2008年から約3年半にわたってアビスパ福岡でプレーしていたDF丹羽大輝。日本代表としての経験もあるベテランDFは、現在スペイン4部のアレナス・クルブ・デ・ゲチョに所属している。

丹羽が所属していた当時の福岡は、J1への昇格や残留を目標としていたが、今2023シーズンではYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)を勝ち進み、クラブ初のタイトル獲得が現実味を帯びてきた。

G大阪所属時には国内3冠獲得も経験している丹羽。運命の一戦を2日後に控えた古巣福岡にむけて、当時の思い出や決勝を戦うことの意義について語ってくれた。

古巣アビスパ福岡に丹羽大輝が声援、優勝してほしい!【独占インタビュー】

良いスタートを切った福岡時代

J2リーグで戦っていた2008シーズンの福岡は、ピエール・リトバルスキー監督に率いられてスタートしたものの守備が安定せず、シーズン序盤で下位に低迷。クラブは7月11日に監督交代を敢行し、篠田善之コーチがS級ライセンス(JFA公認S級コーチ)取得翌日に監督へと就任した。その後、夏の移籍市場でチームに加わった丹羽は、第35節の徳島ヴォルティス戦にスタメンで初出場すると先制点を決めて勝利に貢献(3-1)し、以降そのままレギュラーに定着した。

「良い形でスタートできたという印象があります。

福岡での最初の試合は凄く良かったなという感覚でしたね。夏に大宮から移籍したため、キャリーバッグ2つだけ抱えて福岡に行き、そのシーズンが終わってから家の引っ越しをしましたね。キャリーバッグ2つ分だけのスパイクや練習着、生活必需品を持ってきて、半年ほど雁ノ巣の寮(蜂翔寮※)に入っていました」※練習場を備えたアビスパ福岡の寮

G大阪から大宮アルディージャ(当時J1所属)に期限付き移籍中だった丹羽は、シーズン途中で急遽福岡へ(期限付き)移籍したため、引っ越しもままならなかったようだ。

古巣アビスパ福岡に丹羽大輝が声援、優勝してほしい!【独占インタビュー】

いろいろなものを乗り越えて掴んだ決勝進出

その後も契約期間を3度延長し、2011シーズンまでの3年半を福岡で過ごした丹羽。2010シーズンはチームのキャプテンと選手会長を務め、クラブのJ1昇格に大きく貢献した。期限付き移籍中の選手がキャプテンと選手会長を兼任したのはJリーグ史上唯一の例である。しかし、翌年クラブは再びJ2へと降格し、丹羽もG大阪へと戻った。

それから十余年、J1とJ2を行き来しながら歩んできた福岡が、いよいよクラブ初となるタイトル獲得を懸けてルヴァン杯の決勝に挑む。

「当時の福岡はJ1残留を掲げていて、(J1で)1試合ごとに一喜一憂する、みたいなクラブでした。絶対残ろう!と頑張っても結局降格してしまう。(2010年に)J2からJ1に昇格した後もそうでした。いろいろなものを乗り越えて、今回の決勝進出というものがあります。そういう歴史も知っているので、決勝に進出して本当に良かったなと思っていました。

スペインだとJリーグの試合は結果とハイライトぐらいしか観られないのですが、ずっとネットで観ていました」

古巣アビスパ福岡に丹羽大輝が声援、優勝してほしい!【独占インタビュー】

決勝戦を経験するということ

2012シーズンからG大阪に復帰した丹羽は、2014年から2016年まで3シーズン連続でルヴァン杯(当時はナビスコ杯)決勝に進出し、2014年は優勝、その後の2年間は準優勝している。また、FC東京在籍時の2020年にもルヴァン杯で優勝していることから、決勝戦がどのように作用するか経験済みだ。

「優勝するしないという選手の経験値ももちろん大切なんですが、クラブとして、街として、またアビスパ福岡に関わる全ての関係者が決勝戦を経験するということが、僕は1番大切だと思います。優勝した後にどういうクラブになっていかないといけないとか、ディフェンディングチャンピオンとしてどういった環境が必要なのか、どういう選手が必要なのか、どういうクラブスタッフが必要なのか。多分、今回の決勝を経験することで、それらが分かると思うんです。

万一敗退しても、優勝するためにはクラブとして何が足りなかったのか、スポンサーとして何が足りなかったのか、選手として何が足りなかったのかというのを、優勝という物差しで測れます。

そういう意味でも決勝戦に行って戦うということは、めちゃくちゃ良いことだと思うんですよね」

今ではJリーグ屈指の人気と知名度を誇るG大阪にとって、優勝も準優勝もどちらも必要だったと考えているようだ。

「もちろん、優勝するに越したことはありません。ディフェンディングチャンピオンとしての見られ方などは、凄いプレッシャーがあります。そのプレッシャーも含めて、クラブとしてどう乗り越えていくかというのは優勝しないと分からない。だから優勝してもらいたいですね。来年には多分いろいろな課題が出てくると思いますが、それはクラブがスケールアップしていくという意味で凄く良いこと。

選手だけの問題ではなく、僕は福岡県やアビスパに関わる全ての人たちが通らないといけない道だと思っています」

37歳となった現在もスペインの地で戦い続ける丹羽大輝。古参の福岡サポーターにとって印象深い名DFからのメッセージも力に変え、初のタイトル獲得を目指すアビスパ福岡に多くの注目が集まっている。運命のルヴァン杯決勝戦は11月4日13時05分キックオフだ。