AFCチャンピオンズリーグ(ACL)2023/24のグループステージ第3節が10月24日に行われ、ホームの浦和レッズが浦項スティーラーズ(韓国)に0-2で敗れた。
これにより、グループJ首位の浦項と浦和の勝ち点差が5に拡大。
この試合で浦和が完敗を喫した原因は何か。浦和のマチェイ・スコルジャ監督やMF小泉佳穂の試合後コメントを紹介しながら、この点について論評する。

停滞した浦和のパス回し
キックオフから一進一退の攻防が続き、基本布陣[4-2-3-1]の浦和は遅攻と速攻を使い分けながら浦項の出方を窺う。ホームチームはマリウス・ホイブラーテンと岩波拓也の両DFを起点にパスを繋ごうとしたものの、この2センターバックと攻め上がった両サイドバック(大畑歩夢と荻原拓也の両DF)の距離が開きすぎる場面が散見された。
MF伊藤敦樹(2ボランチの一角)が岩波と荻原の間へ降り、サイドへのパスルートを作ろうとしていたが、ここにタイミング良くボールが来ない場面も。この伊藤の動きと、荻原が攻め上がるタイミングが合わないシーンもあり、両者が適切な距離感を掴めないまま時間が過ぎていった。
攻撃時に両サイドバックが自陣のタッチライン際且つ相手のサイドハーフの手前に立ってしまう場面があったことも、浦和のパスワーク停滞の原因に。浦項としては守りやすかっただろう。

痛恨の守備エラーで失点
浦項がボールを保持し始めたなかで迎えた前半22分、浦和のFW髙橋利樹(右サイドハーフ)が相手GKファン・インジェや逆サイドの相手DFにプレスをかけたものの、ボールを奪えず。髙橋が明け渡した右サイドに立っていたDFパク・スンウクに、GKファンのロングパスが到達すると、ここから浦項のサイド攻撃が始まる。FWキム・スンデの左サイドからのクロスにFWチョン・ジェヒが右足で合わせ、先制ゴールを挙げた。
前半3分にも、ハイプレスに加わった髙橋が自身の背後を相手DFパク・スンウクに突かれており、相手GKファンから同DFへのロングパスが繋がってしまっている。チーム全体としての連動性に欠けるプレスが災いし、浦和が痛恨の失点を喫した。

「まず、行き過ぎちゃいけない」
浦和のスコルジャ監督とMF小泉は、試合後の質疑応答や囲み取材で1失点目の場面を振り返っている。やはり、チーム全体としてのプレスの連動性に問題があったようだ。
ー髙橋選手を起点とするハイプレスによって空いたスペースが、1失点目につながってしまったと思います。本来はどのように守りたかったのでしょうか。また、あの場面で行われた守備は、準備してきた通りだったのでしょうか。
スコルジャ監督:今日はハイプレスが効果的でない場面もありました。(1失点目は)うまくいかなかった場面のひとつだと思います。相手のアーリークロスがあるのは分かっていましたが、この場面では相手の速いプレー(速攻)に対応することができなかったと思います。
ー1失点目の場面における、チーム全体の守備はどうでしたか。
小泉:まず、(ハイプレスに)行き過ぎちゃいけない。(サイドを)空けて行くような場面だったのかなというのもありますし、(ハイプレスに)行くのであれば後ろの選手が(前に)スライドしていないといけない。そのどちらかだったと思います。
髙橋の後方に構えていた右サイドバックの荻原は、対面のキム・スンデの存在を気にしてか前方へスライドできず。

浦項の堅守を崩せず
後半4分、途中出場の浦和MF中島翔哉が敵陣右サイドでボールを失うと、ホームチームがまたも浦項の速攻に晒される。攻め上がっていた左サイドバックの大畑の背後を浦項FWキム・インソンに突かれると、同選手のグラウンダーパスに反応したMFコ・ヨンジュンに追加点を奪われた。
その後浦項が自陣に引きこもったことで、浦和はボールを保持できたものの、[4-2-3-1]の基本布陣から[5-3-2]や[6-2-2]の守備隊形へ移行する浦項に手を焼く。相手最終ラインの背後をシンプルに狙うパスやサイドからのクロスは数多く見られたが、[5-3-2]の3MF、及び[6-2-2]の2人の中盤を横に揺さぶるためのパスが少なかった。

「同じ言語を話していなかった」
試合後の記者会見で、自軍のビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)について質問されたスコルジャ監督は、前線の選手の動き出しや連係を反省点として挙げている。
-ビルドアップのときに相手の2トップに対し、後ろに3人いて岩波選手とホイブラーテン選手(2センターバック)を開かせていました。彼らがボールを持ったときに前(前線の選手)がみんな(相手に)捕まっている状態で、彼らもなかなかドリブルで運べず詰まっていました。そこの担当を別の選手にするなどの打開策はあったのでしょうか。
「浦項を分析したときに、そこは心配になったポイントのひとつでした。相手はディフェンスラインがフラットになって守備をするというチームですので、前線の動きの連係がなければギャップ(相手の守備隊形の隙間)を使ったり裏に抜けたりすることができません。その部分がなければ難しくなるとは予想していました。
ビルドアップ時に2ボランチのひとりが2センターバック間へ降り、3バック化。左右に開いた岩波とホイブラーテンを起点に相手の守備ブロックを崩そうとしたが、前線の選手が相手最終ライン近くに張り付きすぎるゆえに、浦和の陣形が前後に間延びすることが多かった。
攻撃が機能不全に陥った浦和は、枠内シュート0本でこの試合を終えている。点差以上の完敗であり、遅攻時の前線の選手の配置や連係は彼らにとって当面の課題となるだろう。