クラブ史上初めてJ2で2季目を迎える清水エスパルス。この冬の清水は昇格を逃した影響もあってか、最終ラインで身体を張った守備を見せていたキャプテンDF鈴木義宜や、8ゴールを挙げて攻撃を支えたMF中山克広など2023シーズンの主力を含め多くの選手を失った。

だが、入れ替わりで加入した選手や期限付き移籍から帰ってきた選手の中には活躍を期待できる選手も多い。ここでは、今冬の移籍動向から各ポジションごとに2024シーズンを戦う清水の陣容と注目ポイントについて見ていく(※2024年1月22日時点の移籍情報に基づく)

清水エスパルスの補強動向から見るポジション別注目ポイント【2024】

GK(ゴールキーパー)

IN

OUT

  • 大久保択生:いわてグルージャ盛岡へ完全移籍

GKは、昨年リーグ戦全試合に出場した権田修一がチームに残留。一方で、カップ戦やプレーオフ2試合に出場した大久保択生がチームを離れている。頼れるベテラン守護神を失った清水だが、新たに鹿島アントラーズから東京五輪のメンバー候補でもあった沖悠哉を獲得。中央大学から猪越優惟も加入し、既存戦力の梅田透吾、阿部諒弥も含め5人体制で新シーズンへ入る見通しだ。

特に沖は直近2シーズンこそ出場機会が限られたが、2021シーズンは鹿島の正GKとして躍動。高いセービング力とキック精度が武器の楽しみな新戦力だ。

新加入の沖と猪越を含む若い4人のGKにとって守護神である権田の壁は厚く、出場機会を掴むことは容易でないだろう。

だが、年齢的にも近い4人が切磋琢磨し権田の背中を追いかけることは、ポジション全体のレベルアップと選手層の厚さに直結するのもまた事実。スタメンの座は権田の可能性が極めて高いが、長いシーズンの中でその座を脅かす成長を4選手が見せられるか注目だ。

清水エスパルスの補強動向から見るポジション別注目ポイント【2024】

DF(ディフェンダー)

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OUT

  • 鈴木義宜:京都サンガへ完全移籍
  • 井林章:鹿児島ユナイテッドへ完全移籍
  • 落合毅人:沖縄SVへ期限付き移籍

DFラインでは、昨年キャプテンとしてリーグ戦40試合に出場した鈴木義宜がJ1京都サンガへ移籍。また、セットプレーからのゴールなど見せ場を作ったベテラン井林章もJ3からJ2へ昇格した鹿児島ユナイテッドへ移籍と、センターバックは経験豊富な選手を複数手放す形になっている。

だが、水戸ホーリーホック時代に秋葉忠宏監督のもとで戦った経験もある住吉ジェラニレショーンに加え、2023シーズンはヴァンフォーレ甲府で活躍した蓮川壮大をそれぞれ期限付きで獲得。守備陣を再構築する必要はあるものの、経験値もありながら成長も大いに見込めるこの2選手の加入はチームにとってプラスだ。

さらに昨年は特別指定選手としてリーグ戦やカップ戦で出場機会を得た高木践も楽しみな選手と言えよう。昨年は34失点とリーグ2位の堅守を誇った清水。主軸の流出を早々にカバーできるか、新加入選手も含めた新たなポジション争いと、2023シーズンは4バックと3バックを使い分けた秋葉監督の起用法にも注目したい。

清水エスパルスの補強動向から見るポジション別注目ポイント【2024】

MF(ミッドフィルダー)

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  • 矢島慎也:レノファ山口より完全移籍
  • 松崎快:浦和レッズより完全移籍
  • 中村亮太朗:鹿島アントラーズより期限付き移籍
  • 成岡輝瑠:レノファ山口より復帰
  • 川谷凪:ファジアーノ岡山より復帰

OUT

  • 竹内涼:ファジアーノ岡山へ完全移籍
  • 中山克広:名古屋グランパスへ完全移籍
  • 岸本武流:ガンバ大阪へ完全移籍
  • 松岡大起:アビスパ福岡へ完全移籍
  • 神谷優太:江原FC(韓国)へ完全移籍
  • 西村恭史:長野パルセイロへ完全移籍
  • 滝裕太:松本山雅へ完全移籍
  • ベンジャミン・コロリ:バーゼル(スイス)へ完全移籍
  • ヤゴ・ピカチュウ:フォルタレーザ(ブラジル)へ完全移籍
  • ヘナト・アウグスト:契約満了
  • ホナウド:契約満了

中盤はサブも含めて大きく動いている。ボランチで言えば、2023シーズン豊富な運動量とボールホルダーに対する厳しいチェックなどで存在感を示したホナウドがチームを離れた。また、長年在籍していた竹内涼や昨年怪我による長期離脱から久々にピッチへ戻ってきたヘナト・アウグスト、さらに昨年はブラジルに武者修行へ出ていた松岡大起と多くの選手が退団。とりわけ中盤でボールを刈り取れる選手を多く失い、2024シーズンに向け不安もあるポジションになっていると言えよう。

だが、新加入や期限付きから復帰する選手を見ると、昨夏ヴァンフォーレ甲府へ期限付き移籍し活躍した中村亮太朗や、レノファ山口へ期限付き移籍していた成岡輝瑠など、精度の高いパスや中盤からの持ち出しといった攻撃面で魅力あふれる選手たちが加わった。もちろんチームとしては、攻撃の芽を摘み取る方法を昨年以上に思案し再構築する必要はあるが、後方からのつなぎも含めてより効果的に前進できる期待感は増したと言える。

攻撃的な選手では、2023シーズン右サイドからのゴールやアシストで貢献していた中山克広と、同サイドで途中出場からのゴールなど存在感を発揮した岸本武流がJ1クラブへ移籍。神谷優太はKリーグ(韓国)の江原FCへ完全移籍となり、さらに外国籍選手ではベンジャミン・コロリがチームを離れた。一方、2シーズン連続で武者修行へ出ていた川谷凪が帰還。昨年ファジアーノ岡山では、ほとんど出番を得られなかったが、主にスピード面で抜けた中山の穴を埋める活躍が期待される。

また、浦和レッズから新加入の松崎快は清水では数少ないレフティーであり局面の打開を図れるドリブラー。2020~2021シーズンは水戸ホーリーホックで秋葉監督のもと戦っていることもプラス材料と言えよう。さらに、中盤より前で複数のポジションをこなせる矢島慎也も獲得。J1、J2それぞれで経験豊富な選手で、チームにとって頼れる存在になることは間違いない。

多くの試合でスタメンに名を連ねた選手が複数抜けたことで、中盤においては変革のシーズンとなるだろう。秋葉監督の起用法や採用システム、昨年まさにチームの中核として役割を果たした乾貴士と新戦力の融合をどう図るかなど入れ替わりが激しかった分、試合ごとの人選や戦い方は大いに注目だ。

清水エスパルスの補強動向から見るポジション別注目ポイント【2024】

FW(フォワード)

IN

  • 川本梨誉:ザスパクサツ群馬より復帰
  • 千葉寛汰:FC今治より復帰
  • 安藤阿雄依:アスルクラロ沼津より復帰
  • 郡司璃来:船橋市立船橋高等学校より加入

OUT

  • チアゴ・サンタナ:浦和レッズへ完全移籍
  • オ・セフン:町田ゼルビアへ期限付き移籍
  • 齊藤聖七:ザスパクサツ群馬へ期限付き移籍

最前線はまさしく期待と不安が入り混じる冬となっている。まず、2021シーズンに清水へ加入して以降3シーズン連続となる2桁ゴールを挙げ、2022シーズンにはクラブ史上初のJ1得点王にも輝いたチアゴ・サンタナがJ1浦和レッズへ移籍。昨年も12ゴールを挙げるなどストライカーとしてまた最前線の基点として活躍していた選手なだけに大きな痛手と言わざるを得ない。さらに、先発出場こそ少なかったものの、2023シーズン第8節の東京ヴェルディ戦でチームを開幕7試合未勝利から解放する逆転ゴールを挙げるなど活躍したオ・セフンもJ1へ昇格した町田ゼルビアへ期限付き移籍し、クロスやロングボールのターゲットを失っている。

今冬、彼らの穴を埋めるような補強の噂もいくつか出ていたが、現状はいずれも正式な加入の報は聞こえてこない。一方、下部組織出身でいずれも武者修行へ出ていた川本梨誉、千葉寛汰、安藤阿雄依の3選手がチームに復帰。

川本はザスパクサツ群馬で34試合と多くの出番を得て3ゴールと存在感を示し、千葉は昨年当初の期限付き移籍先であった徳島ヴォルティスで不完全燃焼も、2年連続所属となったFC今治では夏からの加入で7ゴールと気を吐いた。また、1月8日まで行われていた第102回全国高校サッカー選手権で5ゴールを挙げ、得点王に輝いた郡司璃来も加入。

これまでの経験値や実績から、現時点で最前線の序列1位は北川航也だろう。しかし、新加入や期限付きから復帰した選手も含め北川を除くFW陣は20代前半の選手ばかり。出場機会を得ればシーズン中に大きく化ける可能性も秘めている。サンタナ流出の穴は大きく、2024シーズンに向け最も不安視されるポジションと言っても過言ではない。だが、若手の急成長でニューヒーロー誕生の期待もある。2023シーズン同様の高い攻撃力を見せられるか、その成否はクラブの生え抜き選手である北川を筆頭に、清水の次代を担う若い選手たちの働きと成長に懸かっている。