1985年のデビューから現在まで30以上ものモデルがリリースされている「エア ジョーダン」シリーズ。その中で、ベストオブジョーダンを挙げるとしたら「エア ジョーダン 1」と答える人は多いはずだ。
ただ、同モデルに馴染みのない方であれば「なぜ?」と思うかもしれない。ならば、ぜひともエア ジョーダンコレクターのおっくんさんの話に耳を傾けてほしい。聞けばきっと、納得するはずだから。
エア ジョーダンの偏愛さんはこの人!
おっくん●SNSなどで話題のスニーカーコレクター。特にエア ジョーダンへの愛はひとしおで、計150足ほどを所有しそれらを鑑賞するために部屋を作り変えてしまうほど。現在、自宅の庭にプチスニーカーミュージアムを作ろうと画策中。インスタグラムのフォロワーは約1.1万人。エア ジョーダン 1は永遠のマスターピース
『スラムダンク』の主人公・桜木花道が最初に手にしたバッシュとして知られる「エア ジョーダン 6」や、エナメル素材を起用した大人っぽい雰囲気の「エア ジョーダン 11」など、エア ジョーダンには数々の名作が存在する。
おっくんさんは、そんな中でもとりわけエア ジョーダン 1を偏愛している。なぜなのか。
「エア ジョーダン 1はもう永遠のマスターピースですよね。何がいいって、そりゃあカッコイイのひと言につきます(笑)。
エア ジョーダン 1はそもそもバスケットシューズで、マイケル・ジョーダンというNBA選手のためにナイキ社がデザイン、製作を手掛けたものです。1985年には一般向けにも発売され、2022年現在でさまざまなカラーやコラボモデルが発表されています」。
「バッシュとしての機能美を絶賛する人もいれば、ファッション目線で好きになる人もいる。多面的な魅力があるわけです。
私の場合はずばり後者で、とにかくデニムにすごく合わせやすい。バスケットボールのことはまったく知りませんから(笑)」。
そして、自身が考える魅力のひとつに絶妙な配色を挙げ、いまだ手にしていない人には基本の3つをオススメしたいという。
「このシカゴというカラーは1985年に発売されたモデル。マイケル・ジョーダンが所属していたシカゴ・ブルズのチームカラーを想起させるカラーリングが特徴です。白・赤・黒の割合が秀逸ですね。
スニーカーブームが、第一波、第二波、第三波とあった中、ずっとシーンに根付いています」。
「ほかにも、当時発表されたオリジナルモデルの別色で、青・黒のロイヤル、そして赤・黒のブレッドというモデルもあります。
僕が手に持っているのはどれも当時のオリジナルですが、現在もほとんどデザインは変わっていません。この普遍性が傑作と呼ばれる理由です」。
ジャンルの垣根を越えたコラボレーションは必見
エア ジョーダン 1の現在地を語るうえで欠かせないのがコラボモデルだという。
「数年前、このシカゴをベースにオフ-ホワイトというファッションブランドとコラボを発表しました。デザイナーのヴァージル・アブローさんはルイ・ヴィトンのメンズ アーティスティック・ディレクターも務め、昨年、多くの方に惜しまれこの世を去った不世出の天才ですね。
ほかにも、マイケル・ジョーダンの息子、マーカス・ジョーダンが手掛けるスニーカーブティック『トロフィールーム』とのコラボモデルも話題になりました。マイケル・ジョーダンがルーキーだった頃、いじめのようなかたちで周りからパスを出してもらえなかったらしいのですが、そのときの凍りついた心をイメージしてデザインされたようですね」。
「2012年にリリースされたグラフィックアーティスト、デイブ・ホワイトとのコラボや、MLBのニューヨークヤンキースの生きる伝説、デレク・ジーター選手のモデルもアツい。
あらゆる垣根を越え、多くの人を惹きつけているわけですから、やはりエア ジョーダン 1の実力を認めざるをえないでしょう」。
登場するたび話題を呼ぶ復刻モデル
時代を超越して愛される普遍的なデザイン、そして、コラボ相手の斬新なアプローチを許容する懐の深さは“いいスニーカー”の条件だとおっくんさんは説く。
「結局、時代は移り変わろうとシカゴやロイヤルは風化せず世代を越えて愛される。そして、これだけ人気のあるモデルなのでナイキさんも復刻してくれるんですよ。
「ちなみに右が’85年で、左が’94年のものなのですが、もうほとんど同じじゃないですか。ただ、前者を格好良いと言う人もいれば、’94年のほうが好みと言う人もいる。分かる人には違いが分かるんですよね。
さらにこれは、’13年に復刻したときのモデル。これだったら分かりやすいかもしれませんね。後ろにジャンプマンが入っています」。
「ただ、オリジナルでは入っていないものですから、シカゴの復刻の中ではいちばん不人気でした。僕は好きなんですけどね。多くの人は、オリジナルを忠実に再現したほうがうれしいので、『なぜ後ろにジャンプマンが入ってるんだ』ってすごい騒がれていました(笑)」。
人気モデルの復刻ともなれば、誰もが諸手を挙げて喜びそうなものだが、それでも不平不満が出る。ただ、これもまたエア ジョーダン 1が愛される証であり、歴史の重さを物語っているとも言える。
履きやすさで選ぶならローかミッド
そして、エア ジョーダン 1といえばバッシュなだけに多くの人がハイカットをイメージするはず。
ただ、ローカットやミッドカットもなかかなにして侮れない、とおっくんさんは熱弁する。
「実は最近、ローカットのエア ジョーダン 1が出ているのですが、’16年当時に出ていたモデルというのは、スウッシュがシャープでエロい(笑)。
この青・黒は3カ月前に出たやつなんですが、’16年ぐらいに出た、ローカットのエア ジョーダン 1からするとスウッシュが細いんです。まあ、これはこれで好きなんですけどね」。
「ハイカットとローカットは、見た目も全然違いますよね。さらにミッドカットはさほどリリースされていないのでより新鮮です。履きやすさでいったらミッドやローで、僕も普段からファッションの一部として取り入れてます。個人的にはお勧めできる一足だと思いますね」。
王道ではあるものの、バリエーションが豊富なのもエア ジョーダン 1の魅力。ただ、注意が必要とおっくんさん。
「ちょっとタチが悪いのは、ブームのさなかなので全体的に値上がりしています。そういうことがよく起きるモデルなのでそこがたまに傷ですね」。
しかも、「エア ジョーダン 1は履きにくい(笑)」とおっくんさん。ただ、いろんな良さがあるからこそ、それぞれに好きの尺度が違っても、多くの人に愛されるのだろうと推測する。
「いろいろ語り口があるのがいいと思います。僕はファッションから入った人間なので、イエローが出たらそれに合う着こなしを考えますし、ユニオンとのコラボならそれにちなんだアイテムで合わせようと考えます。
簡単に手に入らないし、もっと履きやすいスニーカーもあるけど、辞められません(笑)」。
◇
スニーカーを手にするうえで、見た目重視の人もいるだろうし、背景に深みを求める人もいるだろう。あらゆる大人に、エア ジョーダン 1は最適なような気がする。
最後におっくんさんは言う。「男は黙ってエア ジョーダン 1ですよ(笑)」。
佐藤ゆたか=写真 菊地 亮=取材・文