ジェフユナイテッド市原・千葉が思うようなスタートを切れていない。2024明治安田J2リーグの開幕前に行われた千葉ダービーマッチ「ちばぎんカップ2024」では、今シーズンから10番を背負うFW小森飛絢の活躍もあり、同じ千葉県をホームとするライバル柏レイソル(J1)に2-1で勝利。
今季こそ悲願のJ1昇格達成を期待させる白星だった。

しかし現状は、第8節終了時点で20クラブ中13位と苦しんでいる千葉。戦績も3勝4敗1引き分けと思うように勝ち点を積み上げられておらず、首位ファジアーノ岡山(勝ち点17)とは7ポイントもの差がついている。もちろん、まだまだシーズン序盤だが、前評判が高かっただけに千葉の現在地について簡単に納得できるものではない。

昨季からの積み上げも順調に行われ、新戦力も加えた千葉がなぜここまで苦しんでいるのか。今季ここまでの戦いを振り返り今後の展望について考察する。


相手に希望を与えるな!ジェフ千葉浮上の鍵と冨安健洋の言葉【J2リーグ2024】

開幕から続いた苦戦

2月25日に開催された今季第1節、千葉はモンテディオ山形と対戦。自分たちのサッカーが体現できているにも関わらず勝ち点を得ることができない辛い試合だった(2-3)。この試合、千葉はDF鈴木大輔のゴールで先制するも後半54分にセットプレーの流れから失点。そのわずか6分後には中途半端になった浮き球のパスを拾われ、さらにそこからクロスをあげられて逆転を許した。まずは同点にするため前がかりになった千葉は、カウンターを喰らい勝負を決定づける3点目を許してしまう。試合終盤にMF横山暁之が左サイドからのグラウンダークロスを左足で合わせ1点を返すも時すでに遅し。ホームでの開幕戦を黒星でスタートさせた。


この試合における千葉の戦い方は、第7節ロアッソ熊本戦(0-1)まで続く苦戦を象徴しているようだった。今シーズンの千葉は昨2023シーズンから続く前線からのハイプレスに磨きをかけ、運動量のある魅力的なサッカーを展開。相手陣内で幾度となくハイプレスを仕掛け、ミスを誘発することで生まれるチャンスはここまで何度も確認することができた。

相手に希望を与えるな!ジェフ千葉浮上の鍵と冨安健洋の言葉【J2リーグ2024】

爆発的サッカーが生む弊害

しかし課題はそのハイプレスが生み出す後半の消耗である。千葉はここまでリーグ戦で12失点しているが、そのうち8得点が後半に奪われている。これを象徴する試合がホームで迎えた第5節の清水エスパルス戦だ(1-3)。千葉は前半から猛攻を仕掛け試合の主導権を握ったものの前半終了間近に失点。
すぐさま小森の4試合連続ゴールにより1点を返しゲームを振り出しに戻すも、後半80分に元日本代表FW乾貴士のゴラッソにより逆転される。第1節の山形戦同様、前がかりになった千葉は後半アディショナルタイムにダメ押しの追加点を奪われてしまった。

この試合でも後半にペースが落ちていた千葉。後半の立ち上がりこそ試合をコントロールし相手陣内まで侵入していたが、シュートまでたどり着くことができない。すると得意のハイプレスが効かなくなり、徐々に主導権を相手に握られるという展開だった。第7節の熊本戦でも同様に、千葉は得点チャンスを活かすことができず後半にプレススピードが低下。
ハイプレスによる爆発的サッカーが生み出す弊害を露わにした。

相手に希望を与えるな!ジェフ千葉浮上の鍵と冨安健洋の言葉【J2リーグ2024】

栃木戦で見えた光明

ハイプレスのように運動量の伴うサッカーでは、選手たちの戦術に対する信頼と試合に向けたモチベーションが必要不可欠である。長いシーズン中それらを維持し続けるために何よりも重要なのは勝利を手にすることだろう。その意味で第8節の栃木SC戦で手にした大勝(8-0)は、これまでの努力が報われた瞬間だった。

前半のうちに3得点を奪った千葉は、勢いそのままに後半は5得点。クラブ史上最多となる8ゴールを記録し5試合ぶりに勝利を飾った。さらにこの試合で良かったのが、“自分たちのサッカー”で大量得点できたことだ。
栃木の守備が完成度を欠いていたこともあるが、得意のハイプレスが千葉の武器として明らかに通用することを実感できた試合であり、選手たちにとっては今後もこのスタイルを続けていこうという自信が再燃したはずだ。

相手に希望を与えるな!ジェフ千葉浮上の鍵と冨安健洋の言葉【J2リーグ2024】

相手に希望を与えない前半を作れるか

ここで強く思い出されるのが、日本代表DF冨安健洋(アーセナル)がAFCアジアカップ2024決勝トーナメント第1回戦となるバーレーン戦(3-1)前に言っていた言葉だ。記者から意気込みを訊かれた冨安は「相手に希望を与えないことが大事になる。スタートからエンジン全開でやる必要はある」と語っていた。おそらく、今の千葉に必要なのがこれだ。

大勝を飾った栃木SC戦によってこれからチームが上向くと楽観視するのは早い。
しかし栃木戦で見せたような、スタートから全力で猛攻を仕掛け前半のうちに相手に希望を与えないような点差に追い込むゲームプランは今の千葉にピッタリだ。毎回大量得点を見込める可能性は少ないが、4月7日にアウェーで行われる第9節徳島ヴォルティス戦では、前半のうちに勝負を決定づけるような千葉のプレーを期待したい。