昨年J2を制しクラブ史上初のJ1へ挑んでいる町田ゼルビアや16年ぶりにJ1の舞台で戦う東京ヴェルディが躍進する中、サガン鳥栖はこれまで守り抜いてきたJ1の座からの陥落の危機に瀕している。
序盤戦から連敗を重ねたことも低迷の原因だが、より拍車をかけたのが今夏の主力大量流出だ。今季注目若手選手の1人であったFW横山歩夢が海外挑戦を果たしたほか、MF長沼洋一やMF河原創といった中心選手が相次いで移籍。その結果、他クラブの復調もあり現在順位は最下位となっている。
そんなチーム状態だからこそ、過去にチームを支え今なお国内の他クラブで活躍する選手に救いを求める声がファンやサポーターから聞こえてきても不思議はない。ここでは、もし現在も鳥栖に在籍していれば必ずや現状を打破する力になるであろう現役のOB選手を3名、今季の活躍も交えて紹介していく。

樋口雄太(鹿島アントラーズ)
昨年のJ1アシスト王に輝いたMF樋口雄太。かつて鳥栖でもチームの中核を担った選手の1人だ。2019年に入団して以降2021年までの3シーズン、ユース時代を過ごしたチームに貢献している。最終年となった2021シーズンは37試合とほぼ全試合に出場。6ゴール6アシストと結果を残し、7位でのフィニッシュへとチームを導いた。豊富な運動量と正確無比なキックが大きな魅力。
今季も鹿島でここまで29試合に出場している樋口。しかし、昨年と比較すると途中出場が増えプレータイムは短くなっている。そうした面も含め、今の鳥栖が求める要素を多く持つOB選手として、ファンやサポーターがその存在を最も欲するうちの1人ではないだろうか。

飯野七聖(ヴィッセル神戸)
2021年にザスパクサツ群馬から鳥栖へ加入したMF飯野七聖。惜しみなく上下動を繰り返す運動量と縦への推進力を大きな武器とし、質の高いクロスで鳥栖時代にも多くのチャンスを演出してきた。2022シーズン途中にヴィッセル神戸へと移籍するまで、2シーズンでリーグ戦1ゴール4アシストの数字を残している。神戸移籍後は度重なる怪我に悩まされることもあったが、出場すれば短い時間であってもその突破力とスピードが健在であることを示している。
鳥栖は今季開幕前にFW岩崎悠人、今夏にはMF長沼洋一やMF菊地泰智といった起用される頻度に差はあるものの昨年から右サイドで出場のあった選手をいずれも失っている。飯野は今季の神戸で第20節以降ほぼすべての試合でスタメンあるいはベンチ入りを果たしているが、出場時間は決して長くない。主力の流出と飯野の現状を考えれば、今まさに鳥栖にいればと願うファンやサポーターが多くても不思議はない。

宮代大聖(ヴィッセル神戸)
2022シーズン、川崎フロンターレからの期限付き移籍で鳥栖に所属していたFW宮代大聖。わずか1シーズンのみの在籍であったが、貢献度は間違いなくその年のチームの中で1,2を争うものであったと言えよう。挙げたゴール数「8」はチームトップの数字であり、前年の2021シーズン徳島ヴォルティスでも同僚だったFW垣田裕暉とともに大いに前線を盛り立てていた。在籍時の実績もさることながら、今季新天地であるヴィッセル神戸での活躍ぶりもまた、宮代に救いを求めたくなる要素の1つ。加入初年度であり、実力者の集う神戸であってもなお主力として活躍。負傷による一時離脱もあったなかで、ここまで9ゴールとFW武藤嘉紀、FW大迫勇也に次ぐ得点数で連覇を狙うチームの攻撃を支えている。
鳥栖の前線では、今季の新戦力の1人でここまでチームトップの12ゴールを挙げているFWマルセロ・ヒアンが前節、負傷からの復帰を果たした。とはいえ、残留争いを戦う上で失点数の多いチームにとって、勝ち点を積み上げるために必要な得点源が1つだけというのは心許ない。