この試合で先発し、見事1ゴール1アシストを記録したFW小森飛絢。前半から果敢なプレッシングを続け愛媛のビルドアップを機能不全に追い込んだほか、何度も裏抜けを繰り返し相手守備陣を翻弄し続けた。大勝した愛媛戦から3日後の5月21日に行われた公開練習では、27度という暑さの中でハードなメニューをこなしながら居残りしてシュート練習に励む貪欲な姿勢が印象的だった。
その後のファンサービスでも一人一人のサポーターに真摯な対応を見せていた小森。居残り練習のわけを訊くと「試合でもっとゴールを決めたいからです」とグラウンドを真っ直ぐ見つめて語ってくれた。ここでは、練習後の小森に訊いた直近の試合や新システム、J2得点王争いについて紹介する。

自分のゴールよりチームの勝利
第15節のヴァンフォーレ甲府戦(2-2)で5試合ぶりのゴールを決めた小森。千葉のエースとして2試合連続ゴールが期待された愛媛戦の前半については「甲府戦の前は自分にとっても悔しい期間が続きました。愛媛戦では常に相手の背後を狙っていましたが、なかなかチャンスを決められなかった」と振り返り、後半のゴールシーンに関して「疲れもあるなかで集中して枠に飛ばせた。このままの勢いを続けていきたい」と安堵する表情を見せた。また、ゴールを決めた後半27分のシーンからわずか8分後の後半35分にはアシストも記録。
「ボールを貰った時にはゴールのことを考えていました。だけど中を見たらバッキー(MF椿直起)がいたので、より確実性のある方を選択しました」と絶好のシュートチャンスを譲った理由について語った。
「もちろん自分で決めたかったですよ。複数得点しないと得点王にはなれない。だけどそれ以上に大事なのはチームが勝つことなので、そこに導けるプレーをしていきたいです」
以前から複数得点を課題にしていたにも関わらず、個人タイトルよりもチームの確実な勝利を優先する姿勢こそ、小森自身が体現するチームプレーだ。

競争が加熱する千葉
大幅にスタメンを変更して臨んだ第14節の横浜FC戦(1-0)以降、チーム内の競争が激化した千葉。「上位に行くためにはチーム内の競争は大事です。誰が出ても変わらないプレーをチーム全体ができるようにする必要がある」と小森が語るように、愛媛戦でも交代選手たちのギラギラした熱量を感じることができた。小森がスタメンを外れていた横浜FC戦では、FWを務めていた呉屋大翔が見事に先制点を奪いチームを勝利に導いた。同じFWとして得点できていなかった時期に生まれた呉屋のゴールに焦りを感じたか尋ねると「焦りはないです。ただただ嬉しかったです。たとえ誰が決めても勝つことがすべてですから」と味方FWのゴールとチームの勝利を純粋に喜んだ様子が窺えた。
小林慶行監督は、ここ数試合で小森と呉屋の2トップを後半から試している。その場合、呉屋が最前線に張り、小森がやや低めのポジションでビルドアップにも絡むことが多い。愛媛戦でも実施されたこのシステムについては「お互いに特徴を理解していますし、試合を重ねるなかで息も合ってきている。これからもっといいコンビネーションを生み出せると思います」とライバルとの共存にも手応えを感じていると語った。それぞれ特徴の異なる両者の連携がより密になれば、千葉の攻撃がさらに活性化することは間違いないだろう。

「得点王争いを突き放したい」
千葉は次回第17節で、現在リーグ2位のⅤ・ファーレン長崎と対戦する。小森は「2023シーズンはアウェイで決勝ゴールを決めて勝利している相手なので、感触としては悪くないです。また同じように自分のゴールでチームを勝たせることができるよう、いい準備をしていきたいです。できれば新スタジアムでやりたかったですけどね」と連勝へ向けて意気込んだ。長崎には小森と同じく通算8得点で得点王争いを繰り広げているMFマテウス・ジェズスとFWエジガル・ジュニオがいる。その存在について「厄介ですね、彼らは複数得点する力を持っている。僕は、誰よりも得点ランキングを気にしていると思いますよ。
長崎戦もチームの勝利が最重要ではあるが、サポーターからすれば小森の得点王争いも気になるところだ。望むべくは守備陣が長崎の攻撃をストップし、小森がゴールを決めて勝つこと。千葉にとって最高の結果を期待したい。