴェルディは、2022年度の人件費が4.9億円(リーグ13位)。大きな上下動がないとすると、昇格圏(自動昇格上位2クラブ)を争うには「人件費約5億円」が1つの目安になるのではないだろうか。

一方、リーグ4位で昇格プレーオフへ進出しあと一歩で昇格を逃したロアッソ熊本は、売上高約10億円、人件費約3億円。J3から昇格したばかりだったこともあり、人件費はJ2全22クラブ中21位の額だった。

J1同様、全体の売上高は上昇傾向にあるJ2。売上高約10億円以上のクラブであればJ1昇格プレーオフ圏の可能性が十分にありそうだ。補強や監督次第では、J1優勝争いに比べ多くのクラブにチャンスがあると言える。一方、売上高や人件費が上位にも関わらず成績は下位に沈んでいる例も複数あり、J1以上に予想が難しいとも言えるだろう。

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J3リーグ:昇格争いに加わるにはいくら必要?

2022シーズンのJ3リーグは、いわきFCが優勝、藤枝MYFCが2位でJ2昇格を達成した。いわきは売上高7.7億円、人件費約1.9億円(リーグ10位)。藤枝は売上高約4億円、人件費は約2億円(リーグ9位)だった。

前述2クラブと勝ち点1差で3位となった鹿児島ユナイテッドは、売上高約7.5億円、人件費約2.3億円(リーグ8位)。同じく勝ち点1差で4位だった松本山雅は、リーグトップの売上高約15億円と人件費約5億円だった。

2021シーズンには、当時人件費1億円未満(約0.9億円)のテゲバジャーロ宮崎が優勝争いに加わっていた(結果3位)。J3では、人件費約1億円で「昇格の可能性あり」、約2億円で「昇格圏内」と言えそうだ。

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売上高が急成長しているクラブ

最後に、2021年度と2022年度を比較して、最も売上高が成長しているクラブをみていこう。

トップだったのはFC琉球。約6.4億円から約16億円へ149%増という驚異の成長をみせている。ただし、2022シーズンの成績はJ2で21位と低迷。2023シーズンは舞台をJ3へ移しており、クラブの売上成長が必ずしもチーム成績に繋がらないということが分かる。

2位はロアッソ熊本。

2021シーズンJ3からJ2へと昇格し、5.5億円だった売上も約9.8億円と78%増の成長を遂げている。こちらは2022シーズンJ1昇格まであと一歩と迫っており(4位)、結果に繋がった例だと言える。

3位は京都サンガ。2021シーズンJ2からJ1へと昇格したこともあり、約22億円から約33億円へと49%増の成長をみせている。また2022シーズンはJ1参入プレーオフで熊本と激闘の末にJ1残留を達成しており、一定の成果に繋がっている。

後に続く、アビスパ福岡、町田ゼルビア、ガイナーレ鳥取ベガルタ仙台は、それぞれ25%増を超える成長をみせている。今シーズン現時点J1で中位に位置する福岡、J2で首位につける町田などが有識者の予想を上回る結果を残していることも納得である。

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